東和エンジニアリング、神戸女学院大と「遠隔同時通訳システム」の共同研究を開始
文系での産学連携「遠隔同時通訳システム」の共同研究開始
神戸女学院大学(西宮市、学長・川合真一郎)と株式会社東和エンジニアリング(本社・東京都台東区、代表取締役社長・新倉恵里子、以下「東和エンジニアリング」)は、遠隔地を結んだ同時通訳システムの産学連携による共同研究を開始しました。来春を目処に、研究成果をまとめる予定です。
【通訳の現状と課題】
グローバル化の進展に伴って、企業、学校、病院、公共施設などでは、日本語以外の言語を使った会議、講義、インタビューや病院での問診などの機会が増え、通訳へのニーズが増加しています。このような場では現在、通訳者が話し手や聞き手と同席して通訳を行うことがほとんどです。そのため通訳者は会議等の開催場所への移動経費が発生する上に、時間的な拘束も受け、これらの要因による割高感などが通訳の積極的な利用を妨げる一因にもなっていました。
図1.従来の通訳方法(A、Bどちらの会場にも通訳者が必要)
※添付資料を参照
遠隔同時通訳とは、このような問題を解決するため、通訳者がその場にいなくとも、離れた場所から高品質な同時通訳音声を利用者に供給し、あたかも通訳者がその場で同時通訳しているかのような効果を上げるものです。
【遠隔同時通訳システムとは】
国際会議など同時通訳を必要とする会場から離れた場所に実際に通訳を行う「通訳センター」を設置、この「通訳センター」と会場をインターネット回線で接続し、専用機器を用いて高品質な通訳音声をリアルタイムに供給することにより、通訳者が会場に同席しなくてもハイクオリティな同時通訳を可能にするシステムです。
また、HD(ハイディフィニション)クオリティのビデオ会議システムの映像を併用することにより、話し手、聴衆、質問者などの表情が遠隔地からも鮮明な映像で確認できるため、話し手の表情や状況を理解した適切な同時通訳を行う事が可能となりました。このため、通訳者は必ずしも現場に同席する必要がなくなり、移動のための交通費や時間が削減できます。また、近隣に通訳者がいない地域でも、手軽に同時通訳を利用できるようになり、結果、通訳利用の活性化が期待できます。
今後、このシステムの利用先としては、企業や団体の国際会議、海外からの遠隔授業、国際シンポジウム、病院・公共施設などでの外国人受付などが考えらます。
尚、通訳には発言者の言葉を同時に通訳していく“同時通訳”と、発言者が一定時間話をして、ある程度まとまった文節の区切りで通訳していく“逐次通訳”の2通りの手法が有り、通訳者が遠隔地で通訳するという点では同時・逐次の両方での利用が可能ですが、今回の研究では同時通訳という点に焦点をあてています。
図2.遠隔同時通訳(通訳センターで両言語の通訳をまかなうことができる)
※添付資料を参照
A会場で行われている外国語の講演を通訳センターで日本語に通訳する。
訳された日本語はB、C会場に配信される。B、C会場から出された日本語による質問は、通訳センターで外国語に訳されA会場に伝えられる。 ※このシステムは、同時通訳に限らず、逐次通訳の場合にも利用可能。
【研究内容】
東和エンジニアリングが既に実用化している同時通訳システムと高品位ビデオ会議システムを併合した遠隔同時通訳システムを、神戸女学院大学側は通訳者側の立場から検証し、技術者側と実務者側の双方から意見を出し合ってより良い遠隔同時通訳システムの開発を目指します。また、他大学の講義を神戸女学院大学で同時通訳音声を使って受講するなどの試みも検討しています。
この検証結果をもとに東和エンジニアリングは、実務と技術の両面からシステムをさらに進化させて、遠隔同時通訳システムの機能向上をはかります。
【研究目的】(研究の今後)
この研究は、遠隔同時通訳システムの設備・機能を、より使い易くスリムにすることで、企業、学校、病院、公共施設などで通訳を必要とする人たちが、手軽に安価で利用できる環境をつくることを目的としています。
また、既存の遠隔同時通訳での通訳者側の課題として考えられる中継音声と映像のズレなどは、口の動きを見ながら訳していく通訳者にとっては非常にストレスとなるものです。このシステムの研究でこのような課題を解決することによって通訳者の負担を減らし、通訳者側がより完成度の高い“同時通訳”を供給できるようにすることも目的のひとつとしてあげられます。