神戸製鋼、鋼板・コンクリート合成床版の施工性を向上する「高張力ボルト」を開発
鋼板・コンクリート合成床版の上面からのみの施工を可能とした
高張力ボルトの開発と採用拡大について
~ 高所作業時の足場の省略により、施工性の向上とコスト削減に寄与 ~
当社と神鋼ボルト(株)、大阪大学大学院名誉教授・大阪工業大学教授 松井繁之氏の3者は、橋梁用床版の一種である鋼板・コンクリート合成床版の施工性向上に寄与する高張力ボルトを、2003年に開発しました。鋼製型枠の上面からのみの作業で施工が可能となり、下面からの作業を行うのに必要だった足場が不要となります。施工性の向上とコスト削減に寄与することから、徐々に採用が拡大しています。
本ボルトの製作および販売は神鋼ボルトが行っています。同社では橋梁以外の用途への展開を含め、更なる採用の拡大により2010年度に数億円の売上を目指しています。
橋梁用床版は、木製型枠を使用する鉄筋コンクリート製が一般的です。
近年、耐久性や施工性の観点から、鋼板・コンクリート合成床版の採用が増えています。鉄筋コンクリート製に比べ、鋼板・コンクリート合成床版は、橋梁としての強度を確保する構造部材を、コンクリート打設時の型枠と兼用することで、木製型枠そのものや型枠の設置・取り外しの作業、更には取り外しの際などに必要とされてきた足場を不要とする可能性を有しています。しかし、実際には、木製型枠が不要となり設置・取り外しの作業はなくなるものの、型枠を兼用する鋼製型枠同士をボルトによって接合する作業が新たに発生し、型枠の下からボルトを挿入したり、またボルト接合後に下面の塗装作業が必要であることなどから、施工時に足場を省略できない状況にありました。
そこで、鋼製型枠の上面からのみの作業を可能とするために、両ネジのボルトに落下防止のための節を取り付けた「節付き両ネジ高力ボルト」とその施工法を3者で開発しました。下面のナットの締め付けと塗装を事前に行い、現場では、上面から添接板のはめ込みとナットの締め付けだけで施工が完了します。
本ボルトを用いた合成床版の施工手順は、概略以下の通りです。
(1)鋼製型枠が橋梁の主桁上に架設される前(鋼製型枠を製作する工場や工場から現場に持ち込まれた時など)に、両ネジのボルトを鋼製型枠の上面より挿入し、予め下面でナットを締め込む。(トルク[締め付け力]管理が必要。)
(2)その後、鋼製型枠の下面・ボルト部分に塗装を施す。
(3)本ボルトがセットされ、塗装が完了した鋼製型枠を橋梁の主桁上に設置する。
(4)部材同士を接合するための添接板を配置し、その上からナットを締め込む。
(5)接合後、従来の施工法と同じく、コンクリートを打設する。
2006年には、松井教授を委員長とした『片面施工用高力ボルトの施工性向上に関する研究会』を設立し、当社と神鋼ボルト、松井教授の在職される大阪工業大学など合計8者で、施工性向上とその施工指針作成、試験施工を視野に入れて活動しています。
既に、東日本高速道路(株)上信越自動車道北千曲川橋工事で、宮地鐵工所殿に最初にご採用(別紙写真、ご参照。)頂き、以降中日本高速道路(株)新東名高速道路三ヶ日ジャンクションなどで、合成床版の施工合理化に貢献しています。橋梁以外の用途への展開を含め、更なる採用の拡大を目指します。