富士フイルム、次世代材料「ハニカムフィルム」の製造技術を開発・試験販売
メディカル・ライフサイエンス分野における有用な次世代材料
ハニカムフィルムの製造技術を開発、試験販売を開始
再生医療の基幹材料としての応用を検討
富士フイルム株式会社(社長:古森 重隆)は、メディカル・ライフサイエンス分野を中心に次世代材料として期待されている、表面に微細な孔が規則的に配列したハチの巣様の構造を持つ薄膜「ハニカムフィルム」の製造技術を開発し、本年4月よりサンプル提供を目的として試験販売を開始いたします。
ハニカムフィルムは、北海道大学の下村政嗣教授の研究グループが開発したもので、富士フイルムは産学連携の一環として本技術の研究に参加※1しました。当社の強みである写真フィルムやフラットパネルディスプレイ材料などの開発・製造で培った製膜技術を生かし、製造条件を緻密にコントロールすることで膜材料の自己組織化※2を制御しハニカムフィルムの特殊な表面構造※3を単一工程で形成する高度な製造技術を独自に開発いたしました。これにより、これまで5cm角程度の小さな面積でしか作製できなかったハニカムフィルムを、最大A4サイズで安定的に提供することが可能となりました。
今回開発した製造技術は、フィルム表面の細孔径を3~10μmの範囲で任意に制御することができ、フィルムの素材についても、汎用的に用いられるポリスチレンなどの樹脂から、メディカル・ライフサイエンス分野で注目されているポリ乳酸などの生分解性材料まで幅広く対応いたします。また、細孔の形状についても、フィルムの縦/横方向の貫通・非貫通制御を行うことができるため、今後、応用を検討するあらたな用途に応じて調整・最適化することが可能です。
ハニカムフィルムは、その特殊な表面構造を生かしてフィルム面に毛細管力を発生することにより、高い吸着性を実現すること、柔軟で曲面での使用にも適した薄膜であることなどの特徴から手術の際に使用される「癒着防止フィルム」としての実用化に向けた開発が進められています。さらに、あらたなアプリケーションとして再生医療に欠かせない、生体細胞を安全に増殖させるための基材としての応用が検討されています。フィルム表面の孔径を変えることで神経幹細胞の分化を制御することが可能であるため、従来手法と異なり、細胞増殖をコントロールするために動物由来のタンパク質などを添加する必要のないことが確認されています。このため、BSEなどの動物由来特有の感染症の懸念を低減させ、再生医療の安全性向上につながることが期待されます。
富士フイルムは、ライフサイエンス・メディカル分野の用途開発を中心にハニカムフィルムの試験販売を行い、3次元規則性構造を有する機能性フィルムの高付加価値用途での事業化を目指します。
なお、本技術内容を2月21日~23日に催される、「ナノバイオExpo 2007」(東京ビッグサイト)において、財団法人北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)が出展するブース内で紹介いたします。
※1 経済産業省の平成16-17年度地域新生コンソーシアム事業に採択され、財団法人北海道科学技術総合振興センターを管理法人として、北海道大学、帝人株式会社などとともに参画。
※2 生物のように他からの制御なしに自分自身で組織や構造を作り出すことをいう。自発的秩序形成とも言う。
※3 フィルム表面に規則的に配列される細孔の形状(細孔径の大きさ、フィルムの厚み方向での細孔の貫通・非貫通、細孔同士の横方向の連結・非連結など)を制御できます。例えば、横貫通孔構造の場合、栄養素や排泄物の循環の良好な細胞培養が可能になります。
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