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ニュースリリースのリリースコンテナ第二倉庫

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2024'12.22.Sun
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2013'01.11.Fri
太陽光の熱を朝日から夕陽まで回収し効率よく発電
-熱電併給システムを考案、2013年夏に試作機で検証-


◇ポイント◇
 ・フレネルレンズを立体的に組み合わせ、全方向の太陽光熱を回収可能に
 ・40℃の低温熱源まで循環利用し、ロータリー熱エンジンで発電
 ・2013年夏に1kW、2014年には10kW出力の実地試験を目指す


 理化学研究所(野依良治理事長)と株式会社ダ・ビンチ(東謙治社長)は、朝日から夕陽まで、太陽光の光熱エネルギーをフレネルレンズ(※1)で効率良く回収し、蓄熱タンクに貯めた水を加温、必要に応じてこの熱を取り出して発電と給湯ができる「熱電併給システム」を考案しました。これは、理研と企業が一体となって研究を進める「産業界との融合的連携研究プログラム(※2)」にもとづき、2012年4月に理研社会知創成事業イノベーション推進センター(土肥義治センター長)内に発足した、光熱エネルギー電力化研究チームの東謙治チームリーダー(株式会社ダ・ビンチ社長)、大森整副チームリーダーらの成果です。

 太陽光を利用して発電する代表的なシステムにソーラーパネルがあります。その光電変換効率は20%前後ですが、天候によって発電量が左右される、蓄電装置のコストが高い、廃棄するときパネル材料に含まれる重金属を分離する技術が未確立、などの課題があります。

 研究チームは、効率良くエネルギーを蓄えるため、太陽光に由来する熱エネルギー(光熱エネルギー)に着目し、熱交換器経由で水を温めて蓄熱、その熱エネルギーを必要なときに取り出して発電や給湯できる効率的な熱電併給システムを考案しました。具体的には、朝日から夕陽までどの角度からの太陽光も光熱エネルギーとして回収できるように、同心円状に刻んだ溝で効率良く集光できるパネル型のフレネルレンズを立方体状に組み合わせました。立方体内部にはアルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を置き、水平から垂直方向のどの方向からの光熱エネルギーも逃さない構造としました。熱交換器の下には水を満たした蓄熱タンクを設け、温水が持つ熱エネルギーをダ・ビンチ社(奈良県大和高田市)が開発した「ロータリー熱エンジン」に供給し発電するシステムです。

 このシステムは、高額な太陽光追尾装置や駆動部が不要です。また、太陽光という変動の大きい光熱エネルギーをいったん水に蓄熱することで安定的に保存し、必要な時にいつでも使えるようにしました。地方自治体などと連携し、遊休地を利用した中小規模の分散電源として活用を図っていく計画で、2013年中に出力1kW(キロワット)の試作機を、2014年には10kWの実証システムの完成を目指しています。再生可能エネルギーの新しい可能性をひらく技術として期待できます。

 なお、このシステムに関して、1月16日13:00より、理研和光研究所(埼玉県和光市)にて一般向けのシンポジウム「明るい未来の光熱エネルギー」を開催するほか、1月30日~2月1日に東京ビックサイトで開催されるnano tech2013に出展します。

 *「明るい未来の光熱エネルギー」については添付の関連資料を参照


1.背景
  再生可能エネルギーの中でも太陽光を利用した発電は、設置する地域の制限が少なく、設備投資が比較的安価であるため、導入しやすいシステムとして注目を集めています。特にソーラーパネルは、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できるため普及が加速しています。しかし、蓄電装置のコストが高い、発電は天候の成り行き次第、朝日や夕日の時間帯は水平光になるため光を回収しにくい、パネル材料に添加されている重金属の分離技術が未確立なため耐用年数経過後の廃棄が困難、などの課題があります。こうした課題を解決するために、例えば、太陽光を追尾する装置などが実用化されていますが、高コストなシステムとなっています。

  研究チームは、太陽光がもたらす熱エネルギー(光熱エネルギー)に着目し、太陽光追尾装置や駆動部などがなくても、あらゆる時間帯の光熱エネルギーを回収し、電力と温水を供給できる単純かつ高効率な熱電併給システムの開発を目指しました。


