岡山大学大学院環境学研究科など、シロアリの卵認識フェロモンの同定に成功
シロアリの卵認識フェロモンの同定に成功
―卵運搬本能を利用した画期的なシロアリ駆除技術も可能に―
【要約】
松浦健二(岡山大学大学院環境学研究科)らのグループは、シロアリの社会行動を強力にコントロールできるフェロモンとして特に注目されてきた卵認識フェロモン(TERP)(注)の同定に挑戦し、卵認識フェロモンが細菌の細胞壁を分解するタンパク質のリゾチーム(工業的には卵白から作られる)であることを世界で初めて明らかにしました。また、卵が女王の卵巣内にある段階でリゾチーム遺伝子が発現し、リゾチームが生産されていることも分かりました。
この成果は昆虫フェロモンの進化プロセスを解明する上でもきわめて重要な意味を持ちます。このフェロモンは強力に卵運搬行動を誘発するため、リゾチームを塗布したガラスビーズ製の擬似卵をシロアリの巣の生殖中枢に運搬させることが可能であり、この疑似卵に殺虫剤を塗布したものを使用することで効果的にシロアリを駆除できる新技術を開発することにより、住宅用としての木材の利用範囲が広がり、木材生産の増加が期待されます。
本研究は、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センターの実施する「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」(プログラムディレクター:門馬信二理事)の委託研究課題「シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発」(平成16~20年度)で行われたものです。
本研究成果の詳細は、8月29日付けで米国の科学雑誌「PLoS ONE」(オンライン: http://www.plosone.org/doi/pone.0000813 )に掲載されます。
【注:シロアリの行動様式と卵認識フェロモン】
シロアリの働きアリは女王の産んだ卵を認識し、それを育室に運搬して山積みにし、毎日表面を舐めて世話をしています。この卵保護行動により卵は乾燥と病気の感染から守られています。シロアリは卵の形状とサイズ、および卵表面の化学物質により卵を認識しており、この卵運搬・保護行動を誘発する化学情報物質を卵認識フェロモン(Termite Egg Recognition Pheromone, TERP)と呼んでいます。
【論文題目】
The antibacterial protein lysozyme identified as the termite egg recognition pheromone
PLoS ONE(8月29日付け)
「シロアリの卵認識フェロモンとして抗菌タンパク質リゾチームを特定」
※以下、詳細は添付資料をご参照下さい。