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2024'09.22.Sun
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2008'01.08.Tue

ソニー、ぶどう糖で発電するバイオ電池を開発

ぶどう糖で発電するバイオ電池を開発 
~パッシブ型バイオ電池で世界最高出力を達成~


 ソニー株式会社(以下ソニー)は、植物に含まれる栄養源である炭水化物(ぶどう糖)を酵素で分解して活動エネルギーを取り出す生物のしくみを応用し、活動エネルギーのかわりに電気エネルギーを取り出して発電するバイオ電池(※1)を開発しました。
 今回試作したバイオ電池は、パッシブ型(※2)バイオ電池の基礎研究成果として、50mWの世界最高出力(※3)を達成しています。また、試作したバイオ電池を使って、ウォークマン(メモリータイプ)による音楽再生を実現しました。

<試作したバイオ電池セル4個(左)をつなげてウォークマンを駆動>
 世界最高の出力を実現するにあたっては、ぶどう糖を効率的に分解して電気エネルギーを取り出せるよう、酵素と、電子伝導を助けるための電子伝達物質を、活性を維持した状態で高密度に電極(負極)に固定化する技術を開発しました。また、反応に必要な酸素を効率的に取り込めるように、電極(正極)内の水分を適度に保つ技術を開発しました。これら2つの技術に最適化された電解質を用いることで高出力の発電が可能となりました。

 ぶどう糖は、太陽光を受けた植物が、光合成によって合成する物質の1つで、地球上に豊富に存在する再生可能なエネルギー源であり、ぶどう糖で発電するバイオ電池は、環境にやさしい将来のエネルギーデバイスとして期待されます。
 ソニーは、今後も酵素固定化方法や電極材料の開発による発電性能や耐久性の向上など、様々な要素技術の研究開発を行い、将来の実用化を目指していきます。
 なお、この研究成果は、米国マサチューセッツ州ボストンで8月19~23日に開催のアメリカ化学会ACS(American Chemical Society)234th National Meeting & Expositionに採択され、現地時間の8月22日午前11時(日本時間8月23日午前0時)に発表しました。

■今回開発したバイオ電池のしくみ
 ぶどう糖で発電するバイオ電池は、ぶどう糖を分解する酵素と電子伝達物質を固定化した電極(負極)と、酸素を還元する酵素と電子伝達物質を固定化した電極(正極)で、セパレーターを挟んだ構造になっています。
 負極側では、外部からぶどう糖(グルコース)の水溶液を取り込み、ぶどう糖を酵素で酸化分解する際に電子と水素イオンを取り出します。
 〔グルコース →グルコノラクトン + 2H+ + 2e-〕
 水素イオンはセパレーターを介して、負極側から正極側に移動します。正極側では、空気中の酸素を取り込み、電子と水素イオンによる還元反応によって水が生成されます。
 〔(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O〕
 この一連の電気化学反応を通じて、電子が外部回路を移動する際に、電気エネルギーが取り出されます。

 * 関連資料「バイオ電池のしくみ」 参照

■主な研究開発のポイント

1) 酵素・電子伝達物質の高密度固定化技術による発電性能向上
 負極では、電極上に、酵素や電子伝達物質を、活性を維持した状態で高密度に固定化する必要があります。今回、これらの物質を固定化する糊の役目を果たす物質として、2種のポリマーを用いました。この固定化方法は、異なる符号のイオン性を持つ2種のポリマーの静電相互作用を利用して酵素や電子伝達物質を電極上に高密度に固定化するもので、イオンバランスや固定化膜電極作成プロセスを最適化することによって、ぶどう糖を分解して電子を取り出す効率を飛躍的に向上させることに成功しています。

2) 酸素を効率よく取り入れる独自開発の電極構造による発電性能向上
 正極では、酸素を効率よく取り入れつつ、酸素の還元を担う酵素を効率よく働かせるために、電極の水分量を適度に保つ必要があります。今回、電極には酵素・電子伝達物質が固定化された多孔質カーボンを、セパレーターにはセロハンを使用し、それらの構造やプロセスを最適化することで、正極を、適度に湿った状態に保つことができ、反応効率を向上させることができました。

3) 独自のバイオ電池構造に最適化した電解質
 通常、バイオ電池の電解質に含まれるリン酸ナトリウム緩衝液の濃度は、0.1 M程度で用いられています。これに対して、今回開発したバイオ電池の構造では、従来の常識を超える濃度1 Mが使われています。この電解質を用いることにより、電極表面に固定化される酵素の活性を効率的に引き出せることを見出し、発電特性の大幅な向上に成功しました。

4) 高出力・コンパクトを両立するバイオ電池を試作
 今回開発した技術を使って高出力・コンパクトのバイオ電池を試作しました。このバイオ電池は、負極に接するタンクにぶどう糖溶液を滴下するだけで、溶液の攪拌は不要であり、酸素も外部からの自然拡散によって正極に取り込むパッシブ型です。1辺39 mmのキューブ状のバイオ電池1ユニットで50 mWの世界最高出力を達成しました。この度、このバイオ電池4ユニットを直列に接続することでメモリータイプのウォークマン(NW-E407)とパッシブ型スピーカー(ウォークマンからの電源供給で作動)をバイオ電池の電源のみで動作させて、音楽を再生させることができました。バイオ電池の筐体は、植物原料プラスチック(ポリ乳酸)製で、細胞をイメージしたデザインとなっています。 

■ 今回開発したパッシブ型バイオ電池の技術仕様
酵素       : (負極側)グルコースデヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ
            (正極側)ビリルビンオキシダーゼ
電子伝達物質 : (負極側)ビタミンK3、補酵素NADH
            (正極側)フェリシアン化カリウム
電極材料    : 多孔質カーボン
集電体材料   : チタンメッシュ
セパレーター  : セロハン
ぶどう糖溶液  : グルコース水溶液(0.4M)とリン酸ナトリウム緩衝液(1M、pH7.0)の混合溶液
最大出力    : 1.5 mW/cm2(0.3V、5mA/ cm2)
            ※発電開始1分後の安定発電データ
OCV       : 0.8V

■ 今回試作したバイオ電池(1ユニット)の仕様
外形寸法  : 幅39 ×高さ39 ×奥行き39 (mm)
電池部容量 : 約40cc(筐体を除く実質的なサイズ)
最大出力  : 約50 mW 


■注釈
(※1) バイオ電池:
 炭水化物、脂質などの栄養源を酵素で分解して活動エネルギーを得る生物のしくみを応用して、活動エネルギーのかわりに電気エネルギーを取り出す発電デバイス。
 ソニーでは、2001年以降、バイオ電池の研究を精力的に行っている京都大学大学院農学研究科生物機能化学講座の加納研究室(旧池田研究室)より生物電気化学についての技術協力を頂いています。今回の成果は、これら先進的な知見をもとに、ソニーが独自開発した技術で実現しています。

(※2) パッシブ型:
 ぶどう糖溶液と酸素など反応させる物質を自然拡散で電極に取り込む方式。これに対して、反応させる物質をポンプなどによって強制的に送り込む方式をアクティブ型と呼ぶ。パッシブ型は構成がシンプルで小型化に向く。アクティブ型は、システムは大型で複雑になるが高出力化に向く。

(※3) 50 mWの世界最高出力 :  2007年8月23日現在 当社調べ

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