日本ムーグ、F1向けに制御精度を向上した「デュアルゲイン」モデルを提供開始
ムーグ、F1向けに「デュアルゲイン」超小型サーボ弁を開発
制御精度とエネルギー効率が向上
日本ムーグ株式会社(代表:ショーン・ガートランド、本社:神奈川県平塚市)は、軽量かつ高性能の超小型サーボ弁E024の分解能を従来の250%に高め、制御精度を向上した「デュアルゲイン」モデルを提供開始します。この新型バルブはムーグのモータースポーツ・デザイン・センター(英国グロスターシャー州テュークスベリー市)で開発され、本年すでに複数のF1レースチームによって採用されていますが、残りのシーズン中にも新たに採用するチームが増える見込みです。
ムーグのE024サーボ弁は、電気信号を油圧へ変換し制御するためのインターフェースとして利用されており、車体に搭載されるECU(電子制御ユニット)から送られる電気信号を、ディファレンシャルギアやギヤシフト、クラッチ、スロットル等を作動させる油圧アクチュエータへ送ります。その重量がわずか92グラムと軽量で、2002年からF1チームに採用されています。
新モデルでは、出力流量ゼロ点付近の流量ゲインを40%に低下させることで、バルブ全開時のシステム応答を維持しながら、制御精度(分解能)を従来の250%に高めることができました。これは、例えばドライバーのより細かいスロットル制御や、高精度なクラッチ操作を可能とします。また、ゲインを二段階(デュアル)にすることで、油圧装置が作動していない間、作動油の流量が制限され、システムのエネルギー効率が最大約35%改善します。結局、これはF1レーシングカーに搭載する油圧系のアキュムレータとポンプのコンパクト化にも繋がります。
ムーグは、積極的にモータースポーツ向けの製品ラインを拡充しています。WRC(世界ラリー選手権)の出場チームに対して、ギヤシフト、クラッチ、センターディファレンシャルの制御用に別モデルのサーボ弁を提供しており、この一年の間にF1向けに燃料圧力調整弁、F1とWRC向けに小型油圧アクチュエータを提供開始しています。新モデルはF1のレーシングチームに加えて今回のE024サーボ弁の性能向上がMoto GPからも関心を集めるものと期待しています。国内において本日より受注生産での販売を開始します。
*注記
ゲインまたは流量ゲインとは、ある入力電流が生み出す出力流量を表します。ゲインを少なくすれば入力電流に対する出力流量が減り、分解能が高くなります(より細かく制御できるようになる)。
二段階(デュアル)ゲインとは、高いと低い出力流量に夫々異なる分解能を持たせることで、細かい制御と高速の応答が両立可能です。これにより、低い出力流量においてより正確な駆動を実現し、温度と圧力変化の性能への影響を低減させることができます。
●画像:超小型E024サーボ弁
(※ 関連資料を参照してください。)
<デュアルゲインE024の性能特性>
最大供給圧力:21.0MPa
定格流量(弁圧力降下7.0MPa時):2.0,3.8,5.0、7.0l/min
重 量:92g
最大使用温度:165℃
最大衝撃負荷:25G
●添付資料
グラフ1:デュアルゲインE024の流量制御特性
図1:F1マシンにおけるシステム構成例
(※ 関連資料を参照してください。)
【ムーグについて】
ムーグ(ニューヨーク証券取引所上場)は、1951年に設立され、本社をニューヨーク州イーストオーロラに置いています。精密制御機器とシステムの設計、製造、構築を世界規模で展開する企業です。ムーグの高性能システムは、航空機、人工衛星、宇宙船、打ち上げロケット、一般産業用機械、医療機器等の制御に利用されています。2006年、ムーグの総売上は、前期比24%増の13億米ドルに達しています。
日本ムーグは、ムーグの完全な子会社です。1970年に設立され、ムーグの機器とシステムの日本国内での開発、製造、流通、サービスを行っています。
詳細は、 www.moog.co.jp をご参照ください。
以上
(※ 画像、添付資料は関連資料を参照してください。)