帝国データバンク、7月の全国企業倒産集計を発表
●2007年7月報
倒産件数は10ヵ月連続で前年同月比増加
負債総額は今年2番目の低水準
・倒産件数 915件
前月比 7.1%減
前月 985件
前年同月比 22.7%増
前年同月 746件
・負債総額 3062億9700万円
前月比 9.0%減
前月 3364億2700万円
前年同月比 13.7%減
前年同月 3548億4000万円
【 ポイント 】
倒産件数は915件(前月985件、前年同月746件)で、前月比は7.1%(70件)の減少となったが、前年同月比は22.7%(169件)の増加となり、10ヵ月連続の前年同月比増加。
負債総額は3062億9700万円で、前月比は9.0%の減少、前年同月比も13.7%の減少。3ヵ月連続の前年同月比減少となり、2月(2805億9700万円)に次ぐ今年2番目の低水準。
7月は、(株)星の降る里芦別(北海道、負債75億円)、桃花台新交通(株)(愛知県、同45億9700万円)など、第三セクターの倒産が3件発生した。
■件数
倒産件数は915件(前月985件、前年同月746件)で、前月比は7.1%(70件)の減少となったが、前年同月比は22.7%(169件)の増加となり、10ヵ月連続の前年同月比増加。前月比では2ヵ月連続の減少となったものの、全体の推移としては確実にベースラインが上昇してきており、増加基調が持続している。
主な要因としては、業種別では建設業、サービス業、規模別では負債1億円未満や個人経営など小規模倒産の増加が顕著で、引き続き全体の倒産件数を押し上げる結果となった。
■負債総額
負債総額は3062億9700万円で、前月比は9.0%の減少、前年同月比も13.7%の減少。3ヵ月連続の前年同月比減少となり、2月(2805億9700万円)に次ぐ今年2番目の低水準。
負債トップは、ゴルフ場経営の(株)ミルフィーユ(千葉県、民事再生法)の317億円。
負債10億円以上50億円未満の倒産は47件(前月41件、前年同月47件)、負債100億円以上1000億円未満の倒産も3件(同4件、同7件)にとどまっている。
■業種別
○7業種、前年同月比増加
「その他」を除く7業種すべてで前年同月比増加となった。
増加率では、サービス業(181件、前年同月比+47.2%)がトップ。小売業(162件、同+32.8%)、建設業(269件、同+21.2%)が続く。
サービス業(181件)は、集計対象変更の2005年4月以降で最多となった。主な内訳は、ソフトウエア開発(17件)、広告(12件)、ホテル・旅館(11件)、パチンコ店(8件)など。
建設業は269件発生し、前月(281件)を12件下回ったものの、前年同月(222件)を47件上回り、公共事業削減や「脱談合」の影響などから依然として高水準で推移している。
■主因別
○「販売不振」、前年同月比で大幅増加
「不況型倒産」の合計は704件(前月768件、前年同月566件)で、前月比は8.3%(64件)の減少となったが、前年同月比は24.4%(138件)の大幅増加。
なかでも、販売不振は649件(前月708件、前年同月512件)で、前月比は8.3%(59件)の減少となったが、前年同月比は26.8%(137件)の大幅増加となり、高水準が続いている。
「不況型倒産」構成比は76.9%(前月78.0%、前年同月75.9%)で、前月を1.1ポイント下回ったものの、前年同月を1.0ポイント上回った。
倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
○負債1億円未満が増加傾向
負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は375件(前月408件、前年同月284件)発生し、前月比では8.1%の減少となったが、前年同月比は32.0%の大幅増加となった。
負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は543件(構成比59.3%、前年同月比+32.4%)で、増加傾向にあり、全体の倒産件数を押し上げる大きな要因となっている。
一方、負債10億円以上50億円未満の倒産は47件(前月41件、前年同月47件)、同100億円以上の倒産も3件(同4件、同7件)にとどまった。
資本金別に見ると、個人経営(149件、前月比△8.0%、前年同月比+132.8%)の倒産が引き続き高水準で推移しており、小規模倒産の増加が顕著となっている。
■態様別
○民事再生法、今年2番目の高水準
態様別に見ると、破産は833件(前月908件、前年同月674件)で、前月比は8.3%(75件)の減少となったものの、前年同月比は23.6%(159件)の増加となった。構成比は91.0%で、3ヵ月連続で90%を上回った。
特別清算は21件(前月35件、前年同月21件)で、前月比は40.0%(14件)の減少、前年同月比は同水準となった。構成比は2.3%で、前月(3.6%)、前年同月(2.8%)をそれぞれ下回っている。
民事再生法は61件(前月40件、前年同月51件)で、前月比は52.5%(21件)の増加、前年同月比も19.6%(10件)の増加となり、今年2番目の高水準。構成比は6.7%で、前月(4.1%)を上回ったが、前年同月(6.8%)を下回っている。
