ルネサステクノロジ、90nmプロセスを採用した32ビットSuperHファミリーを開発
業界初、90nmプロセスをフラッシュメモリ内蔵マイコンに適用し、業界最高速レベルの200MHz動作を実現したSuperHファミリ「SH72546RFCC」を開発
- 高性能CPUコア「SH-2A」を搭載し、当社従来品の約4倍の高性能化により、エンジンやトランスミッションの高精度なリアルタイム制御を実現可能 -
株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区、会長&CEO:伊藤 達)は、このたび、自動車のエンジンやトランスミッション等の制御プログラム開発向けに、フラッシュメモリ内蔵マイコンでは業界で初めて90nm(ナノメートル)プロセスを採用した32ビットSuperH(TM)(注1)ファミリ「SH72546RFCC」を開発し、2007年10月からサンプル出荷を開始します。
本製品は、業界最高速レベルの200MHz動作を、車載用途で求められる動作周囲温度125℃という高温環境下において実現しています。加えて業界最大クラスの大容量フラッシュメモリを内蔵しており、先進の高精度な制御を実現可能です。
また、本製品は制御プログラム開発用の製品で、当社は、今後、本製品をベースに、性能やパッケージ、ピン配置の互換性のある量産仕様の製品ラインアップを2008年から展開します。本製品は機能、パッケージとも量産仕様の製品と完全互換のため、ユーザは本製品を量産仕様品と同等に扱って機器設計やプログラム開発を行うことができ、量産品への適用をシームレスかつ迅速に行えます。
特長は、以下のとおりです。
(1)高性能CPUコア「SH-2A」と200MHzの高速動作により、高度なリアルタイム制御が可能
本製品は、スーパースカラ方式及びハーバードアーキテクチャを採用した高性能CPUコア「SH-2A」を搭載しています。当社従来品のエンジン制御向けマイコンに搭載している「SH-2E」CPUコア(「SH-2」にFPUを搭載)に比較し、同一周波数で1.5倍以上の高性能化を実現しています。
加えて、動作周波数は業界最高速レベルの200MHzと、当社従来品の「SH7050シリーズ」での最大80MHzに比較して2.5倍に高速化しており、CPUコアの処理性能は約4倍に向上しています。これにより、エンジンやトランスミッションのよりきめ細かで高度なリアルタイム制御を実現可能です。
また、「SH-2A」は「SH-2E」と互換性があり、既存のプログラムを流用することができるため、プログラムの開発期間短縮に寄与します。
(2)3.75Mバイトの大容量フラッシュメモリを搭載
90nmプロセスを採用することで、業界最大クラスの大容量となる3.75Mバイトのフラッシュメモリ内蔵を実現しており、大規模プログラムの格納が可能です。加えて、データ格納用途向けにEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)とほぼ同等機能のフラッシュメモリを128Kバイト内蔵しており、データ格納用の外付けメモリを不要とすることができるため機器の低コスト化を図れます。
また、フラッシュメモリ部は、動作原理上、ロジック部に対し最高動作速度は遅くなります。このため、本製品では、当社独自の技術によりフラッシュメモリの高速化を図り、加えて、キャッシュ回路の搭載により、200MHzで1サイクルアクセスとほぼ同等の性能を実現しています。
(3)エンジンやトランスミッション制御向けの豊富な周辺機能を搭載
本製品は、エンジンやトランスミッション制御に適した豊富な機能を搭載しています。エンジンやトランスミッションの制御に有用な多機能タイマユニット(ATU-III:Advanced Timer Unit III)に加え、高速12ビットA/D変換器、CAN(注2)インタフェース、SPI(Serial Peripheral Interface)などの豊富な周辺機能やインタフェースを搭載しており、高精度なリアルタイム制御を可能にするとともに小面積での実装を実現可能です。
(4)プログラムの開発効率を向上する機能を搭載
