セイコーNPC、制御アンプ内蔵のサーモパイル型多素子赤外線センサーチップを開発
64素子(8×8)素子、256(16×16)素子制御アンプ搭載
サーモパイル型赤外線センサチップを開発
セイコーNPC株式会社(略称:NPC、本社: 東京都中央区日本橋兜町15番6号、代表取締役社長: 五味 佳文)は、赤外線センサとCMOS ICを融合した新規半導体プロセスを開発し、制御アンプ内蔵のサーモパイル型多素子赤外線センサの試作に成功しました。本技術の開発により一般に高価である多素子赤外線センサが安価で実現可能になり、従来では採用が困難であった機器への応用が期待できます。
近年、エアコンの制御により快適な室内の温度環境の実現、夜間の安全を保つための監視等に、より安価で応答速度の速い多素子赤外線センサが求められています。
NPCは制御論理回路および、アナログ信号回路とサーモパイル型赤外線センサを、全て同一シリコンチップ上に集積可能にするために、モリゲート(R) CMOS(*1)プロセスとMEMSプロセスを一貫工程で製造できる新規半導体製造プロセスを開発しました。本プロセスで試作された64(8×8)素子および、256(16×16)素子のサーモパイル型多素子赤外線センサは、1チップ化により従来複数のチップで製品化されていたものに比べ、S/N比が4倍に向上し、加えて、安価な缶パッケージに実装することが可能になりました。さらに、微弱なセンサ出力を低雑音で増幅する新方式のアンプをセンサと同一チップ上に集積することで、外来ノイズの影響を受けなくなりました。
64(8×8)素子および、256(16×16)素子のサーモパイル型多素子赤外線センサ試作品の特長は、以下の通りです。
(1)センサ素子の出力レベルが2倍に向上。また、新アンプを搭載したことにより、雑音レベルが半分以下になり、トータルS/N指標が向上。その結果、1秒間隔の体温測定が0.2℃の誤差で測定可能
(2)高速応答が可能。64素子の試作品では毎秒10フレームの速度で±0.5℃での温度監視が可能
(3)20倍から200倍までのレンジ調整が外部からのソフト制御により可能で、最適な温度レンジを設定し、温度測定が可能
(4)センサチップにはバンドギャップ型温度センサが内蔵されており、ICチップの温度が測定可能
(5)1チップ化によりモジュールの実装密度が向上し、安価なT0-5の缶パッケージに64(8×8)素子までを実装することが可能。なお、256(16×16)素子品についてはTO-8のパッケージでの試作を予定
非接触、高画素で温度測定が可能なサーモパイル型多素子赤外線センサは単なる人体検知ではなく、犬などの他の動物との区別をすることが可能になります。また、広い範囲での温度分布を正確に測定できるようになり、従来にない用途への可能性を広げました。
NPCでは、今後もより使いやすく安価で高性能のサーモパイル型多素子赤外線センサ商品の早期実現をめざして行きます。
*1.「モリゲート(R)」はセイコーNPC株式会社の登録商標です。
本開発は、株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペース(本社:東京都江東区豊洲3-1-1豊洲IHIビル、社長:浅井達朗)より技術導入したMEMS技術を活用したサーモパイル型赤外線センサを発展させたものです。
[試作品64(8×8)素子品の主な特長]
・高速応答、高感度、低ノイズ
・倍率可変プリアンプ(20倍~200倍)により、広い温度レンジの測定が可能
・小さなSiレンズ付TO-5パッケージで、64(8×8)素子+4アンプを実現
・1アンプ出力-8pin実装/4アンプ出力-12pin実装両対応(4アンプ並列出力による高速化が可能)
・チョッピング制御スイッチ内蔵
・消費電力:0.6~0.7mA (1出力)、2.1~2.5mA (4出力)
・入力換算ノイズ密度:60nV/√Hz程度(センサ+アンプ200Hz~)
アンプのみ:25nV/√Hz以下(200Hz~)、300nV/√Hz以下(1Hz~)
・バンドギャップ型温度センサ内蔵
・応答速度 熱時定数:3~4ms
[主な用途]
・セキュリティ機器
・防災機器
・エアコン
・簡易サーモグラフィー装置
・電子レンジ
[量産予定時期]
・16×16、8×8素子製品:2007年度下期
[お問い合わせ先]
セイコーNPC株式会社
営業部商品技術課
TEL:03-6667-6601
FAX:03-6667-6611
Email:sales@npc.co.jp
◇NPCは、1975年に設立、操業を開始したセイコーグループの半導体IC専業メーカーです。