ユニチカ、β-クリプトキサンチンに運動疲労の低減作用など広島大学との研究成果を発表
β-クリプトキサンチン含有酵素処理うんしゅうみかんの新規機能性の発見
ユニチカ(株)中央研究所(京都府宇治市)は、広島大学大学院保健学研究科 松川寛二教授との共同研究により、β-クリプトキサンチンに運動による疲労の低減作用があること、またその作用は一酸化窒素(NO)依存性血管拡張作用によるものであることがラットのトレッドミルによる強制運動試験により明らかになりました。さらに人(ボランティア)による自転車エルゴメーターを用いた運動試験においても、β-クリプトキサンチン含有酵素処理うんしゅうみかん摂取により、運動後の乳酸値上昇抑制と心拍数の早期回復、逸脱酵素の増加抑制、自覚的運動強度指数からも運動時抗疲労効果が確認されました。激しい運動をするアスリートなどに最適な抗疲労素材としての利用が期待できます。
(この結果を第61回日本栄養・食糧学会で発表致しました。)
さらに磯子中央・脳神経外科病院土田隆副院長との共同研究において、閉経後の女性を対象にしたβ-クリプトキサンチン含有酵素処理うんしゅうみかん摂取による試験の結果、骨代謝の改善作用があることが確認されました。骨は毎日、形成と吸収(溶解)による骨代謝を繰り返しており、女性は閉経に伴う女性ホルモンの減少により吸収作用が過剰となり、骨密度が急激に減少することが知られています。β-クリプトキサンチンを摂取すると骨が形成される際のマーカーである骨型アルカリフォスファターゼの上昇と、骨が吸収される際のマーカーであるデオキシピリジノリンの抑制作用が観察され、閉経後の女性において骨代謝の改善効果があることが確認されました。高齢化を迎えた社会でのアンチエイジング素材としての利用が期待できます。
(この結果を日本食品科学工学会第54回大会で発表予定です。)
【 実験方法および結果 】
[I]運動時抗疲労作用
β-クリプトキサンチンの運動時抗疲労作用を、自転車エルゴメーターを用いた運動試験により検証しました。
被験者をβ-クリプトキサンチン摂取群(毎日酵素処理うんしゅうみかん200mg摂取:男性6名)とプラセボ群(男性6名)に分け、摂取前、5週間後、9週間後に最大心拍数の80%の心拍数を維持しながら30分間、自転車エルゴメーター運動を実施して、両群の疲労度を比較しました。
(図中、*はp<0.05,**はp<0.01有意をあらわします)
(1)自覚的運動強度指数
運動直後の疲労度を自覚的運動強度指数(ボルグスケール*)により自己申請し、摂取前からの増減を比較しました。β-クリプトキサンチン摂取群は摂取前と比べて有意に指数が低下しており、実感できる疲労感の改善効果が示されました。一方、プラセボ群にはこのような効果はありませんでした。
*ボルグスケールとは疲労度を6(安静時)~20(もうだめ)の数値で表すもので、それぞれに基準となる表現が付帯しています。運動の強さ(疲労度)を主観的に表現する基準として汎用されています。
●資料1
(※ 関連資料を参照してください。)
(2)運動後心拍数
運動15分、30分、60分後の心拍数を、最大心拍数に対する比率に換算して比較しました。その結果、β-クリプトキサンチンの摂取により、運動により高まった心拍数の安静値への回復が有意に速やかであることがわかりました。一方、プラセボ群ではこのような変化は観察されませんでした。
●資料2
(※ 関連資料を参照してください。)
(3)運動翌日の血清LDH*
運動試験の翌日(「試験前」は運動前)に採血し、血清中の乳酸脱水素酵素(LDH)を測定したところ、β-クリプトキサンチン摂取群では変化が無かったのに対し、プラセボ群では血清LDH量が増加していました。これはβ-クリプトキサンチンの摂取により、運動による筋肉への損傷が緩和されたことを示しています。
*LDHは筋肉細胞の中に存在する酵素で、強い運動などにより筋肉細胞が損傷を受けると血中に漏出して高値を示します。そのため運動後の筋肉負荷(疲労)の状態を示す指標として用いられています。
●資料3
(※ 関連資料を参照してください。)
[II]閉経後女性の骨代謝改善効果
β-クリプトキサンチンの骨粗鬆症改善効果を、閉経後の女性を対象とした摂食試験により検証しました。
被験者をA群(プラセボ群)、B群(毎日酵素処理うんしゅうみかん100mg摂取)、C群(毎日酵素処理うんしゅうみかん400mg摂取)に分け、摂取前、4週間後、12週間後に骨代謝マーカーを測定いたしました。
(図表中、*はp<0.1,**はp<0.05有意をあらわします)
(1)骨型ALP(アルカリフォスファターゼ:骨形成マーカー)の変化
骨型ALPは活発に骨芽細胞が働いて骨を形成する際に血中に遊離してくる酵素です。被験者の骨型ALP値を調べたところ、12週間のβ-クリプトキサンチン摂取により、B群、C群の骨型ALP値は摂取前に比べて有意に増加していました。これは骨の形成が活発になっていることを示します。これに対し、プラセボ群の骨型ALP値に有意な変動は認められませんでした。
●資料4
(※ 関連資料を参照してください。)
(2)尿中DPD(デオキシピリジノリン:骨吸収マーカー)の変化
DPDは骨が吸収(溶解)される際に放出される物質です。試験期間中の被験者の尿中DPDの増減を調べたところ、C群(酵素処理うんしゅうみかん400mg摂取群)では摂取前に比べて4週後、12週後に有意な低下が見られ、骨の吸収が抑制されていることが示されました。
●資料5
(※ 関連資料を参照してください。)
◆「β-クリプトキサンチン」について
β-クリプトキサンチンは、温州みかんに多く含まれるカロテノイドであり、α-カロテン、β-カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、ルテインとともにヒト血液中に存在し重要な役割を果たしています。ユニチカ(株)では、温州みかんを酵素処理することにより、このβ-クリプトキサンチンを濃縮した「酵素処理うんしゅうみかん」を食品素材として販売しております。
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所を中心としたグループの最近の研究では、β-クリプトキサンチンの新しい様々な機能性が明らかとなってきています。活性酸素消去作用、美白作用、発ガン抑制作用、糖尿病予防、リウマチ予防、神経細胞活性化作用などが新しい機能性として注目されています。
これまで日本では、温州みかんを日常的に食すため、諸外国に比べて日本人の血中β-クリプトキサンチン濃度が高いことが報告されていますが、最近では温州みかんの消費量が激減しているため、血液中濃度の低下が懸念されています。
以上
(※ 資料1~5は関連資料を参照してください。)