ファイザー、経口HIV治療薬「Selzentry」錠剤をFDAが承認
ファイザー社のHIV治療薬SELZENTRY(TM)をFDAが承認
-10余年ぶりに登場する新クラスの経口HIV治療薬-
米ニューヨーク、2007年8月6日- ファイザー社は本日、米食品医薬品局(FDA)がSelzentry(TM)(一般名:マラビロック)錠剤を承認したと発表しました。Selzentryは10余年ぶりに登場する新しいクラスの経口HIV治療薬で、特定のタイプのHIVに感染した他剤治療歴のある患者さんの白血球へのウイルス侵入を遮断し、ウイルス量を有意に減少させるとともに、T細胞の数を増やします。
ファイザー社の最高医学責任者であるジョセフ・フェツコ博士(Dr. Joseph Feczko, Chief Medical Officer)は次のように述べています。「米国ではHIVと共に生きる数多くの患者さんが、体内のウイルスをコントロールできる効果的な薬物療法の限界に直面しており、HIVの新治療薬には強いニーズがあります。この度、Selzentryが承認されたことは、すでにHIVの治療歴のある患者さんにとって、画期的な成果です。ファイザー社は、HIV/AIDSと共に生きる多様な患者さんのために、今後もSelzentryの開発を継続していきます。」
FDAはSelzentryを抗レトロウイルス治療の併用治療薬として迅速承認しました。対象は、ウイルス複製が証明され、かつ複数の抗レトロウイルス薬耐性のHIV-1菌株を有する、CCR5指向性のHIV-1が検出された成人感染者になります。患者さんが「R5ウイルス」としても知られるCCR5指向性HIV-1に感染しているかどうかは、診断テストによって確認されます。
迅速承認は、重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対し、既存治療薬よりも有意に治療上の利点が認められる医薬品の早期承認を可能にします。今回の承認は24週間分のデータに基づくものです。FDAがSelzentryを従来のプロセスで承認するには、より長期にわたるデータが必要となります。
Selzentryは、CCR5拮抗薬として知られ、同クラスにおける初めての製品です。CCR5拮抗薬は、ウイルスがT細胞に入り込む際の主要経路であるCCR5コレセプターを遮断します。他のクラスの経口HIV治療薬は、いずれもT細胞内でウイルスと戦いますが、Selzentryは、細胞の表面でR5ウイルスを阻止して侵入を防ぎます。
Selzentryは9月中旬までに米国で発売となる予定です。また、ファイザー社はSelzentryの承認申請を世界各国で提出しており、最近、欧州連合(EU)の医薬品委員会(CHMP-Committee for Medical Products for Human Use)から肯定的意見を受けました。
ファイザー社では、Selzentryを米国外では、Celsentriという製品名で発売する予定です。
ファイザー社は多国間にわたり、「Expanded Access Program (EAP)」を実施しています。
このプログラムは、Selzentryが未発売の国で、既存治療薬への耐性や不耐容ゆえに治療選択肢が限定されている患者さんに、Selzentryを提供するという臨床試験です。
HIV/AIDSに対するファイザー社の継続的な取り組み
ファイザーの科学者たちがSelzentryを発見したのは1997年のことです。Selzentryの臨床プログラムでは、その臨床プロファイルを効率よく特性化して当局になるべく早くデータを提出するため、HIVにおいては初めてのフェーズ2bとフェーズ3を組み合わせた試験デザインが開始されました。ファイザー社はHIV/AIDSと共に生きる人々やリスクに曝されている人々の生活の向上のために世界中で尽力しています。この姿勢はファイザー社の医薬品、様々なパートナーシップ、製品パイプライン、そして慈善事業に一貫しています。