2.研究手法と成果
  太陽光追尾装置が不要なシステムとするには、どの方向から太陽光が来ても光熱エネルギーを回収できるようにしなければなりません。太陽光を損失なく収束するには、透明度が高く、表面の粗さを抑えたレンズが必要です。そこで、理研大森素形材工学研究室で開発している、同心円状に溝を刻んだ平面型のフレネルレンズに着目しました。フレネルレンズは、成形加工で作られる薄型のプラスチックレンズで、レンズの厚さが薄くても光を効率よく収束できます。大森素形材工学研究室のフレネルレンズは、透明度が高く、表面の粗さが20ナノメートル(nm:1nmは10の-9乗メートル)という高精度レンズで、現在は、超高エネルギー宇宙線を観測するための望遠レンズとして開発中です。このフレネルレンズを、立方体の上面と側面(東側、西側)に組み合わせました。これにより、建物が反射したり、空気中を乱反射したりする反射光を、光熱エネルギーとして回収することができます。立方体の内部には、フレネルレンズが収束した光熱を受ける、アルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を置きました。朝方は、東側のフレネルレンズ面が朝日を収束して、熱交換器の垂直面を照射します。太陽が南中して仰角が大きくなる昼ごろは、上側のフレネルレンズ面が太陽光を収束して、熱交換器の水平面を照射します。夕方になると、西側のフレネルレンズ面が夕陽を収束して、朝方と反対側の垂直面を照射します。こうして、太陽光追尾システムがなくても、全方向からの太陽光を回収できるシステムとしました(図1右)。

  熱交換器内には流体流路が張り巡らされており、蓄熱タンクの水が循環する仕組みです。ここで、熱交換器に集まった光熱エネルギーが水を温めます。フレネルレンズ・熱交換器・蓄熱タンクで構成したシステムを「フレネル・サン・ハウス」と名付け、2012年12月28日商標登録申請をしました。

  電気が必要なときは、蓄熱タンクに蓄えた光熱エネルギーを、ダ・ビンチ社が開発したロータリー熱エンジンへ供給し、熱媒体である代替フロン(HFC245faなど)を気化してロータリー熱エンジンを回し発電します。電力と湯を同時に供給する「熱電併給システム」の実現です。ロータリー熱エンジンは、シリンダー容積の変化で回転エネルギーを発生するため、低温域の熱源から生じる低い圧力でも熱仕事効率(※3)が良く、40℃という低温度まで回転エネルギーを引き出すことが可能です。そのため、同じ熱量でも、温水を循環利用してそれを使い尽くすことができ、発電総量の増加が見込めます(図2)。


3.今後の期待
  今回考案したフレネル・サン・ハウスは、太陽光追尾装置や駆動部を必要としない太陽光熱回収システムであり、太陽光を電気エネルギーに変換するシステムの費用対効果の改善に大きく寄与すると考えられます。

  また、フレネル・サン・ハウスとロータリー熱エンジンを組み合わせた「熱電併給システム」は、太陽光を熱に変換して温水を作るため、蓄熱が安価かつ容易です。また、必要に応じて蓄熱したエネルギーを取り出し、発電したり給湯したりできることから、使い勝手の良いコージェネレーションシステムとしての利用が期待できます。自家発電装置あるいは分散型電源としても有用です。また、工場の廃棄熱などを供給すると24時間発電も可能になったり、発電後の湯を浴用などに利用したりなど、拡張性にも優れ、エネルギー利用効率の向上にもつながります。

  一般の家庭では、1日平均で約1kW程度の電力が必要です。10世帯が共用すると10kW程度の電力需要となります。導入コストとその回収を考えた場合、家庭用・工業用のどちらでも10kW程度のシステムが費用対効果が良いと考えています。研究チームでは、2013年中に出力1kWクラスのシステムを試作して課題を抽出するとともに、フレネルレンズの構成の見直しや量産化、ロータリー熱エンジンの出力効率の向上などを図っていく計画です。2014年には10kWの実証システムの完成を目指します。また、地方自治体と連携して、太陽光熱の有効利用と分散型電源の確立を目指し、パイロットプラントの建設にも乗り出す考えです。


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