ローム、カーエンタテイメントシステムに適した汎用ビデオスイッチICを開発
ロームがカーエンターテイメントシステムに最適な高信頼性ビデオスイッチICシリーズを開発
半導体メーカのローム株式会社(本社:京都市)はこのほど、カーエンタテイメントシステムに適した汎用ビデオスイッチICを開発しました。映像ソースの多様化、複数のモニタ搭載車などカーエンタテイメントシステムは様々なシステム構成をとるなか、ロームは映像信号の複雑な切替えに対応できる汎用ビデオスイッチIC『BH7636□シリーズ』、『BH7633□シリーズ』をシリーズ化。6入力1出力の『BH7636□シリーズ』はクランプ入力/バイアス入力のタイプと6dBアンプ+ビデオドライバの有無で4機種、また3入力1出力の『BH7633□シリーズ』もクランプ入力/バイアス入力のタイプと6dBアンプ+ビデオドライバの有無で4機種、合計8機種をラインアップしました。この新製品は、今年5月からサンプル出荷(サンプル価格:『BH7636□シリーズ』500円、『BH7633□シリーズ』300円)を開始しており、2007年8月から当面月産50万個の規模で量産を予定しています。前工程をロームアポロデバイス(福岡県)、後工程を『BH7636□シリーズ』はROHM ELECTRONICS PHILIPPINES,INC.(フィリピン)で、『BH7633□シリーズ』はROHM INTEGRATED SYSTEM(THAILAND)CO.,LTD(タイ)で行います。
昨今、カーエンターテイメントシステムのコアとされるカーナビゲーションシステムでは、ナビゲーション画面だけでなくDVDの再生画像やアナログ波や地上波デジタル放送のテレビ画像、リアやサイドミラーカメラなどのモニタリング画像、そしてゲーム画面など映像ソースは益々増える傾向にあります。またそれらを映すモニタもフロントモニタのほかにリアモニタを複数台繋げるシステムが増えてきます。この様に多様化するカーエンターテイメントシステムでは、使用されるスイッチICの規模も大きくなり、セット毎の仕様の違いにより、要求される機能も異なってきます。そのためカーエンターテイメントシステム専用にスイッチICを開発しても、全てのセットに最適な仕様とすることは困難です。そこで、ロームは入力接点数の異なる2種類のスイッチICを複数個に組み合わせる事により、所要の仕様を自由に構築できる新しい考え方のビデオスイッチICシリーズを開発しました。今回開発したビデオスイッチICシリーズの大きな特長は、スイッチの機能を拡張するために複数のスイッチICを組み合わせて使用する際に、従来必要としていたIC毎の入力カップリングコンデンサを共用して使える仕様としたことです。これにより、従来タイプの汎用スイッチICの組み合わせでは外付け部品が多くなる問題を解決でき、専用スイッチICに匹敵するスペースと部品点数で、セットの仕様に合わせた自由な機能を構築できます。さらに『BH76330FVM』、『BH76360FV』に内蔵したビデオドライバは、従来品では必要とされた出力端子の大容量カップリングコンデンサ(約470μF)も不要にしたもので、前述の入力カップリングコンデンサの削除と合わせて複雑なシステムをコンパクトに実現できます。
また現在、カーエレクトロニクスの分野でも低消費電流化、低電圧化が求められるなか、今回開発したビデオスイッチICシリーズは省エネ化が図られ、特にビデオドライバ内蔵のビデオスイッチICとしては業界で初めての5V系に加え3V系電源でも使用できます。また従来品にはない回路電流0μAを実現するスタンバイ機能も内蔵し、セットの省エネ設計に貢献します。
加えてカーでの使用を考慮し高信頼性設計となっており、カーアクセサリ機器では十分な-40~+85℃の動作温度範囲、HBM6kVを超える高いESD耐量を実現し、セットの高信頼性に貢献します。
《『BH7636□シリーズ』、『BH7633□シリーズ』の主な特長》
1)『BH7636□シリーズ』、『BH7633□シリーズ』の併用時に入力カップリングコンデンサを共用できる。
2)ビデオドライバ内蔵タイプ(『BH76360FV』、『BH76330FVM』)は、出力コンデンサレスで動作可能
3)動作電圧範囲が広い(2.8~5.5V)
4)ミュート機能兼用のスタンバイモードを装備(スタンバイ時回路電流0μA)
5)動作温度範囲が広い(-40~+85℃)
6)ESD耐量が高い(HBM6kV以上)
7)小型パッケージ採用(SSOP-B16:6.4mm×5.0mm×1.35mm『BH7636□シリーズ』、
MSOP8:4.0mm×2.9mm×0.9mm『BH7633□シリーズ』)
■シリーズ一覧
※添付資料を参照
1.用語説明
・バイアス入力
ビデオ用スイッチICで扱う様々な種類のビデオ信号の内、(1)S端子に使用する色信号(2)コンポーネント端子に使用するPb.Pr信号(3)RGB端子に使用するRGB信号を扱うのに適した入力端子の機能がバイアス入力です。複合映像信号も扱えますが、その場合はクランプ入力の方が有利なので、複合映像信号以外のビデオ信号での使用が一般的です。
・クランプ入力
ビデオ用スイッチICで扱う様々な種類のビデオ信号の内、最も一般的な複合映像信号(コンポジットビデオ信号とも称します)を扱うのに適した入力端子の機能です。複合映像信号に含まれる同期信号の下側を一定の電圧に固定(クランプ)する機能を持つことからクランプ入力(正確にはシンクチップクランプ入力)と言います。扱える信号は複合映像信号(同期信号が重畳されている信号)に限られますが、入力端子のカップリングコンデンサを小さくできたり、ICから大きな出力振幅が出せるなどのメリットがあります。
・カップリングコンデンサ
デバイス間のDC段差(電位差)をキャンセルするためのコンデンサのこと。
・DCオフセット電圧
直流段差(電位差)のこと。
・ビデオドライバ(75Ωドライバ)
映像機器は同軸ケーブルで接続されますが、この同軸ケーブルは75Ωのインピーダンスを持つことが規格で決められて
います。映像信号が同軸ケーブルで反射や信号の歪みなどなく通過させるためにはビデオドライバが必要になります。
・6dBアンプ
信号振幅を2倍(6dB)に増幅するアンプ。ビデオドライバを通過すると振幅は1/2に半減するので6dBアンプで元の信号振幅に戻します。
・ESD耐量
デバイスに静電気が印加した場合のデバイスが耐えうる静電気の電圧をいいます。
2.製品写真
※添付資料を参照