日本ムーグ、オランダ社がモータースポーツ専用のロードシミュレータシステムを日本で発売
Moog FCSがモータースポーツ専用次世代型ロードシミュレータを開発
~少ない実走行時間内で高速走行中の旋回性能を向上~
日本ムーグ株式会社(代表:ショーン・ガートランド、本社:神奈川県平塚市)は、オランダの姉妹会社Moog FCS B.V.が開発したモータースポーツ専用のロードシミュレータシステムを9月より日本市場向けに発売開始します。同システムは、レーシングカーが高速でターンする際に発生する車体の“ねじれ”を再現することができる、世界初の『8軸ロードシミュレータ』です。日本ムーグでは日本国内のレーシングチームや試験施設などから需要を見込んでいます。
レーシングカーは、前後などに配置された大型のウィングにより、車体に対して強力なダウンフォース(下方向の力で、路面への接地力を高める効果)を発生させて、ターン時の速度を高めています。従来、こうしたダウンフォースは、標準的な4 軸ロードシミュレータ(タイヤの下に油圧アクチュエータを配置したタイプ)に、油圧アクチュエータを3本車体下部に接続した、合計7軸のシステムで再現していました。しかしながらこのようなシステムでは、車体に対して垂直方向、ピッチ(前後傾)、ロール(左右傾)は再現できましたが、ターン時などの車体の“ねじれ”を再現できず、屋内でのサスペンション設定・調整能力に限界がありました。
今回Moog FCSが開発した8軸システムでは、4本の空圧アクチュエータを車体下部に接続することで、ダウンフォースから発生する車体の"ねじれ”を忠実に再現できるようになりました。これで、屋内でより正確なサスペンション設定・調整が可能となり、少ない実走行時間内で高速走行中の旋回性能を向上させることができます。
また、従来の7軸システムでは、ダウンフォースによる入力と路面入力を分離することや、車体に接続した油圧アクチュエータの反応を緩和させるなど、複雑な制御システムを必要とし、その調整やシステムエラーの対応などに、多くの時間や処理能力を費やしていました。Moog FCSの8軸システムでは、ダウンフォースを再現するために空圧アクチュエータを採用することで、路面入力とダウンフォースによる入力が本質的に独立しており、制御しやすいシステムを実現しています。
これにより、エラーが少なくなり、テストの開発期間が短縮されます。
Moog FCSのシステムは、メカニズムがシンプルでエネルギー効率が高いという特長も備えています。空気圧は、標準的な産業用コンプレッサーとタンクユニットによって発生させています。これによってシステムのコストと消費電力は、同等性能のサーボ油圧システムと比べて、低く抑えられています。例えば、7,257kgのダウンフォースを得るには、わずか37.3kWの動力しか必要ではありません。
このシステムの最初の実機は、米国バージニア州ダンヴィルのバージニア・インターナショナル・レースウェイに併設されているVIPER(Virginia Institute for Performance Engineering and Research)に対して、5月に納入されました。日本ムーグは、国内でこの8軸システムを提供するとともに、既存の7軸システムの改造も引き受けます。
画像:8軸試験システムとレーシングカー
※ 関連資料参照
(※添付資料あり)