飛島建設、輝度計測式「ドライミクストコンクリート含水量測定システム」を開発
輝度計測式「ドライミクストコンクリート含水量測定システム」を実用化
― 乾式吹付けコンクリート工法の課題である品質変動を低減する手法を開発 ―
飛島建設(株)(社長・池原年昭)は、芝浦工業大学矢島教授との共同研究により、トンネル工事等における乾式吹付けコンクリート工法の課題のひとつである品質変動の改善を目的として、「ドライミクストコンクリート含水量測定システム」を開発、実施工に初適用し有用性を確認しました。
従来、乾式吹付け工法では、作業中に吹付けているコンクリートの付着、はね返りや粉じん状況を見ながら吹付け作業員の経験によりノズル近傍で添加する水量を調整していましたが、当技術は、吹付け作業付近で連続的にドライミクストコンクリートの含水量測定を行い、瞬時にノズル近傍で添加すべき最適水量をモニターに表示し、モニターの数値に基づき水量を調整することで品質変動の低減を行うものです。
【背景】
山岳トンネル工事において、1960年代にNATMとともに吹付けコンクリート工法が導入されました。導入当初10年程度は乾式吹付け工法が主流でしたが、現在では、以下の課題等により90%以上が湿式吹付け工法となっています。
(1)吹付け作業員がドライミクストコンクリートの状況や吹付けたコンクリートの状態により、経験に基づいてノズル近傍で添加する水量調整を行うことから、吹付け作業員の能力による品質変動が大きい。
(2)湿式吹付け工法と比較して量的施工能力が劣る。(大断面では湿式吹付け工法が有利)
(3)粉じん、はね返りが多い。
乾式吹付け工法は、前述の短所を有する反面、以下の利点もあります。
(1)初期強度の発現が良好である。
(2)長距離圧送が可能である。
(3)湿式吹付け工法と比較して、練置き時間が2時間程度と倍近い。
(4)機械・ホースの清掃が容易であり洗浄水を必要としない。
現在、中小断面・長距離掘削トンネルが増え、乾式吹付け工法が有用になっており、前述の課題解決に取り組んできました。粉じんやはね返りは水添加方法の改善、粉じん低減剤、液体急結剤の使用などにより改善が進んでいます。今回開発した技術は、残された課題である吹付け作業員の技量に起因する品質変動の改善が狙いです。
【輝度計式「ドライミクストコンクリートの含水量測定システム」の原理】
芝浦工業大学矢島教授の「コンクリート用細骨材の含水量測定方法およびその装置」(特開2002-14039)をベースに乾式吹付けの材料であるドライミクストコンクリート中の含水量を測定する方法に適用範囲を広げました。
一般に粉体の物質は,粒子自体の色や形状により明るさが異なります。図-1(※関連資料参照)に示すように、通常,粉体表面に光が当たると拡散反射が起こり、粉体に水を加えると,一部の粒子表面の水分で全反射して拡散反射の量が減少します。更に水分量が増加すると入射光が水分との界面で鏡面反射を起こし,これらの現象によって輝度の低下が生じると考えられています。
ドライミクストコンクリートにおいて、骨材の含水量が多くなるほど、濡れ色が顕著になり、この色の変化を含水量の差異と捉え、市販されている輝度計を用いて測定し、解析するシステムを考案しました。
輝度計は主に、ゴム樹脂、金属関係の反射シートや、建設関連の道路、トンネルの路面輝度、トンネル内の明るさ等の輝度測定に用いられているものです。
【実施工への適用例】
・工事件名 : 東海北陸自動車道 飛騨トンネル避難坑その4工事
・発注者 : 中日本高速道路株式会社
・施工者 : 飛島・鉄建JV
・工期 : 平成17年10月12日~平成19年10月1日
・吹付けコンクリート施工数 :
白川側(乾式)7,200m3 河合側(湿式)5,200m3 合計12,400m3
飛騨トンネルは全長10.7kmの国内有数の長大トンネルであり、輸送距離が長いことから湿式吹付け工法ではフレッシュコンクリートの品質変化が懸念されたことや、吹付けシステムの洗浄、残コン処理(ホッパ、配管内)が容易などの理由から、乾式吹付けコンクリート工法を選定致しました。
粉じん、はね返りについては飛島建設(株)の保有技術のスラリーショットシステムにより、はね返り量や構内環境の改善が可能となりました。
【図-2 測定システムの概要図】
※ 関連資料参照
ドライミクストコンクリート供給のベルトコンベア上に、測定ポイントを設け、輝度計、照明(LED)を設置し、測定したデータをパソコンで解析して、ベルトコンベア上のドライミクストコンクリートの含水量および添加すべき水量を表示しております。
【結果・成果】
表面水率の実測値と輝度計による測定値とがほぼ一致した結果が得られております。
【現場写真】
※ 関連資料参照