三菱重工、下関造船所に大型アルミ高速船対応の新規生産設備を導入
アルミ高速船事業の基盤を強化
下関造船所 大型アルミ高速船を対象とした生産設備を拡充
三菱重工業は、アルミ高速船事業を拡充するため、生産設備を従来の中小型船対象から大型船にも余裕を持って対応可能な設備に切り換え、建造能力を増強する。そのため、同事業を手掛ける下関造船所の江浦工場(下関市彦島江の浦町)内にアルミ高速船用の新たな加工・組立工場を建設、隣接する旧工場にも大型船対応の新規設備を導入して、同事業の基盤を強化する。
19日、山口県の立会いの下、下関市との間で新工場建設協定の調印式が行われた。同式には、江島潔下関市長、和田卓也山口県商工労働部長のほか、当社から原寿執行役員下関造船所長が出席した。
今回の投資は、老朽設備の更新をはかるとともに、アルミ高速船の大型化傾向が顕著な近年の市場動向に対応するのが狙い。具体的には、50総トンから300総トンクラスを対象としてきた従来の生産設備を更新、400総トンクラス以上の大型アルミ高速船もゆとりをもって建造できる設備を構築して、同事業の競争力強化を目指す。
そのため、新規に建設する加工・組立工場を含めて、アルミ高速船工場全体のレイアウトを一新、各工程間の物流を改善する。また、NC(数値制御)切断機やクレーン設備を増強して、切断・加工・組立の各工程を効率化するともに、生産能力を拡充する。
着工は3月中旬。基礎工事から手掛けて本年10月に竣工の予定で、これによりアルミ高速船の工場面積は約1.5倍となる。工場完成後に向けて、アルミ高速船従事者の増強も計画中で、将来的には、協力会社の従業員も含め100人規模の体制を構築していく。
下関造船所江浦工場は1954年(昭和29年)に日本初の全軽合金製高速船を建造して以来、高速旅客船、水中翼船、巡視船、漁業取締船など各種のアルミ高速船を送り出し、国内トップクラスの建造実績を有している。しかし、市場の主流が小型船から大型船へシフトする中で、これまでの中小型船を対象とした設備に、新規設備を継ぎ足しながら大型船にも対応してきた従来の方式から脱却して、新たな生産設備の拡充による事業基盤の強化を迫られていた。
下関造船所は2006年8月より、大和町工場(下関市東大和町)内に建設した米国ボーイング社次期主力旅客機「787」向け複合材部品(ストリンガー)生産のための航空機工場の本格的な生産をスタートさせているが、今回、フェリー、特殊船、高速船を得意とする造船部門への久しぶりの投資を行い、アルミ高速船の競争力強化を実現することで、陸上・航空機事業の充実に加え、主力事業である船舶事業の更なる増強を進めていく。
以 上