Bunkamura Art Show 2004“LANDING”
多彩なジャンルと高いクオリティでアートシーンを彩ってきたBunkamuraが、今年15周年を迎えました。
Bunkamura Galleryでは15周年を記念して、若いアーティストを応援する新たなプロジェクトBunkamura Art Show 2004 “LANDING”を開催します。
展覧会名:Bunkamura Art Show 2004“LANDING”
会 期:2004年8月21日(土)~8月31日(火)(会期中無休)
営業時間:10:00~19:30
入 場 料:無料
会 場:Bunkamura Gallery
東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura1F
アクセス:JR山手線/渋谷駅(ハチ公口)より徒歩7分
東急東横線、東京メトロ銀座線、京王井の頭線/渋谷駅より徒歩7分
東急田園都市線、東京メトロ半蔵門線/渋谷駅より徒歩5分
アーティストたちは、それぞれがそれぞれに様々なことを経験し、考え、悩み、試行錯誤を繰り返しながら作品を制作しています。それは果てしのない自分自身への孤独なフライトのようでもあります。そうして創り出された作品を発表する場であるギャラリーは、アーティストたちにとって無事に一つのフライトを終え着地するエアポートでもあるのでしょう。そして、展覧会に臨むアーティストたちは、フライトを経てエアポートに到着し、しっかりと大地を踏みしめたときに沸き起こる新鮮な気持ちと充実感、これから始まる世界への期待感に似た感情を抱いているのではないでしょうか。
Bunkamura Art Show 2004 “LANDING”では、Bunkamura Galleryというエアポートが、6名のアーティストたちを迎えます。第一回目となる今展では、Bunkamura15周年記念のキャッチフレーズである“風を呼び、風を起こす”にふさわしく、若々しい6名のアーティストによる新作を紹介します。出品作家は、稲垣智子(インスタレーション)、今野尚行(ペインティング)、大谷有花(ペインティング)、大森暁生(立体)、goasa(ペインティング、インスタレーション)、渡部裕二(映像、ドローイング)。編集された情報が溢れかえった現代社会の中で、身辺の現実感とのバランスを保ち、固有の価値観や経験・記憶を見失うことなくそれぞれの問題意識に向き合い、繊細なアプローチで作品を創り出してきました。全員が1970年代生まれと、まだ若いアーティストながらすでに独自の作品スタイルを確立しています。 また、展覧会を記念して、各アーティストの作品を収蔵した限定エディション「LANDING BOX」が発売されます。
今後の活躍が注目されるアーティストたちの新作にどうぞご期待ください。この新しい風は、ますますエネルギーに満ちたアートで私たちの五感を刺激してくれることでしょう。
※会期中にイベント開催予定です。詳細は7月のホームページでご紹介します。
【作家のプロフィール】
稲垣智子 Tomoko INAGAKI
〔1975年大阪府生まれ、英国国立ミドルセックス大学美術学部彫刻科卒業〕
1999年にRay Finnis Award 1999を受賞。CAS(大阪)、Galerie Krinzinger(ウィーン)で個展。Quicksilver Gallery、Gallery 291、Standpoint Gallery(以上ロンドン)、神戸アートビレッジセンター、CCA北九州、水戸芸術館現代美術ギャラリー、大阪府立現代美術センター、CASO、現代美術製作所など多数のグループ展に参加。
巨大なレースで作られたネットの中心で、そのレースを編みこんで自らを閉じ込めていくパフォーマンス「SEA」。食品衛生法で定められている最大量の食品添加物を使用して作った菓子や原色ドライフラワーをテーブルに設置したインスタレーション「最後のデザート」。造花や石鹸でできた彫像で構成された「春」など。稲垣さんの作品が持つ幻想的な美しさが表面的なものであると気づいたとき、そこに内包された脆さが不安感を伴って迫ってきます。
今野尚行 Shoko IMANO
〔1971年東京都生まれ、多摩美術大学卒業・大学院修了〕
東京オペラシティ アートギャラリー「Project N 03」、セゾンアートプログラム・ギャラリー「Spinning!02」などで個展。伊豆美術蔡、オンワードギャラリー日本橋、多摩美術大学「TAMA VIVANT 2002」など多数のグループ展に参加。
