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ニュースリリースのリリースコンテナ第二倉庫

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2025'02.12.Wed
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2007'07.08.Sun

慶応大など、乳幼児の言語音認識に関する脳内発達過程を解明

~赤ん坊は脳内回路のバトンタッチで言葉を聞く~
乳幼児で言語音認識の脳内発達過程を初めて解明


 The Journal of Neuroscience誌(2007年1月10日発行)に慶應義塾大学文学部心理学専攻(河合(皆川)泰代、小嶋祥三(※)、直井望)と国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所(森浩一)の共同研究の成果が発表されました。この研究では日本語環境で育つ乳幼児を対象に、日本語に特有な母音の長さの違いを大脳がどのようにして受容していくかを、無侵襲な近赤外分光法(光トポグラフィー)を使って計測しました。この研究は日本語に特有な音素体系を身につけていく際の脳の機能的発達過程を初めてとらえたものです。これにより、言語習得の過程の解明に役立つとともに言語発達において障害があった場合の機能的脳検査およびリハビリテーションへの応用の道を開くものと考えられます。

※正式表記は添付資料をご参照ください。

1.実験について
 日本語には、「角(カド)」と「華道(カドー)」のように、母音の長さによって意味が異なる単語があります。日本語話者は日本語を獲得することにより、わずかな母音の長さの違いを聞き分け瞬時に長・短母音を判断する能力を身につけますが、外国人日本語学習者にとってはこの区別が困難となります。
 この研究は、日本語環境で育つ3ヶ月齢から28ヶ月齢の乳幼児が、上記のような長・短母音の違いをどのように受容していくかを、近赤外分光法(光トポグラフィー,あるいはNIRS とも呼ばれる)で測定しました。(写真参照)近赤外分光法は、生体透過性の高い近赤外光を頭皮上から照射し、脳を通って再び頭皮に戻る散乱光を検出することにより、大脳皮質の血液中のヘモグロビンの変化を測定し、脳の活性化状態を計測します。これにより、乳幼児でも安全に苦痛もなく、無侵襲に、運動・感覚・認知・言語・思考などに関係する大脳皮質の活動を測定できます。

 この研究では単語末の母音の長さが短母音から長母音へと4段階(A-D)に等しく変化する合成音の単語を用いました。これらは擬似的な単語で、最後の母音が短母音と認識される2単語/mama/A、/mama/Bと、長母音と認識される2単語/mamaa/C、/mamaa/Dです。実験条件としては、母音の長さの変化が言語的に意味のある条件(長・短母音の違い、/mama/B と/mamaa/C)と意味のない条件(長・短各群内での変化、/mama/A と/mama/B など)を設定し、それぞれの組み合わせに対する脳反応を比較しました。


2.研究成果について(図を参照)
 実験の結果、言語的に意味のある長・短母音の違いに対応する聴覚野の活性化は6~7ヶ月齢で初めて現れ、10~11ヶ月齢で一旦消失し、13ヶ月齢以降に再び出現し、安定することがわかりました(図の音韻特異的反応)。このようなU 字型の発達は他の認知発達においてもしばしば確認されています。しかし、それに対応する脳機構は明らかになっていませんでした。さらに、13ヶ月齢以降の乳幼児においては、活性化の左半球優位性、つまり、言語機能を担っているいわゆる左脳が主として働いていることがわかりました(図の側化指数)。

 総合的に解釈すると、日本語特有の長短の母音の区別は、生まれてすぐに区別できるほかの一般的な音韻と異なり、日本語環境で育つことで生後数ヶ月して発達しますが、この最初の脳反応は左右差がなく、聴覚系の一般的な音を区別する機構が発達したものと考えられます。満1歳頃に長短母音の区別が本格的な言語機能に組み込まれるに際して、それまで使われていた非特異的な神経機構が一旦停止されて、新たに左に側性化した言語音を専門に処理する神経機構に切り替わり、言語音が能率的に区別できるようになるものと考えられます。

 この研究は日本語に特有な音素体系を利用して言語音の受容・獲得における脳内発達過程を初めてとらえたものです。これにより、言語習得の過程の解明に役立つとともに、言語発達において障害があった場合の無侵襲な機能的脳検査およびリハビリテーションへの応用への道を開くものと考えられます。


3.The Journal of Neuroscience 誌への記事掲載について
 2007年1月10日発行のThe Journal of Neuroscience誌第27巻2号(北米神経科学会)に上記の共同研究の成果が発表されました。その号の特筆すべき論文として、This Week in The Journalのコーナーの4つの論文の中の一つとして写真つきで紹介されています。

掲載タイトル:Neural attunement processes in infants during the acquisition of a language-specific phonemic contrast.(邦訳:乳幼児における言語特異的音韻弁別の獲得に際しての神経系の調音発達過程)

 著 者:河合(皆川)泰代 科学技術振興機構CREST、慶應義塾大学訪問研究員
      森 浩一 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所感覚機能系障害研究部室長
      直井 望 慶應義塾大学社会学研究科大学院生
      小嶋祥三(※) 慶應義塾大学文学部教授
 論文の英文抄録:http://www.jneurosci.org/cgi/content/abstract/27/2/315?etoc
 同号の紹介記事:http://www.jneurosci.org/cgi/content/full/27/2/i

 この研究は科学技術振興機構CREST(戦略的創造研究推進事業、慶應義塾大学)と慶應義塾大学21世紀COE、厚生科学研究費補助金(感覚器障害研究事業、国立身体障害者リハビリテーションセンター)の補助により実施されたものです。


*本資料は、文部科学記者会、科学記者会、厚生労働記者会、各紙社会部、各紙科学部に送信しております。

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