松下、追記型Blu-rayディスクに4倍速で記録・再生可能なドライブユニットを開発
追記型2層Blu-rayディスクに4倍速で記録可能なドライブユニットを開発
【要旨】
松下電器産業(株)は、3月にブルーレイディスクアソシエーション[1]で承認された規格「Blu-ray Disc Recordable Format Part 1 Version 1.2」に準拠し、単層25GBおよび2層50GBの追記型Blu-rayディスク(BD-Rディスク)に対し、4倍速で記録および再生ができるBlu-rayディスクドライブユニットを開発しました。当社はディスクとドライブの双方を同時に開発※することにより、ディスクの持つ能力を十分に引き出し、信頼性の高いドライブ技術を確立することができました。
※:2007年7月3日付、当社リリース「パソコンデータ用4倍速追記型Blu-rayディスク2種類を発売」をご参照ください
【効果】
4倍速記録対応のBD-Rディスクを使用すれば、単層25GBのデータを約23分、2層50GBのデータを約46分で記録できます。パソコン用のドライブに展開することにより、パソコンデータのバックアップを短時間で手軽に行うことができます。
【特長】
今回開発したBlu-rayディスクドライブユニットの特長は以下の通りです。
1.広く使用されている130mWの青紫色レーザで、2層BD-Rディスクへ4倍速の高速記録を実現
2.4倍速の2層BD-Rディスクに、信頼性の高い記録を実現
3.2層ディスクからの微弱な信号を4倍速で忠実に再生
【内容】
本開発品は、以下の技術により実現しました。
1.光量を最適化するフィルターを用いて、青紫色レーザの低ノイズパワー領域を有効に活用するレーザ光量調整技術
2.記録条件を自動的に検出および調整し、レーザ波形を最適化するレーザ制御技術
3.歪みを補正しながらノイズを低減して再生する復号化処理技術
【従来例】
現状のBlu-rayディスクドライブは、2層ディスクに対して2倍速記録であるため、50GBのデータを記録するのに90分以上の時間を要しています。現在PCのハードディスクは、より大容量化が加速しており、そのバックアップに対し、さらに高速な記録手段が求められていました。
【実用化】
パソコン用ドライブとして展開を検討中
【特許】
国内:12件 海外:12件(出願中含む)
【特長の詳細説明】
1.広く使用されている130mWの青紫色レーザで2層BD-Rディスクへ4倍速の高速記録を実現
2倍速記録に対し4倍速記録では約1.3倍の高出力なレーザが必要です。しかし本開発品では、レーザの低ノイズパワー領域を有効に活用するレーザ光量調整技術により、2層2倍速記録のBlu-rayディスクドライブで一般に使用されているのと同じ、低出力青紫色レーザ(出力:130mW)での2層4倍速記録を実現しました。
2.4倍速の2層BD-Rディスクに信頼性の高い記録を実現
2層4倍速記録は2層2倍速記録に比べ高速にレーザ光をスイッチングしてディスクに照射するために、高い精度でレーザ波形のパルス幅をコントロールする必要があります。このため様々な環境変化の影響を受けやすくなります。本開発品は記録条件を自動的に検出および調整し、レーザ波形を最適化するレーザ制御技術により、高品位な4倍速記録を実現しました。
3.2層ディスクからの微弱な信号を4倍速で忠実に再生
2層ディスクからの再生信号は微弱なため、4倍速という高速で再生を行う際にはノイズの影響が増大します。これに加えて、周囲温度や振動等の環境変化によって再生信号に歪みが生じ、エラーが発生する可能性があります。このため本開発品は信号の持つ歪みを補正しながらノイズを低減して再生する復号化処理技術により、信頼性の高い再生を実現しました。
【内容の詳細説明】
1.光量を最適化するフィルターを用いて、青紫色レーザの低ノイズパワー領域を有効に活用するレーザ光量調整技術
青紫色レーザは低いパワーでノイズが高くなる特性をもつため、再生時にパワーを高くする必要があります。しかし、信号を再生するには弱いパワーをディスクに照射しなければなりません。したがってレーザからディスクまでの光伝達効率を低く抑える必要があります。
本光ピックアップには、低ノイズパワー領域を有効に活用するために光伝達効率を適正に切り換える、レーザ光量調整技術を搭載しました。これにより2層4倍速記録に必要なパワーを、180mWから現在2層2倍速で一般に使われている130mWまで低減することが可能になりました。
2.記録条件を自動的に検出および調整し、レーザ波形を最適化するレーザ制御技術
記録の歪みを検出し、その歪みが最小となる最適な光パルス波形(タイミング、時間幅および波高値)を自動的に探索決定するレーザ制御技術を開発しました。これにより、様々な環境変化に対応可能となり、高品質な記録を実現しました。
3.歪みを補正しながらノイズを低減して再生する復号化処理技術
再生信号から歪み部分を部分的に検出し、この再生信号を自動補正します。さらにこの補正された再生信号波形に対し、あらかじめ用意された波形データパターンに最も近い波形データを最終的に復号データ[2]とする復号化処理技術の導入により、安定な再生を実現しました。
【用語の説明】
[1]ブルーレイディスクアソシエーション(Blu-ray Disc Association)
2004年10月に発足したBlu-rayディスク規格を策定するオープンな団体で、2007年3月1日現在、日本、米国、欧州、韓国などから167社が参加しています。
[2]復号データ
光ディスクなどの記録媒体にデータを記録する際に、一定のルールに基づきデータを変換して記録します。このデータを読み出す際には、記録と逆の変換を行います。この逆変換されたデータを復号データと呼びます。