私たちの日常にも身近であるパン、贅肉、カーテン、スポンジなどがズームして描かれた作品は、その雰囲気もやわらかく穏やかな絵画として存在しています。しかし現実のものとの奇妙な差異を感じるのは、それが今野さん自身の生活の中にあったリアルな固有のシーンでありながらも、ズームされたそのもの自体の存在感が増幅され、今野さんにとっても私たちとはまた違う奇妙な感覚を持って捉えられているからでしょうか。「現実からの積極的な逃避と自虐的な日常への依存」という二つの地点を繰り返すことでできた領域の中で、浮遊感を弄ぶようにして感覚の変化がいつまでも繰り返されます。
大谷有花 Yuka OHTANI
大谷有花 「ウサギねずみの対話 Ver.12-Sofa-」 2004年 油彩 15号
〔1977年神奈川県生まれ、多摩美術大学卒業・大学院修了〕
カサハラ画廊、NICAF、府中市美術館などで個展。目黒区美術館区民ギャラリー「第6回昭和シェル石油現代美術賞展」、上野の森美術館「VOCA2003」、群馬県立近代美術館「日常の変貌」、多摩美術大学美術館「四批評の交差」などグループ展。
大谷さんの代表作である「キミドリの部屋」シリーズの黄緑は、幼少時の部屋の絨毯の色に起因しています。意外にもそのシリーズが創り出されたきっかけとなったのが、1999年に制作されたインスタレーション作品「記憶」です。いわば大谷さんの原点となったこのインスタレーション作品は、中央に置かれた配電盤の中のテープレコーダから大谷さん自身が幼少時に演奏したピアノの音色が流れているという作品。幼き頃の記憶をたどる装置として制作されたその作品が、その後の数々の作品を生み出す根元的な問いに答えを出してくれたようです。その後の作品は自己の記憶・存在の在り処を確かめるようにして一つ一つが丁寧に生み出されています。
大森暁生 Akio OHMORI
〔1971年東京都生まれ、愛知県立芸術大学卒業〕
東京都美術館「日本アンデパンダン展」、千葉県立美術館「現代日本具象彫刻展」、NICAF、洋協アートホール「FIELD OF NOW」、渋谷西武「B-WORKS」、彩鳳堂画廊「凍鶴 上村一夫へのオマージュ」、GEISAIなど数多くの個展・グループ展を開催。また照井利幸氏(ブランキージェットシティ)のプロジェクト「RAVEN」にも象徴的なイメージとしてドローイングを提供するなど意欲的な活動を展開。
象や狼に角が生えた「棘」シリーズは、実在するかのようなその生命力に満ちた存在感に圧倒されます。同時にとても神聖な穏やかさが感じられ、それはもう一つの「翼霊」シリーズにより顕著な要素です。「翼霊」シリーズのモデルはすべて同一人物で、強くバイタリティを感じる女性がモチーフなのですが、その強さへの憧れの奥に大森さん自身が見ていたものはまた別の要素だったのかもしれません。闇の中に存在する神聖な象徴のようでもある作品群が内包するいくつもの要素は、照井利幸氏だけでなく、チバユウスケ氏(ミッシェルガンエレファント)らのミュージシャンをも魅了しています。
goasa
〔1978年神奈川県生まれ、女子美術大学卒業・東京芸術大学大学院修了〕
ザイヌルギャラリー(バングラディシュ)、京都市美術館、東京都現代美術館「トーキョーワンダーウォール2001」、「第21回上野の森美術館大賞展(優秀賞受賞)」、NICAF、KIAFなど個展・グループ展に精力的に取り組んでいます。
goasaさんの作品の世界には、独創的で自由な形象をもった動物や人が多く存在します。その自由な形象が象徴するように、構図や構成といったルールに縛られることなく広がる作品世界は一見、色彩も華やかで明るい印象があります。しかしほとんどが自画像というその動物や人たちはどこか物憂げで、精神的な自由を得ることの難しさを体現しているようにも見えます。自分自身から湧き出る自然な感情に嘘をつかないように慎重に、ただ絵筆を動かすことが簡単ではないことが伝わってきます。
渡部裕二 Yuji WATABE
〔1974年三重県生まれ、名古屋芸術大学卒業〕
個展のほか、福岡市美術館、CCA北九州、フィリップモリスアートアワード2000、RICE GALLERY、食糧ビルのEMOTIONAL SITEなどグループ展に参加。
誰にも平等にある「物理的時間軸」と、その人の想いによって長くなったり短くなったりする「感覚的時間軸」。渡部さんの作品はその時間軸のあり方を具現化して見せています。壁に描いたドローイングはやがて薄れて消えていってしまうのですが、その儚さがより美しさを印象づけ、存在への想いは消え去ることのない永遠へと昇華されます。作品から感じる印象に切なさが伴うのは、過ぎ去ったはずの「時間」を留めようとすることへの共感と、それを取り戻すことへの諦めが入り混じり、自分の中にある過去の時間への想いが憧憬となって蘇ってくるからかもしれません。
【お問合せ】Bunkamura Gallery 03-3477-9174