ロシュ、「Actemra」の投与による関節リウマチの症状改善効果を確認
Actemraについて
・国内では、関節リウマチおよび全身型若年性特発性関節炎の効能追加を2006年4月に申請しました。
・日本での効能・効果は「キャッスルマン病」、販売名は「アクテムラ(R)点滴静注用200」です。
最新の臨床第III相試験で、Actemraが関節リウマチ患者の症状を
有意に改善するという結果が得られる
IL-6 受容体の抑制が、抗TNF 療法の効果が不十分な患者に恩恵をもたらすことが示された
ロシュは本日、Actemra(tocilizumab)の大規模な多国籍第III相臨床試験(RADIATE (注1))の3番目の試験において、主要評価項目(注2)が達成されたことを発表しました。本試験では、抗腫瘍壊死因子(抗TNF)療法で効果不十分な関節リウマチ(RA)患者を対象として、メトトレキサート(MTX)とActemra の併用療法について検討しました。
難治性関節リウマチ患者498名を対象に行った本試験において、ActemraにMTXを併用した投与群ではActemraプラセボにMTXを併用した投与群に比べ、多くの患者で24週投与後の症状(ACRスコア(注3))に有意な改善が認められました。
ロシュ炎症・自己免疫疾患領域ビジネスダイレクターのUrs Schleuniger は、「RADIATE 試験の肯定的な結果は、関節リウマチの病態生理におけるIL-6の重要な役割をさらに裏付けるものです」と語り、また「この結果も、本年予定している規制当局への申請に向けてまとめられている豊富なデータに追加されます」と付け加えています。
RADIATE試験について
RADIATE試験は、少なくとも一つの抗TNF療法が効果不十分であった中等度から重症の活動性RA患者を対象に、MTXとActemraとの併用療法の安全性および症状の緩和について、プラセボと比較する無作為化二重盲検プラセボ対照の、3群間比較試験です。各群には、MTX 10~25mgの週1回投与に加えActemra(4mg/kg または8mg/kg)、あるいはプラセボが投与されました。この患者群は従来、より難治性の病態を示し、治療が難しいと考えられてきました。本試験は498人の患者を3群に分け、米国を含む13カ国、128施設で実施されました。それぞれの投与群において、患者は、Actemra4mg/kg、Actemra8mg/kg、あるいはプラセボを、MTXの週10-25mgに加えて投与されました。
RADIATE試験の成績は、今後開催される国際的な学術集会に提出されます。Actemraに関するロシュの多国籍第III相臨床試験は、残る2試験が現在進行中で、そのうち1本は2007年中に報告される予定です。
先行試験
6月に開催されたEULAR学術集会(注4)において、OPTION試験(注5)では、ActemraとMTXの併用投与によりMTX に効果不十分なRA患者においてRA症状が迅速に改善されることが報告されました。さらに、TOWARD試験(注6)では、主要評価項目(ACR20)が達成され、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に効果不十分な患者において、Actemraの有効性が示されました。
Actemraについて
Actemra(tocilizumab)は、初めてのヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体であり、その独特の作用機序により、まだ完全な治療法が確立されていないRAという疾患に対して新たな治療の選択肢を提供するものです。多国籍臨床試験で観察されたActemraの総体的な安全性プロファイルは一貫しており、一般的に忍容性が高いことが示されました。最も多かった有害事象は、上気道感染症、頭痛、鼻咽頭炎、高血圧でした。また、他のDMARDsと同様に、Actemra投与群において、重篤な感染症が報告されています。
ロシュと中外製薬は日本国外で共同開発を進めており、欧米を含む世界41カ国で4,000名以上のRA患者を対象に第III相臨床試験を実施しています。日本では2005年6月に世界初のキャッスルマン病治療薬として発売しました。また、2006年4月に、関節リウマチおよび全身型若年性特発性関節炎の追加適応症の申請を行いました。
関節リウマチについて
RAは進行・全身性の自己免疫疾患であり、関節内の細胞膜の慢性的な炎症や疲労および、骨粗鬆症や貧血、肺・皮膚・肝臓への諸影響をも引き起こす場合があることを特徴とします。炎症によって関節の形成や機能が損なわれ、痛み、こわばりや腫れが起こり、やがては骨・関節破壊により関節の機能が失われ、多くの場合、進行性の障害につながっていきます。さらに、慢性的な炎症が続くことにより主要な臓器機能へ影響が生じ、余命の短縮につながる場合もあります。RA発症後10年で、仕事や日常生活を支障なく継続できる患者の割合は50%以下とされており、世界中で2,100万人の患者がいるといわれています。
関節リウマチにおけるロシュについて
ロシュにとって今後数年間、最も有力な成長領域の一つに位置付けられているのが新たに発展している自己免疫疾患領域であり、RAはその最初の適応です。MabThera(rituximab)の上市に続き、いくつものプロジェクトが開発段階にあり、さらにこの領域を強化することを可能としています。MabTheraはRAの病因に重要な役割を持つB細胞を標的とした最初で唯一の治療薬です。また、Actemraは、ロシュにとって2番目の革新的な医薬品であり、RAにおける重要な炎症因子であるIL-6の活動を阻害する作用を持つ最初のヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体です。Actemraは中外製薬が共同研究により創製したものであり、ロシュは中外製薬と共に国際開発を進めています。その他、臨床第I、第II、第III相段階のものを含む複数のプロジェクトにより充実したパイプラインが形成されており、中でもヒト化抗CD-20抗体(ocrelizumab)
は、RAを対象とした第III相臨床試験を開始しました。
ロシュについて
ロシュは、スイスのバーゼルに本社を置く、医薬品および診断薬領域における研究開発型の世界的ヘルスケア企業です。世界最大のバイオテクノロジー企業であり、疾病の早期発見、予防、診断、治療のための革新的製品やサービスのサプライヤーとして、人びとの健康とQOL の改善に多方面で貢献しています。診断薬事業、がんおよび移植領域の医薬品で世界第1位、ウイルス感染症領域ではマーケットリーダー、そして自己免疫疾患および炎症、代謝、中枢神経系などの主要な治療領域でも活躍しています。2006 年度の売上は、医薬品事業では333億スイスフラン、診断薬事業では87億スイスフランでした。また、ロシュは世界各国に約75,000人の社員を擁し、多数のパートナー企業と研究開発契約や戦略的アライアンスを締結しており、ジェネンテックと中外製薬の株式の過半数を保有しています。ロシュ・グループに関するさらに詳しい情報は、 www.roche.com をご覧下さい。
本プレスリリースで使用あるいは言及したすべての商標は法律で保護されています。
追加情報
- ロシュと自己免疫疾患: www.roche.com/med_events_mb1106
参考:
注1.RADIATE はResearch on Actemra Determining effIcacy after Anti-Tnf FailurEs の略です。
注2.投与開始24週目にACR20を達成した患者の割合。
注3.ACR反応率は、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)が提唱した、抗リウマチ療法に対する効果の判定に用いる標準的な評価基準です。患者には、疾患の症状と測定項目の数の減少率を明確にすることが求められます。例えば、20%、50%、70%の低下(RA 症状の減少率)は、ACR20、ACR50、ACR70 のように表します。現在の治療法では、ACR70は例外的で患者の病態が著しく改善したことを表します。
注4.EULAR は欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism)を指します。
注5.OPTION はTOcilizumab Pivotal Trial in Methotrexate Inadequate respONders の略です。
注6.TOWARD はTocilizumab in cOmbination With traditional DMARD therapy の略です。