帝国データバンク、2月の全国企業倒産集計を発表
●2007年2月報
倒産件数は818件、5ヵ月連続の前年同月比増加
負債総額は2805億9700万円、2005年4月以降で最低
・倒産件数 818件
前月比 2.9%減
前 月 842件
前年同月比 5.3%増
前年同月 777件
・負債総額 2805億9700万円
前月比 48.7%減
前 月 5467億9900万円
前年同月比 13.7%減
前年同月 3252億8300万円
【 ポイント 】
倒産件数は818件、前月(842件)を24件下回ったものの、前年同月(777件)を41件上回り、5ヵ月連続の前年同月比増加、3ヵ月連続して800件台の高水準となった。
負債総額は2805億9700万円で、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最低となり、これまで最低だった2006年2月(3252億8300万円)を下回った。
業種別では、小売業の倒産が増加傾向にあり、個人消費の回復遅れなどから内需関連業界の倒産が高水準で推移。全体の倒産件数も、緩やかな増加基調が継続している。
■件 数
倒産件数は818件、前月(842件)を24件下回ったものの、前年同月(777件)を41件上回り、3ヵ月連続して800件台の高水準となった。
前月比は2.9%減少したものの、前年同月比で5.3%の増加となり、5ヵ月連続の前年同月比増加となった。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながらも、確実にベースラインが上昇してきており、緩やかな増加基調が継続している。
■負債総額
負債総額は2805億9700万円で、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最低となり、これまで最低だった2006年2月(3252億8300万円)を446億8600万円下回った。
前月比は48.7%の減少、前年同月比も13.7%の減少で、ともに3ヵ月ぶりの減少となった。
負債100億円以上の倒産も3件にとどまるなど、大型倒産は沈静化傾向が続いている。
■業種別
小売業が高水準で推移
業種別に見ると、「その他」を除く7業種中、製造業(115件、前年同月比+9.5%)、卸売業(132件、同+10.9%)、小売業(161件、同+16.7%)、サービス業(131件、同+11.0%)の4業種で、前年同月比増加となった。
特に、小売業は個人消費の回復遅れなどから倒産が増加し、前月比2.5%の増加、前年同月比も16.7%の大幅増加となった。また、建設業は215件発生し、前月(235件)を20件、前年同月(226件)を11件それぞれ下回ったものの、依然として高水準で推移している。
構成比で見ると、上位は建設業(26.3%)、小売業(19.7%)、卸売業(16.1%)の順。
■主因別
「不況型倒産」が624件発生
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は624件(前月653件、前年同月556件)となり、前月を4.4%(29件)下回ったが、前年同月を12.2%(68件)上回った。
なかでも、販売不振は589件(前月599件、前年同月517件)となり、前月を1.7%(10件)下回ったものの、前年同月を13.9%(72件)上回るなど、高水準が続いている。
「不況型倒産」構成比は76.3%(前月77.6%、前年同月71.6%)で、前月比は1.3ポイントの減少となったが、前年同月比は4.7ポイントの増加となった。
倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債1億円未満が増加傾向
負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は331件(前月364件、前年同月276件)発生し、前月を33件(前月比△9.1%)下回ったが、前年同月を55件(前年同月比+19.9%)上回った。
負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は471件(構成比57.6%、前年同月比+14.9%)で、増加傾向にあり、全体の約6割を占めている。
一方、負債50億円以上100億円未満の倒産は3件(前月5件、前年同月11件)、同100億円以上の倒産も3件(同7件、同4件)にとどまり、前月、前年同月をそれぞれ下回った。
資本金別に見ると、個人経営(152件、前月比+17.8%、前年同月比+81.0%)の倒産が高水準で推移している。
■態様別
破産は749件、構成比91.6%
態様別に見ると、破産は749件(前月755件、前年同月700件)で、前月比は0.8%(6件)の減少となったものの、前年同月比は7.0%(49件)の増加となった。構成比は91.6%で、2ヵ月ぶりの90%台となった。
特別清算は22件(前月38件、前年同月29件)で、前月比は42.1%(16件)の減少、前年同月比も24.1%(7件)の減少となった。構成比は2.7%で、前月(4.5%)、前年同月(3.7%)をそれぞれ下回っている。
