昭和電工、りん光発光材料使用の有機EL素子が世界最高水準の外部量子効率を達成
高性能大型 面発光 有機ELパネルを実現へ
-広告媒体・表示装置等用途開発を推進-
昭和電工株式会社(社長:高橋 恭平)は、開発中の当社独自のりん光発光材料を使用した単層型高分子有機EL素子について、緑色で17%、青色で16%と世界最高水準の外部量子効率(*1)を達成いたしました。耐久性については35万時間(初期輝度100cd/m2)まで到達しており、今後、実用化に向けての本格的なマーケティング活動を開始いたします。また、当社は、本素子を使用した大型面発光パネルの開発を進めており、2007年央までに本パネルの量産試作ラインを設置する予定です。有機ELパネルは将来ディスプレーや照明などへの利用が期待されており、今後、当社は実用化に向けさらなる高性能化を推進してまいります。
有機ELの発光方式には蛍光とりん光(*2)の2種類があり、他社において開発が先行している蛍光発光有機ELは既に携帯電話のディスプレーなどに使用されております。りん光は理論上蛍光の4倍の発光効率を得ることが可能ですが、蛍光に比べ耐久性の点で問題が残されており開発が遅れております。現在、当社が開発を進めている有機ELパネルには、りん光発光性を持つ発光体をその他の材料と共重合体化(*3)した当社独自のユニークな高分子材料を用いております。また、発光素子は高分子の特長を最大限に活かしてシンプルな単層構造となっていますが、現時点で最高レベルの発光効率を達成しております。
低分子有機ELの場合は真空状態での製造条件が必要ですが、高分子有機ELではその必要がなく相対的に低コストでの生産が見込まれております。これまで発光効率や寿命などで期待される性能が得られず実用化は進んでいませんでしたが、今回、当社独自のりん光発光材料とクリーン化技術などの電極界面制御技術(*4)により、単層構造の高分子において安定的に高性能を発揮する有機ELパネルの生産を可能といたしました。今後、開発をさらに加速し、2008年中の上市を目指します。
現在、有機ELの用途開発は携帯電話や大型TV等の高精細ディスプレーを中心に取り組まれておりますが、当社の有機ELパネルは当社独自のりん光発光材料による高発光効率と長寿命、また、大型面発光という特長を活かし、広告媒体や各種表示装置等向けを中心に用途開発を進めてまいります。今後、さらに性能の向上を進めていくことにより、当社は2010年に本製品の売り上げを100億円にまで拡大することを目指します。
当社は、現在推進中の連結中期経営計画「プロジェクト・パッション」において、成長ドライバーであるハードディスクや半導体プロセス材料、育成事業である超高輝度LEDやカーボンナノファイバーなどに続く、将来の当社を牽引する新製品の研究開発を進めております。ディスプレー・照明モジュール市場などの6分野を戦略的市場単位(SMU=Strategic Market Unit)と定めて集中的に経営資源を投入することにより、新規事業開発をさらに加速してまいります。
【注記】
*1 外部量子効率:
投入したエネルギーが最終的に光として外部に取り出される効率。理論上、りん光発光の外部量子効率の限界値は20%。
*2 蛍光とりん光:
有機ELの発光方式。りん光発光は従来の蛍光発光に比較して約4分の1の低消費電力化が可能。
*3 共重合体化:
りん光発光性を持つ高分子材料とその他の材料が重合した高分子。
*4 電極界面制御技術:
有機ELは100nm以下の有機薄膜を電極で挟んだ構造をしており、電極表面の清浄度や仕事関数が素子の特性に大きく影響を与える。