プログラム開発用に特化した機能として、ユーザが使用するRAMとは別に、大容量のエミュレーションRAM(注3)を搭載しています。本RAMは、フラッシュメモリ領域にオーバーラップさせるもので、マイコンの動作中にデータを任意に書換えながら、アプリケーションプログラム上の制御パラメータの調整をリアルタイムに行うことが可能です。また、AUD(Advanced User Debugger)などのデバッグ機能を搭載しており、これらの機能により、ユーザにおけるプログラム開発の効率向上を支援します。
<製品化の背景>
近年、自動車分野では、環境保全への対応として、排ガス規制がますます厳しくなり、また、燃費向上が求められています。このため、エンジンやトランスミッション等の制御機器は、さらなる高精度化が求められており、これにともなって、制御用マイコンには、より一層の処理性能向上と、きめ細かな制御をするための大規模プログラム対応、即ち、プログラム格納用内蔵メモリの大容量化へのニーズが高まっています。加えて、新規の機器を開発する際には、既存の資産を流用できることも、ますます重要になっています。
当社は、このような市場向けに、これまで「SH-2E」CPUコアを搭載した「SH7050シリーズ」を量産し、多くの機器に採用され、高いシェアがあります。しかし、今後、さらに高まっていく高性能化へのニーズに対応するため、「SH-2E」と互換性を保ちかつ性能を大幅に向上した「SH-2A」CPUコアを搭載し、加えて90nmプロセスの採用により、200MHzの高速動作と大容量フラッシュメモリを内蔵する製品をラインアップします。そして今回、第一弾として、プログラム開発用の製品「SH72546RFCC」を開発しました。
<製品の補足>
「SH72546RFCC」は、リアルタイム制御に優れた高性能CPUコア「SH-2A」を搭載し、200MHz動作時で約400MIPS(million instructions per second)の高処理性能を実現しています。
また、プログラム格納用途として、3.75Mバイトの大容量フラッシュメモリを内蔵しており、よりきめ細かで高度な制御を行うためのプログラムの大規模化に対応できます。加えて、動作時にデータを書換えできる128KバイトのEEPROM機能領域を内蔵しており、従来、外付けしていたEEPROMなどの部品が不要となるため、機器の低コスト化を図れます。
さらに、本製品は、エンジン制御向けに適した豊富な周辺機能を搭載しています。ATU-IIIは、エンジンやトランスミッション制御に有用な機能で、32ビットインプットキャプチャ/アウトプットコンペア、ワンショットパルス出力、PWM(Pulse Width Modulation)出力などで構成され、最大106本のパルス出力が可能なタイマです。また、12ビットA/D変換器は、入力本数が37チャネルあり、多くのセンサからのアナログ情報を高速に変換できます。その他、車載ネットワークのCANインタフェースや外部デバイスを接続可能なSPIなど、豊富な通信インタフェースを搭載しています。これらの豊富な周辺機能やインタフェースにより、機器の部品数低減を図れます。
パッケージは、272ピンP-BGA(21mm×21mm)を採用しています。
開発ツールとしては、USBバスパワードで外部電源不要のコンパクトなオンチップデバッギングエミュレータ「E10A-USB」、フルスペックエミュレータの「E200F」などを使用できます。
今後、本製品のエミュレーションRAMなどのデバッグ用機能を省いた量産仕様の製品について、内蔵フラッシュメモリやRAM容量の展開製品、また小ピンパッケージ品などを製品化し、市場ニーズに対応していきます。
■注記
(注1)SuperH(TM)は、(株)ルネサステクノロジの商標です。
(注2)CAN:Controller Area Networkの略で、独Robert Bosch GmbHが提唱している車載用のネットワーク仕様
(注3)エミュレーションRAMは、ユーザRAMとは別の調整用のRAMです。
アドレスをフラッシュメモリ領域にオーバーラップさせ、マイコンの動作中でもデータを任意に書換えることを可能にします。
*その他記載の製品名、会社名、ブランドは、それぞれの所有者に帰属します。
■応用機器例
エンジン、トランスミッション制御などの車載機器のプログラム開発用
■価格
製品名:SH72546RFCC
パッケージ:272ピンP-BGA (21mm×21mm)
サンプル価格(円)<税込>:98,000
■仕様
(※ 関連資料を参照してください。)
(※ 製品画像、仕様は関連資料を参照してください。)