現在実施している主なプログラムは、「南部HIV/AIDS予防イニシアティブ」、ウガンダにおける「カンパラ感染病研究所」設立、「ファイザー・グローバル・フェロー・プログラム」および「ジフルカン・パートナーシップ・プログラム」です。
最近では、2007年4月、3年間にわたるプログラムである「コネクトHIV」を打ち出しています。このプログラムは米国で最も対策を必要としている地域で、20のAIDS関連サービス提供組織に750万ドルを提供し、組織の機能強化を図るものです。この助成金の対象となる組織は、HIV予防対策が不十分な地域の人々に対する包括的な取り組み内容を基準に選定されました。
Selzentry承認の根拠となったデータ
FDAによるSelzentry承認は、現在継続中の二重盲検比較対照臨床試験であるMOTIVATEで得られた24週間のデータを基礎としたものです。MOTIVATE試験では、Selzentryと最適基礎療法(OBT)の組み合わせによる治療を受けた患者群において、ウイルス量が検出限界以下となった患者さんの数が、OBTのみの患者群に比べ、第24週目において約2倍になりました。
これらの試験において、SelzentryとOBTを併用した患者さんでは、OBT単独群に比べて有意にウイルス量が減少するとともにCD4細胞数が増加しました。
MOTIVATE試験における患者さんは治療歴が多く、69.7%がSelzentryとOBTを併用し、66%が最適基礎療法(OBT)レジメンの下で2剤またはそれ未満の薬剤によるOBTのみを受けました。
これらの試験における有害事象による治療中止の割合は、SelzentryとOBTを投与された患者さん(3.8%)と、OBTとプラセボを投与された患者さん(3.8%)の間で同等でした。最も多かった有害事象(発生率8%以上でプラセボを上回る確率)は咳、発熱、上部呼吸器管感染症、発疹、筋骨格疾患、腹部痛、およびめまいでした。
重要な安全性情報
SelzentryはHIVまたはAIDSを治癒する医薬品ではなく、HIVが他者に感染するのを防ぐものでもありません。
Selzentryによる治療を受けた患者さんにおいて、重篤な肝機能検査値異常が全体として増大することはありませんでしたが、Selzentry使用に伴う肝毒性が報告されています。
肝毒性の発現前に全身性アレルギー反応(掻痒性皮疹、好酸球増加、IgE上昇)が発生する可能性があります。Selzentryによる治療を受けた患者さんが、肝炎またはアレルギー反応の兆候や症状を示した場合は、すぐに評価を行なう必要があります。
重大な肝障害を基礎疾患に有する患者さんにおいて、Selzentryの安全性と有効性が特異的に試験されたことはありません。しかしながら、Selzentryを肝機能障害の患者さんもしくは、B型やC型ウイルス性肝炎に感染している患者さんに投与する場合は注意が必要です。
臨床試験において、Selzentry投与群の患者さんの間で心筋虚血や心筋梗塞などの心血管事象がプラセボ群よりも多く観察されました。Selzentryを心血管事象リスクの高い患者さんに使用する場合は注意が必要です。
Selzentryを起立性低血圧の病歴のある患者さんもしくは、降圧効果があるとされる医薬品を使用中の患者さんに投与する場合は注意が必要です。患者さんには、Selzentry使用中にめまいを感じるようであれば運転や機械操作を避けるよう指導しなければなりません。
抗レトロウイルス療法との併用治療を受けた患者さんにおいて免疫再構築症候群が報告されています。
Selzentryは、一部の免疫細胞上に存在するCCR5コレセプターと拮抗しますので、潜在的に感染症や悪性腫瘍のリスクを高める恐れがあります。
警告(Boxed warning)を含む全てのSelzentryの処方に関する情報、またはHIV/AIDSに関するファイザーの取り組み内容について詳しい情報を入手したい場合はファイザー社のウェブサイト( www.pfizer.com.)にアクセスしてください。
今回の発表についての放送用ビデオ(無料)をプレビューしたい場合や、オンラインまたはテープで入手したい場合は www.thenewsmarket.com/pfizer にログインしてください。
以上