ライオン、ナノテク成分「銀ナノ粒子」が靴の中の細菌に除菌効果発揮など研究成果を発表
玄関で気になる"不快なニオイ"の一因は靴の中で増殖した「細菌」によって発生する悪臭物質であることを確認!
「銀ナノ粒子※1」が靴の中の細菌に対して除菌効果を発揮
ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)リビングケア研究所は、玄関で気になる"不快なニオイ"の原因を明らかにするための研究を進めた結果、この度、靴の中では身体由来の「細菌」が多量に増殖し、靴の中に付着した垢汚れを分解して悪臭物質を発生させ、これがニオイの原因であることを突き止めました。また、この悪臭物質の中で最も特徴的なのは"足のニオイ"として知られる「イソ吉草酸」であることを確認しました。
さらに、ナノテク成分「銀ナノ粒子」が、靴の中の細菌に対して除菌効果を発揮し、ニオイの原因菌の増殖を抑制することを確認しました。
なお、本研究内容は、『日本防菌防黴学会 第34回年次大会』(2007年8月30日)にて発表する予定です。
※1「銀ナノ粒子」:ナノテクノロジーを応用し、アルミナシリカの表面に酸化銀を付着させたもので、直径が約15ナノメートルの粒子。
1.研究の背景
住宅の気密化に加え主婦の社会進出による不在時間の増加で、住空間にはニオイがこもりやすく、温度や湿度が上昇して細菌やカビが増殖しやすい環境にあります。特に玄関は、トイレやキッチンに次いでニオイが気になる場所としてあげられ、生活者の半数以上がニオイを気にしていることがわかりました(図1)。さらにそのニオイの原因は靴や下駄箱であると考えていることがわかりました(図2)。玄関のニオイに対して生活者は、「芳香剤を使う(43%)」「換気をする(23%)」などの対策を行っているものの、約70%の人が効果に満足していないことがわかりました(当社調べ)。
そこで当社は、"玄関で気になるニオイ"の原因を明らかにするとともに、ニオイ抑制技術の研究を行いました。
<図1>
<図2>
(※ 関連資料を参照してください。)
2.ニオイ発生メカニズム
(1)玄関で気になる"不快なニオイ"の一因は、"足のニオイと同じ悪臭物質"!
まず、玄関の"不快なニオイ"の原因を特定するために、実際の家庭から玄関の空気を採取し、分析することから始めました。6家庭から採取した空気について、ガスクロマトグラフィー分析により臭気物質の特定を行った結果、不快なニオイ物質である数種の低級脂肪酸を検出し、特にイソ吉草酸は6家庭全てで存在を確認しました。イソ吉草酸は、代表的な足のニオイの原因物質でもあり、非常に微量で強い臭気を感じることから、玄関で気になる"不快なニオイ"の特徴的な物質であると推測されます。
(2)靴の中には"汚れた排水口"と同程度の細菌がいることを確認!この細菌の作用により悪臭物質が発生
イソ吉草酸は細菌の作用により発生します。そこで、10名の靴(1ヶ月着用のスニーカー)の中敷について、細菌の数および種類を分析しました。その結果、細菌の数は1cm2あたり最大1000万個存在することを確認しました。これは、キッチンなどの"汚れた排水口"に存在する細菌数と同程度であり、靴の中には多量の菌が存在していることが明らかになりました。次に、菌の種類を分析したところ、ヒト由来などの細菌類が検出され、中でもスタフィロコッカスが多量に検出されました。スタフィロコッカスはヒトの角質老廃物(垢汚れ)に含まれる成分(ロイシン)を分解するとイソ吉草酸を発生させます。これより、玄関にイソ吉草酸が存在するのは、靴に付着した角質老廃物を靴の中に多量に存在するスタフィロコッカスが分解することによると推察されます。
<図3>
<図4>
(※ 関連資料を参照してください。)
3.ニオイ抑制の技術開発
(1)当社独自の「銀ナノ粒子」に、靴のニオイの原因菌を除菌する効果があることを確認
玄関で気になる"不快なニオイ"を抑制する技術開発に取り組みました。ニオイ発生の原因となる靴や玄関マット、スリッパなどは洗えないものも多いことから、「細菌」を除菌することによるニオイ抑制検討を行いました。
当社はこれまでの微生物制御に関する研究から、幅広い細菌類に対して除菌効果を有するナノテク成分「銀ナノ粒子」活用技術を有しています※2。この当社独自の「銀ナノ粒子」に、玄関のニオイの原因菌であるスタフィロコッカスをはじめ、靴から採取した4種類の細菌類、およびカビ(黒カビ、白癬菌)を10万分の1以下まで除菌する効果があることを確認しました。
※2「銀ナノ粒子」の除菌メカニズムは「銀ナノ粒子」の表面に存在する銀イオンが、菌の最外層にある細胞壁や細胞膜のタンパク質に作用し、変性させることで除菌します。当社は「銀ナノ粒子」に、キッチン・浴室・トイレ・布製品の"ヌメリやニオイ"の原因菌を除菌する効果があることを確認し、その技術を応用して『ルックきれいのミスト キッチン用・トイレ用・浴室用・布製品用』を開発しました。
<図5>
(※ 関連資料を参照してください。)
(2)「ラベンダーエキス」にイソ吉草酸の消臭効果が高いことを確認
玄関で気になるニオイの特徴となるイソ吉草酸を消臭する成分の検討を行いました。これまでの当社のニオイ抑制技術の知見から、抑制効果が期待できる各種植物エキスについて検討を行ったところ、「ラベンダーエキス」に高い効果があることを確認しました。
以上の技術を応用して、玄関まわりの"不快なニオイ"の発生を予防する除菌・清潔キープ剤『ルックきれいのミスト 玄関・くつ用』を開発し、2007年8月1日(水)から全国にて新発売いたします(2007年6月26日発表リリース<商07-33号>をご参照下さい)。
なお、この技術に関する特許を6件出願済みです。
【日本防菌防黴学会 第34回年次大会】にて発表予定
◎開催日 2007年8月30日(金)
◎演 題 靴・菌分布の状況
◎発表者 河野博信1)、泉川洋亮1)、山岸弘1)、鈴木右子1)、藤村昌平1)、杉山典久1)、米山雄二1)、李憲俊2)
1)ライオン株式会社 研究開発本部 リビングケア研究所
2)衛生微生物研究センター
以上
(※ 図1~5は関連資料を参照してください。)