林木育種センター九州育種場、松枯れに強いマツの効率的なさし木技術を開発
松枯れに強いマツの効率的なさし木技術を開発
1 概要
独立行政法人森林総合研究所林木育種センター九州育種場(熊本県合志市)では、福岡県、佐賀県及び九州大学と共同で、松枯れに強いマツの効率的なさし木技術を開発しました。この技術によって、マツノザイセンチュウ抵抗性が高い苗木を低コストかつ確実に生産することが可能となり、松枯れに強い苗木のより一層の普及が期待されます。
2 これまでの抵抗性苗木の生産方法
マツはさし木による増殖が難しいため、通常はマツノザイセンチュウ抵抗性品種の苗木を植栽して採種園を造り、そこから得られた種子で苗木を育てています。
さらに、九州地方ではその苗木にマツノザイセンチュウを人工接種し、抵抗性が高いものを選別して出荷していますが、この人工接種と選別には専門的な知識と多大な労力を必要とすることから、生産コストが高くなっていました(別紙参照)。
3 今回開発した技術のポイント
今回開発した技術は、マツノザイセンチュウを人工接種して選別した抵抗性が高い苗木を剪定し、萌芽枝(別紙写真参照)を発生させ、これらをさし穂として用いることでさし木発根率を70%以上に向上させるものです(注)。
さし木は親の遺伝子をそのまま受け継ぐため、マツノザイセンチュウに高い抵抗性を持つ苗木を確実に生産することができます。また、さし穂として用いる萌芽枝は、毎年大量に発生させることができ、抵抗性苗木を一度選別すれば、さし木をすることで抵抗性苗木の生産が繰り返し可能となり、生産コストを下げることができます(別紙参照)。
※ ただし、クローンによって発根率に差がみられます。
4 今後の取組
今後、森林総合研究所林木育種センターと九州各県の関係機関を通じ、今回開発した技術の普及を積極的に図ることとしています。
なお、技術開発に当たっての調査・研究の一部は、農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」により実施したものであり、この技術は現在特許出願中です。
(注)成木の枝を用いたさし木の場合、ほとんど発根しません。