フジッコ、カスピ海ヨーグルトのアトピー性皮膚炎に対する改善効果を確認
カスピ海ヨーグルトの
アトピー性皮膚炎に対する作用
アトピー性皮膚炎に対する改善効果を動物実験により確認
-日本薬学会第127回大会で発表-
カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方に伝わる伝統的な食品のひとつに独特の粘りが特徴的な牛乳発酵物があります。この発酵食品は京都大学名誉教授の家森幸男先生がWHO(世界保健機構)の協力のもとに行った食と健康に関する世界的な調査において最も注目された長寿食のひとつで,日本では「カスピ海ヨーグルト」として知られています。
当社では,これまでに家森先生の指導のもと,この粘りのある牛乳発酵物を作る乳酸菌Lactococcus lactis subsp. cremoris FC株(ラクトコッカスラクティスサブスピーシズクレモリスエフシー株:クレモリスFC株)の分離を行い,家庭で安全に植え継ぐ事ができる種菌の開発やそれを用いた製品開発を行ってきました。また,いろいろな研究機関と協力して,クレモリスFC 株牛乳発酵物の生理作用に関する研究を行い,整腸作用や粘りの成分である粘性多糖の精神的ストレスによる肌障害に対する予防,改善効果を明らかにしてきました。
今回は,静岡県立大学薬学部の石田均司講師と共同で,環境刺激物質による慢性皮膚炎の発症および症状の悪化に対する作用について,アトピー性皮膚炎モデル動物を用いて検討を加えました。その結果,クレモリスFC 株で作った牛乳発酵物を摂取することによって,アトピー症状が緩和され,アトピーに伴う皮膚の炎症と肥厚化,皮膚バリアー能の低下,皮膚水分量の低下が抑えられることが明らかになりました。
一方,クレモリスFC株以外の一般的なヨーグルト製造用の乳酸菌で作った粘性の低い牛乳発酵物には,今回設定した用量においては,このような改善効果が認められませんでした。また,クレモリスFC株の牛乳発酵物を遠心分離して,粘性物質を多く含む上清の乳清部分と菌体成分を含む不溶部分とに分け,両者の効果を比較したところ,上清部分に特に強いアトピー症状改善効果が確認されました。
クレモリスFC株の牛乳発酵物の特徴的な粘りは,クレモリス菌が産生する粘性物質である菌体外多糖に由来しています。一般に,乳酸菌のアレルギー症状に対する改善効果に関わる免疫調節活性については,菌体成分が重要であると考えられていますが,今回の結果からクレモリスFC 株が産生する菌体外多糖も有益な役割を果たす可能性が高いと考えられます。
さらに,クレモリスFC株の牛乳発酵物は,化学的な刺激物質とは異なる精神的なストレスによる肌機能の低下に対しても抑制作用を持つことが,すでに石田講師との共同研究で明らかにされていることから,クレモリスFC株で作られた「ねばりの強いカスピ海ヨーグルト」を食べるとストレス肌やアトピー性皮膚炎の他,様々な要因によって発症,悪化する肌障害の予防や改善に役立つことが期待されます。
この研究成果は,3月30日に日本薬学会第127回大会(会期:2007年3月28日(水)~3月30日(金),会場:富山市総合体育館)において発表いたします。