忍者ブログ

ニュースリリースのリリースコンテナ第二倉庫

ニュースサイトなど宛てに広く配信された、ニュースリリース(プレスリリース)、 開示情報、IPO企業情報の備忘録。 大手サイトが順次削除するリリースバックナンバーも、蓄積・無料公開していきます。 ※リリース文中の固有名詞は、発表社等の商標、登録商標です。 ※リリース文はニュースサイト等マスコミ向けに広く公開されたものですが、著作権は発表社に帰属しています。

2025'02.07.Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2007'07.24.Tue

理化学研究所、卵巣由来の幹細胞分離に成功

世界で初めて卵巣由来の幹細胞分離に成功
- マウス卵巣から性ホルモン産生細胞の幹細胞を発見、培養技術を確立 -

◇ポイント◇
・ 性ホルモンをつくる「きょう膜細胞」の幹細胞を分離、体外でふやすことに成功
・ 体外での卵子産生に道
・ 卵巣疾患の治療法開発に新たな光


 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、京都大学、東京農業大学、および東京大学と協力して、マウスの卵巣内で性ホルモンをつくっている「きょう膜細胞(※1)」の幹細胞(※2)を世界で初めて分離し、体外でふやすことに成功しました。これは、理研バイオリソースセンター(小幡裕一センター長)、遺伝工学基盤技術室(小倉淳郎室長)の本多新(ほんだ あらた)基礎科学特別研究員らによる研究成果です。
 生き物にとって“生殖”は、子孫を残し、種を維持させるためにとても大切な営みのひとつです。しかし、生殖を担う精子と卵子がどのようにして形作られていくかに関しては、不明な点が多く残されています。精子を作り出す精巣では、精子幹細胞をはじめ、いくつかの幹細胞が分離・培養されています。しかしながら卵子を作り出す卵巣からは、幹細胞が分離できなかったために、卵子の発生に関する研究が難しいと考えられてきました。
 研究グループは、卵巣由来の幹細胞の分離を進めている過程で、世界で初めて、きょう膜幹細胞の分離・培養に成功しました。卵子は、卵巣中の卵胞(※3)につつまれて少しずつ発育、成熟しますが、きょう膜細胞は、この卵胞内で性ホルモンを作って卵子の発育に重要な役割を果たしています。このきょう膜幹細胞の分離技術を確立するとともに、体外で性ホルモンを作ることに成功し、卵巣にきょう膜幹細胞を移植して卵胞構造を形成させることにも成功しました。きょう膜幹細胞を自在に取り扱うことが可能になれば、長年ナゾであったきょう膜細胞の成り立ちや卵胞に包まれた卵子の発育を詳細に調べることが出来ます。卵巣由来の幹細胞の分離・培養の成功は、実験動物を使わずに卵子を作ったり、女性の卵巣疾患の治療などに役立てたりすることも可能になることが期待できます。
 本研究成果は、米国科学アカデミー紀要『The Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: PNAS』(7月24日号)に掲載されるに先立ち、7月16日の週にオンライン版に掲載されます。

1. 背景
 ほ乳動物の卵子は、卵巣内でいくつかの体細胞に包まれた「卵胞」という機能ユニットの中で発育します(図1)。卵子を発育させる卵胞には、卵子と直接的に相互作用して、卵子の発育に貢献する細胞や、性ホルモンを産生しながら卵巣機能の維持と卵子の発育を制御するきょう膜細胞があります。成熟した卵胞では、その形態や配置から容易にきょう膜細胞を区別し、分離することが可能なことから、分離したきょう膜細胞に関する研究が多数行われてきています。しかしながら、きょう膜細胞の生い立ちや成り立ちに関しては、その元となるきょう膜幹細胞を卵巣内で見つけることが困難なことや、きょう膜幹細胞の培養技術が無かったことから、不明な点が多くナゾだらけでした。
 すでに、精子をつくる精巣からは、精子幹細胞等のいくつかの幹細胞が分離・培養されており、精子形成機構に関する様々研究が進んでいます。しかし、卵子をつくる卵巣では、これまで卵巣由来の幹細胞が、分離・培養された例が無かったため、卵子形成機構の研究の進展だけでなく、卵巣疾患の治療法の確立という視点などから、この卵巣由来幹細胞の分離・培養技術開発が求められていました。今回、研究グループは、マウス新生仔卵巣からきょう膜幹細胞の分離・培養を成功させ、その特徴と可能性を検討しました。

