NEC、圧縮速度を大幅に高速化した衛星写真向けロスレス画像圧縮技術を開発
高速なロスレス画像圧縮技術を開発
~既存規格と同等の圧縮率で数十倍の速度を実現~
NECはこのたび、既存規格と同等の圧縮率を保ちながら、圧縮速度を大幅に高速化したロスレス画像圧縮技術の開発に成功しました。本研究成果は、宇宙航空研究開発機構(理事長:立川 敬二、本社:東京都調布市、以下JAXA)の金星探査計画(2010~)において、衛星写真のロスレス画像圧縮方式として採用される予定です。
このたび開発したロスレス画像圧縮技術は、独自の画素予測方式によって圧縮率と圧縮速度を両立させたもので、主な特長は以下の通りです。
(1) ロスレス画像圧縮の国際標準規格であるJPEG-LSやJPEG2000の可逆モードと同等の圧縮率を備えつつ、既存規格の十倍~数十倍の圧縮速度を実現。カラー写真を用いたソフトウェア圧縮実験でJPEG-LSの10倍以上、JPEG2000可逆モードの30倍以上の速度を達成。
(2) 画像を低解像度から順次圧縮展開するプログレッシブ符号化・復号機能に対応。低解像度のプレビュー画像などは、更に高速な圧縮展開が可能。
(3) 一般的な各色8bit階調から、より高精度な16bit階調までの自然画像に対応しており、医療・衛星写真など、科学解析や原本保存に必要な精度をカバー。
(4) 自然画像のロスレス画像圧縮に特化した新アルゴリズムの開発により、圧縮処理に必要な回路規模を小型化。ハードウェア回路への実装試験により、JPEG-LSより約20%小さく、可逆モード対応JPEG2000の1/10の回路規模で圧縮処理を実現できることを確認。
ロスレス画像圧縮は圧縮展開時に画質劣化が生じないため、(1)衛星写真などの科学解析用途、(2)医療画像など原本保存が必要な用途、(3)デジタル一眼レフなどの高品位デジタルカメラといった高精細画像を扱う用途への応用が期待されています。
しかし、一般に、ロスレス画像圧縮では情報の切り捨てが許されないため、多くの演算が必要となります。この結果、圧縮処理が非常に重くなり、大規模な画像データへの応用や低電力デバイスへの搭載が難しいという問題がありました。
このたび開発したロスレス画像圧縮技術では、対象を写真・自然画像のロスレス圧縮に限定し、簡易かつ高精度な画素予測方式を新たに考案することによって、画素予測時の演算負荷を大幅に低減しています。
新たに考案した画素予測方式では、サブサンプリングされた低解像度画像をもとに、独自の階層的2次元内挿予測手法を用いて高解像度画像を予測・符号化します。一般的な内挿予測では、低解像度の画素値のみを使って高解像度の画素値を予測しますが、本方式では、符号化処理中の現解像度で既に符号化が完了した画素値も併用するため、より高精度な予測が可能となります。また、現解像度で直前に符号化した画素を次の画素予測に再利用することができるため、メモリアクセス効率が高く、高速動作が可能です。
この結果、本圧縮技術は、従来のロスレス画像圧縮規格と同等の圧縮率を維持しながら、それらを大きく上回る圧縮速度を達成しました。JAXAの金星探査計画で採用が予定されている衛星搭載CPU上での予備実験で高い性能が確認されています。さらに、本圧縮技術はハードウェア回路としても有望であるため、将来の観測衛星での使用を目指して、現在、JAXAと共同でASIC化の研究を進めています。
記憶装置の容量拡大や通信網の高速化に伴って、より高品質な画像を保存・伝送できるロスレス画像圧縮への需要はますます拡大していくものと予想されています。NECは今後、本技術を活用して、画像・映像を高速・高効率・高品位に扱うための様々な応用を開拓し、より豊かな映像コミュニケーション環境の実現を目指していきます。
なお、NECとJAXAは、本研究成果と宇宙衛星分野への応用について、7月23日から27日までバルセロナで開催される国際会議「IGARSS 2007」で発表します。
以上
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NEC 研究企画部 企画戦略グループ
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