帝国データバンク、6月の全国企業倒産集計を発表
●2007年6月報
倒産件数は985件、9ヵ月連続の前年同月比増加
負債総額は3364億2700万円、2ヵ月連続の前年同月比減少
・倒産件数 985件
前月比 3.1%減
前月 1016件
前年同月比 32.4%増
前年同月 744件
・負債総額 3364億2700万円
前月比 2.3%減
前月 3443億8700万円
前年同月比 12.2%減
前年同月 3832億700万円
【 ポイント 】
・件数は985件、2005年4月以降で2番目の高水準。
・倒産件数は985件、5月(1016件)を31件下回ったものの、集計対象を変更した2005年4月以降で2番目の高水準となった。9ヵ月連続の前年同月比増加。
・負債総額は3364億2700万円で、前月比は2.3%の減少、前年同月比も12.2%の減少で、2ヵ月連続して前年同月を下回るとともに3000億円台にとどまった。
■件数
倒産件数は985件、5月(1016件)を31件下回ったものの、集計対象を変更した2005年4月以降で2番目の高水準となった。9ヵ月連続の前年同月比増加。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながら、確実にベースラインが上昇してきており、増加基調が持続している。
主な要因としては、業種別では建設業と小売業、規模別では負債1億円未満の小規模倒産の増加が顕著で、引き続き全体の倒産件数を押し上げる要因となっている。
■負債総額
負債総額は3364億2700万円で、前月比は2.3%の減少、前年同月比も12.2%の減少で、2ヵ月連続の前年同月比減少となった。
負債額トップは、2度目の民事再生法となった松庫工業(株)(東京)の300億円。
負債10億円以上50億円未満の倒産は41件(前月49件、前年同月39件)、負債100億円以上1000億円未満の倒産も4件(同4件、同9件)にとどまっている。
■業種別
全業種で前年同月比増加となった。
増加率では、小売業(201件、前年同月比+60.8%)がトップ。不動産業(33件、同+57.1%)、サービス業(161件、同+40.0%)がこれに続いている。
件数では、建設業(281件)、小売業(201件)の2業種が、集計対象を変更した2005年4月以降で最多となり、内需に直結する業種で倒産が増えている。とくに、建設業は前月(239件)を42件、前年同月(224件)を57件上回り、「脱談合」の影響から依然として高水準で推移。
【 今後の問題点 】
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2007年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は43.2となり、前月比0.6ポイント減と3ヵ月連続で悪化。2005年6月(43.0)以来24ヵ月ぶりに43ポイント台前半まで落ち込み、足元経済がこのところ弱含んでいることが一層鮮明となった。
■ナイジェリアの政情不安や夏場の需給ひっ迫懸念などによって、NY原油先物相場(WTI、期近)が一時1バレル=71ドル台へと10ヵ月ぶりの水準まで上昇し、鉄鋼・化学関連をはじめ幅広い業界で収益悪化への懸念が増幅。また、定率減税の段階的廃止や年金不信などを背景に依然として個人消費に回復の兆しがみられないこともあって、今回の景気回復を牽引してきた企業の設備投資意欲に息切れ感が強まった。
■業界別にみると、『建設業』や『小売』など内需関連業界は依然として40ポイント割れにとどまっているほか、規模別では大企業と中小企業の景況感格差が4.5ポイントとなり、集計開始の2002年5月以降で過去2番目の高水準。地域別では『南関東』と『北海道』の格差が14ポイント台と、業界間、規模間、地域間格差も一向に縮小する気配がみられない。内需関連企業や地方圏、中小・零細企業にとっては今なお景気回復感に乏しいのが実態である。
■こうしたなか、2007年上半期の法的整理による倒産は5394件となり、前期(4726件)比14.1%増、前年同期(4625件)比16.6%増で、ともに2ケタの大幅増加となった。月ベースでみると、前月比では増減を繰り返しながらも前年同月比では一貫して増加し、5月(1016件)は集計対象を変更した2005年4月以降で初めて1000件を突破。6月(985件)は1000件を下回ったものの前年同月比では32.4%増と、ここにきて増加ペースが加速している。
■半面、負債総額は2兆5725億5400万円となり、前期(2兆4670億7600万円)比4.3%増とわずかに上回ったものの、前年同期(2兆8047億2100万円)に比べ8.3%の減少となった。月ベースでみても、1月と4月は負債1000億円以上の倒産が発生したことにより前年同月を上回ったが、その他の月はすべて減少。5月は前年同月比49.6%減、6月は同12.2%減とともに2ケタ減となるなど、倒産件数の増加とは対照的に減少傾向が続いている。
■こうした「倒産件数増、負債総額減」の現象は、バブル処理型の大型倒産が総じて沈静化する一方で、小規模企業の倒産多発に歯止めがかからないことが背景にある。規模別にみると、負債100億円以上の倒産は34件(前期42件、前年同期47件)に減少したのに対し、負債1億円未満の倒産は前年同期比25.9%増、資本金1000万円未満の倒産は同35.2%増とそれぞれ大幅に増加。景気回復局面にありながら「不況型倒産」の割合(76.4%)が7割を大きく上回っているのは、いまだ景気回復感に乏しい小規模企業の倒産が増加していることに起因している。
■一方、金融機関が巨額の不良債権処理に追われていた時期に比べ規模は大きくないとはいえ、不動産やゴルフ場、第三セクターなどのバブル処理は粛々と進められた。また、建設業界をはじめ幅広い業界で「脱談合」や資源価格高騰の影響により力尽きるケースがみられたほか、粉飾や不透明な取引などコンプライアンス違反絡みの倒産や、パチスロ認定切れ機の撤去期限を控えたパチンコホール業者の倒産が頻発したことも、2007年上半期の特徴として挙げられる。
■政府は格差是正のため、地域・中小企業支援の拡充や「地域力再生機構」の創設を決定した。しかし、企業業績や設備投資がかつての景気牽引力を失いつつあるなか、「脱談合」の加速や資源高、個人消費の回復遅れなどが今後も確実に企業体力を疲弊させていくのは避けられない。また、金利上昇のほか、貸金業法の改正や2007年10月にスタートする信用保証協会と金融機関との「責任共有制度」が融資引き揚げ圧力となって中小・零細企業の資金繰りを悪化させることが予想されることから、倒産件数は年後半にかけてさらに増加する公算が大きい。