2. 研究手法と結果

(1) きょう膜幹細胞の分離
 マウス新生仔の卵巣を酵素処理により解離して簡単な選別をした後に、血清を含まない低栄養状態の培養液で培養したところ、一見精子幹細胞のような細胞の塊(図2写真)が現れました。当初、卵子幹細胞としての可能性を検討しましたが、卵子の特徴を示さず、性ホルモンをつくりだすきょう膜細胞の特徴を示したことから、この細胞塊が卵子幹細胞ではなくきょう膜幹細胞であることを確認しました。この細胞は、接着力の弱い細胞を血清を用いずに培養するという簡便な方法で純粋に分離することができました。これにより、きょう膜細胞の生い立ちと成り立ちを詳しく調べられるようになるだけでなく、卵子の体外培養に効果のある新しいツールとしての利用が期待できます。

(1) きょう膜幹細胞から性ホルモンの産生
 分離した後に、培養液の組成を変えたり、他の細胞と一緒に培養したりして、培養環境を変化させることにより、幹細胞状態から性ホルモンのもとであるステロイド(※4)を産生する段階にまで細胞の性質を変化させることに世界で初めて成功しました。この技術を確立したことで、卵巣での性ホルモンをつくるしくみを理解しやすくなり、幹細胞から性ホルモンを産生するまでにどのような過程を経るのかを知ることが出来ます。

(1) きょう膜幹細胞の卵巣への移植
 卵巣を取り出して、きょう膜幹細胞を注入し、その卵巣をもう一度生体に戻すような移植で、この幹細胞を卵巣に移植したところ、移植した細胞が卵胞構造の一部として卵胞に取り込まれました(図2写真)。この一連の実験から、生体外で培養したきょう膜幹細胞を卵巣内に戻すと、卵子形成に関与できる可能性が示唆されました。

3. 今後の期待
 研究グループが分離したきょう膜幹細胞は、卵子の体外培養技術開発に利用できる新しいツールを提供するだけでなく、遺伝子導入などと組み合わせることにより、卵巣疾患の治療への道が開ける期待が持てます。しかしながら、研究グループが確立したこの技術だけでは、分離したきょう膜幹細胞の生体外での効率的な増殖が困難なため、より的確な培養条件を検討する必要があり、課題を残しています。培養条件を確立することができると、きょう膜幹細胞を未分化なまま効果的に増殖・保存することが可能となり、今後の生殖・医学分野に多大な貢献をもたらすと期待されます。


(問い合わせ先)
独立行政法人理化学研究所 
 バイオリソースセンター 遺伝工学基盤技術室
 Tel : 029-836-9165 / Fax : 029-836-9172

 筑波研究推進部 企画課
 Tel : 029-836-9142 / Fax : 029-836-9100


<補足説明>
(※1) 莢(きょう)膜細胞
 性ホルモンを産生する卵巣の細胞。卵子を取り囲み卵子の成長にも関与する。

(※2) 幹細胞
 未分化状態のまま増殖し、かつ分化する能力を有する細胞。

(※3) 卵胞
 未成熟な卵子は、いくつかの体細胞によって層状に包まれた状態で成長する。卵子とそれを取り囲む細胞からなる球状の構造を卵胞と言い、卵胞を構成する細胞にはきょう膜細胞も含まれる。

(※4) ステロイド
 動植物から昆虫に至るまで、ほとんどの生物はステロイドを持っており、特に皮膚炎などの治療に使われるものが有名であるが、性ホルモンも別種のステロイドホルモンである。

PR
Post your Comment
Name:
Title:
Mail:
URL:
Color:
Comment:
pass: emoji:Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
trackback
この記事のトラックバックURL:
[5506] [5505] [5504] [5503] [5502] [5501] [5500] [5499] [5498] [5497] [5496
«  BackHOME : Next »
広告
ブログ内検索
カウンター

忍者ブログ[PR]