理化学研究所と統計数理研究所、次世代スーパーコンピューターのアプリケーション開発で連携
理化学研究所と統計数理研究所が基本協定締結
- 次世代スーパーコンピュータのアプリケーション開発で初の協定締結 -
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長、以下「理研」)次世代計算科学研究開発プログラム(茅幸二プログラムディレクター、以下「開発プログラム」)と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構統計数理研究所(北川源四郎所長、以下「統数研」)は、次世代スーパーコンピュータにおけるアプリケーションソフトウェアの開発に向け、連携・協力に関する基本協定を平成19年2月19日に締結しました。
理研は、文部科学省の「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトにおける「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」の研究開発拠点として平成18年8月18日に選定され、平成18年10月1日より和光研究所に開発プログラムを設置し、本ソフトウェアの研究開発に取り組んでいます。統数研は、統計数理に関する我が国唯一の独立した研究所であり、モデリングや推論アルゴリズム※1等の研究及び統計ソフトウェアの開発を行っています。
現在、理研が開発に取り組んでいる次世代スーパーコンピュータは、世界最先端・最高性能のシステムを目指しています。そこで実行する生命体統合シミュレーションをはじめとするアプリケーションソフトウェアは膨大なデータを利用することが予想されるため、その利用を前提とした大規模なシミュレーションやデータ解析が求められます。それを実現するためには、データを取り込みながらシミュレーションを行なうデータ同化技法等※2の数理科学的手法を取り込むことが欠かせません。そのためには、今後両機関が連携・協力するのが効果的であるとの結論に至り、基本協定を締結することとなりました。
○協力内容
次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発における先端的な数理解析方法を研究するため、人材交流、人材養成、共同研究等を実施。
○協定期間
平成19年2月19日から平成23年3月31日
理研が次世代スーパーコンピュータに関して協定を結ぶのは、独立行政法人海洋研究開発機構、国立大学法人筑波大学、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所との締結に続いて4件目となり、アプリケーション開発分野に関する協定締結は今回が初めてとなります。
1.基本協定締結へ至った経緯
理研は、文部科学省「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトの開発主体となり、野依理事長を本部長とする「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を平成18年1月1日に設置し、本プロジェクトに取り組んでいます。また、茅幸二和光研究所長をプログラムディレクターとする「次世代計算科学研究開発プログラム」を18年10月1日に設置し、次世代スーパーコンピュータの利用に向けたライフサイエンス分野におけるソフトウェアの研究開発(「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」)にも取り組んでいます。
一方、統数研は、統計数理に関する我が国唯一の独立した研究所であり、モデリングや推論アルゴリズム等の研究及び統計ソフトウェアの開発を行っています。
次世代スーパーコンピュータは、世界最先端・最高性能のシステムを目指しています。そこで実行するアプリケーションソフトウェアは膨大なデータを利用することが予想されるため、その利用を前提とした大規模なシミュレーションやデータ解析が求められます。
近年、例えば生命科学において、計測技術の向上により多くの情報を一度に取得・デジタル化できるようになった一方で、計測サンプルには数理的な扱いが困難な大規模データが増加しつつありますが、こうしたデータに対処するためには、最先端の数理科学の研究・開発が必要となります。
統数研ではこのような問題に対して現在多面的かつ戦略的に取り組むとともに、多種多様なデータに対して従来以上に精密な非線形・高次元のモデリングを可能にしつつあります。このような高度なモデリングに基づく情報統合によって、データを取り込みながらシミュレーションを行なうデータ同化技法※2が近年注目されています。データ同化はシミュレーションとデータ解析の融合であり、今後シミュレーション科学の分野で重要性を増すと考えられています。
生命体統合シミュレーションをはじめとするアプリケーションソフトウェアの開発を行うには、数理科学的手法を取り込んで開発を行う必要があります。そのためには両機関が連携・協力するのが効果的であり、「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」の推進に極めて有効であることから今回の基本協定締結に至りました。
2.基本協定の範囲
(1)人材交流
(2)人材養成
(3)共同研究等の研究協力
(4)産業界及び他機関との連携・協力
(5)その他本協定の目的を達成するために必要な協力
3.「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト
「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトの概要
「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトは、理論、実験と並び、現代の科学技術の方法として確固たる地位を築きつつ計算科学技術をさらに発展させるため、長期的な国家戦略を持って取り組むべき重要技術(国家基幹技術)である「次世代スーパーコンピュータ」を平成24年の完成を目指して、理研が開発主体となって取り組んでいます。
また、「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトは、次世代スーパーコンピュータを最大限利活用することで、生命現象の理解の深化、新たな薬剤開発につながる計算科学技術手法の確立等、ライフサイエンス分野における計算科学技術を駆使した新技術の適用などに筋道をつけ、今後のわが国におけるライフサイエンス分野の科学技術の進展に貢献するためのアプリケーションソフトウェアの研究開発に向け、理研が研究拠点となって取り組んでいます。
<補足説明>
※1 推論アルゴリズム
ベイズ推論、帰納的推論、因果推論などのデータにもとづく推論を実現するための、モンテカルロアルゴリズム、大規模数値計算アルゴリズム、最適化アルゴリズム、正則化法、カーネル法、機械学習アルゴリズムなどの総称。近年、大規模データからの知識獲得技術として重要になっている。
※2 データ同化技法
シミュレーションなどの数値モデルによる対象状態の時間発展更新と、計測装置からの部分的な観測量に基づく状態補正の二つを適切に組み合わせる計算技術の総称。近年、気象や海洋などの地球規模の複雑な現象の高精度予測のために必須となりつつある技術。(参考: http://daweb.ism.ac.jp/ )