民事再生法は47件(前月49件、前年同月48件)で、前月比は4.1%(2件)の減少、前年同月比も2.1%(1件)の減少となった。構成比は5.7%で、前月(5.8%)、前年同月(6.2%)をそれぞれ下回っている。
■地域別
近畿の高水準続く
地域別に見ると、9地域中、近畿(239件、前年同月比+27.1%)、九州(65件、同+1.6%)、東北(54件、同+8.0%)、中国(36件、同+2.9%)など5地域で前年同月を上回った。
特に、近畿は、前月(218件)を21件、前年同月(188件)を51件それぞれ上回っている。近畿は、個人経営を中心とする中小・零細企業の倒産が増加傾向にあり、高水準が続いている。
一方、関東(281件、前年同月比△4.4%)、中部(74件、同△9.8%)、北海道(24件、同△17.2%)、四国(15件、同△25.0%)の4地域は、前年同月をそれぞれ下回った。
【 今後の問題点 】
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2007年2月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月(44.8)比0.1ポイント増の44.9となった。2006年8月以来6ヵ月ぶりの改善で、ようやく悪化に歯止めがかかる形となったが、2005年8月以来17ヵ月(1年5ヵ月)ぶりに45を割る水準まで落ち込んだ前月からの改善幅は小幅にとどまっており、依然として足元経済は弱含んでいることが裏付けられた。
■2006年10~12月期の国内総生産(GDP、速報値)が実質ベースで年率4.8%増と順調な国内経済の拡大が裏付けられ、一部の業界や大都市圏では景況感に改善がみられたものの、暖冬の影響が尾をひく小売業界など内需関連業界を中心に、景況感を押し上げるまでには至らなかった。また、2月21日に日銀が政策金利の0.25%引き上げを実施したことに伴い、景気回復遅れが顕著な地方圏で景況感が大きく後退したことも、改善幅を縮小させる要因となった。
■各種経済統計では景気回復の持続が示されているとはいえ、景気DIではこのところ業界間、規模間、地域間での格差が一層拡大する様相を呈している。これは、今回の景気回復の恩恵を享受しているのは大都市圏における一部の業界大手企業に限られ、地方圏や中小・零細の内需関連企業はいまだ景気回復を実感できない状況下にあることを浮き彫りにしている。
■こうしたなか、2007年2月の法的整理による倒産は818件となり、前月(842件)を2.9%下回ったものの、前年同月(777件)比では5.3%増と5ヵ月連続して増加し、3ヵ月連続して800件台の高水準となった。一方、負債総額は大型倒産が引き続き沈静化したことで、2805億9700万円と前月(5467億9900万円)比48.7%減、前年同月(3252億8300万円)比13.7%減とともに2ケタの大幅減となり、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最低だった2006年2月(3252億8300万円)を下回った。規模別に見ると、負債100億円以上の倒産は3件にとどまり、大型倒産の沈静化傾向が継続している半面、負債1億円未満の倒産は471件と前年同月比14.9%増加し、全体の約6割を占めるなど増加に歯止めがかからない。業種別では小売業が同16.7%の大幅増加で構成比が全体の2割に迫っているうえ、地域別では地方圏の倒産が目立ち始めている。いざなぎ景気を超える景気回復期間となるなかでも「不況型倒産」の割合が依然として7割を大きく上回っているのは、景気回復が遅れる地方の中小・零細企業や内需関連企業が業績不振で力尽きていることに起因しており、「倒産件数増、負債総額減」という現象も倒産の二極化構造の深化によるものといえる。
■国内経済は、長期的な世界経済の拡大とともに成長が持続するといわれている。しかし、2月末に中国・上海株式市場の波乱を発端として世界的に株価が急落、今後の株価動向によっては世界経済の先行きに不透明感が増幅する可能性が高い。国内においても、個人消費の回復遅れが顕著で暖冬の影響も広がりをみせつつあるなか、利上げによる影響が過剰債務にあえぐ地方圏、中小・零細企業などへ波及していくことは避けられない。業界、規模、地域間での業況格差の拡大とともに、地方圏の中小小売・サービス業者や地場建設会社、下請け業者を中心に倒産は続発する公算が大きい。
■加えて、地銀・第二地銀の再編や信金・信組への金融庁検査を引き金とした融資打ち切り、セーフティネットの役割を担ってきた中小企業向け公的信用保証制度の縮小、貸金業法の改正によるノンバンクなどからの融資引き揚げ圧力など、今回の利上げ以外にも今後、資金繰り面で中小・零細企業の倒産リスクが高まってくる。3月の年度末を控えた監査の厳格化により、IT・新興ベンチャー企業の倒産も続発することが予想され、しばらく倒産件数は緩やかな増加基調が継続するものと思われる。