■地域別
○中国が今年最多
地域別に見ると、9地域中、関東(321件、前年同月比+20.7%)、近畿(254件、同+42.7%)など7地域で前年同月比増加。このうち、中国(45件、同+40.6%)が今年最多となった。
とくに、近畿は、前月(281件)を27件下回ったものの、前年同月(178件)を76件上回り、高水準で推移している。個人経営を中心とする中小・零細業者の倒産が増加傾向にあり、地域全体の件数を押し上げている。
一方、四国(23件、前年同月比△14.8%)、北陸(22件、同△4.3%)の2地域は、前年同月をそれぞれ下回った。
【 今後の問題点 】
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2007年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は42.7となり、4ヵ月連続で悪化。2005年2月(41.9)以来29ヵ月ぶりの43ポイント割れとなり、足元経済の減退感が一層鮮明となった。
■原油高の進行や個人消費の回復遅れなどによって企業の生産活動や設備投資意欲に息切れ感がみえはじめていたなか、NY原油先物相場(WTI、期近)が7月に1バレル=78ドルを突破するなど史上最高値に並ぶ水準まで上昇。加えて、米住宅景気への懸念増幅や参院選での自民党大敗による政局不安といったリスクも顕在化し、このところ弱含んでいた景気DIをさらに押し下げた。
■業界別にみると、『建設』や『小売』など内需関連業界は依然として40ポイント割れにとどまっているほか、規模別では大企業と中小企業の景況感格差が4.2ポイントと依然として高水準。地域別では『南関東』と『北海道』の格差が13ポイント台と、業界間、規模間、地域間格差も一向に縮小する気配がみられない。内需関連企業や地方圏、中小・零細企業にとっては、今回の景気回復の実感を得られず、国内外のリスク増幅によって先行き不透明感が増しているのが実態である。
■こうしたなか、2007年7月の法的整理による倒産は915件となり、前月(985件)を7.1%下回ったものの、前年同月(746件)に比べ22.7%の増加。10ヵ月連続の増加となるとともに3ヵ月連続して前年同月比が2ケタ台となるなど、倒産の増加基調が持続している。
■一方、負債総額は3062億9700万円にとどまり、前月(3364億2700万円)比9.0%減、前年同月(3548億4000万円)比13.7%減とともに減少した。3ヵ月連続の前年同月比減少で、2007年2月(2805億9700万円)に次ぐ今年2番目の低水準となった。大型倒産の沈静化傾向が続き、負債100億円以上の倒産は3件(前月4件、前年同月7件)、負債額も最大でゴルフ場経営の(株)ミルフィーユ(千葉県)の317億円にとどまった。
■「倒産件数増、負債総額減」の現象が続いているのは、小規模企業の倒産多発に歯止めがかからないことが背景にある。規模別にみると、負債1億円未満の倒産は前年同月比32.4%増、資本金1000万円未満の倒産は同52.1%増とそれぞれ大幅に増加した。景気回復局面にありながら「不況型倒産」の割合(76.9%)が高水準で推移しているのは、こうした小規模企業の多くが「不況型倒産」の主要因である販売不振にあえいでおり、景気回復感を享受できていないからである。
■また、個別企業でみても近時の傾向を示す倒産が散発した。公共工事削減や「脱談合」の影響で力尽きた京都府北部トップクラスのゼネコン大舞工業(株)(負債104億7800万円、京都府)は、今後さらに絞り込まれるであろう公共事業費削減の影響をまともに受ける建設業の行く末を暗示している。このほか、電熱器メーカーの日本電熱計器(株)(負債46億6000万円、東京都)などの「資源高関連倒産」や、新基準適合機の入れ替え負担で資金繰りに窮したパチンコホールの(株)BOSS(負債43億円、東京都)、牛肉ミンチ偽造のミートホープ(株)(負債6億7000万円、北海道)に代表される「コンプラ違反型倒産」、第三セクター3社の倒産などが発生している。
■政府は“地域力再生機構”の創設を決定し、ようやく地域格差の是正に着手しはじめた。しかし、企業業績や設備投資がかつての景気牽引力を失いつつあるなか、「脱談合」の加速や資源高、個人消費の回復遅れなどが今後も地方圏企業の体力を疲弊させる事態になることは避けられない。実際、屋根瓦製造販売の(株)アメックス協販(負債35億5600万円、島根県)は、産業再生機構の支援終了後も業績は回復せず、再建を断念した。
■また、金利上昇のほか、貸金業法の改正や2007年10月にスタートする信用保証協会と金融機関との「責任共有制度」も、中小・零細企業の資金繰りを悪化させる要因となりうる。国内景気の減速感が次第に高まっている状況下、「脱談合」の加速や個人消費の回復遅れ、原油高進行の影響によって地方圏の中小・零細業者を中心に力尽きる企業が後を絶たず、倒産件数はしばらく増加基調を持続する公算が大きい。
(※ 添付資料は関連資料を参照してください。)