矢野経済研究所、ICカード市場に関する調査結果を発表
ICカード市場に関する調査結果
~電子マネーはキラーアプリケーションへと成長した~
◆調査要綱
矢野経済研究所はICカード市場において成長著しい電子マネーアプリケーションについて調査・研究を行い、有力サービスであるSuica、ICOCA、PASMO、Edy、nanaco、WAON、Smartplus、iD、QUICPay、PiTaPaについて特徴と将来性を考察した。ベンダー各社に面談取材し、リーダライタの標準化や課題・問題点、ターゲットユーザーの認識等を抽出し、2010年度までの発行枚数や利用可能店舗数など合計4項目について集計・予測した。また、バイオメトリクスやRF-IDなど関連システム市場の動向も徹底的に網羅した。
1.調査対象:電子マネーベンダー企業各社(10社)
2.調査期間:2007年5月~2007年7月
3.調査方法:当研究所専門調査研究員による直接面接取材
4.資料名:「ICカード市場白書 特別版」
◆調査結果サマリー
★電子マネーサービスは確実に伸張しており、同サービスは我々の生活において深く根ざすものとなりつつある。電子マネーという言葉の定義は拡大し続けており、新規の電子マネーサービスが次々と市場に登場している。この魅力的な新しい社会インフラに早期参入し、少しでも知見を得ようとするアプリケーション提供事業者が増加している。
★おサイフケータイについても、同サービスのセキュリティの向上を受け、クレジットカード等、ハイセキュリティを要する金融サービスも次々と格納され始めている。また、その決済サービス提供事業者も一種類に限定されず、任意で複数のクレジットカードを一台の携帯電話で搭載することができるまでに至っている。
★国内の電子マネー向けICカードの累積発行枚数は、主要電子マネーベンダーからのヒアリングにより推計すると、2005年度実績39,660千枚/千台、2006年度実績52,530千枚/千台、2007年度見込み96,890千枚/千台であった。また、2008年度予測としては、161,700千枚/千台、2009年度予測としては207,000千枚/千台、2010年度予測については248,100千枚/千台と推計した。
◆資料体裁
発刊日:2007年7月31日
体 裁:A4判 211頁
定 価:147,000円(本体価格:140,000円 消費税等:7,000円)
○株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2
代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月
年間レポート発刊:約250タイトル
URL:http://www.yano.co.jp/
【 調査内容の解説 】
電子マネービジネスの市場概況
電子マネーという言葉の定義は現在も膨張と伸縮を繰り返している。電子マネーサービス提供事業者同士の協調と競合、クレジットカード会社や銀行系、キャリア、交通系など様々なサプライヤの縦横無尽にわたる融合と反目を繰り返しながら、増殖と死滅を繰り返す生態系のように電子マネーサービスの輪郭は定まらない。このシステムとサービスの著しい混沌は新しい星が生れる際のビッグバンに似ている。要するに内側からのエネルギーが大きすぎて電子マネーサービス市場は錯綜しているが、それは決して否定的な側面だけではない、むしろより大きな社会インフラを目指すシステムとして、不可避なイベントである、ということだ。
とはいえ、ひとたびユーザーの立場に立って状況を睥睨してみれば、兼ねてから言われていたサービスの乱立、リーダライタの迷走と増え続けるカード等の問題は一向に解決されておらず、収斂の兆しを見せるどころか加速度的に枝分かれを続けている。
現在市場において有力とされている電子マネーサービスだけでも「Suica」、「ICOCA」、「Edy」、「nanaco」、「PASMO」、「WAON」、「Smartplus」、「iD」、「QUICPay」、「PiTaPa」が挙げられ、出揃っている電子マネーサービスでは主たるものだけで10種類以上にも及んでいる。しかもこれは「WebMoney」などサイバー空間のみの電子マネーを除いた数であり、この雨後の竹の子のような電子マネーサービスのエントリーはまだまだ止まる兆しを見せていない。
視点を変えれば、このプレイヤーの異常な混雑は、電子マネーという技術が確実な将来性を携えている何よりの証拠である。事実電子マネーはその利便性やシンプルさ、そして高いセキュリティから、既存の様々な社会インフラと相性がよく、どのようなシステムの懐にもスルリと入っていける。今後も電子マネーサービスはとりとめのない拡散を続けることと思われるが、市場の成長が自然な形で適者生存を促していくことは確実である。今はユーザーがそれぞれのサービスにジャッジを下している、その最中であるといえるだろう。
※ 「電子マネーブランド別一覧」など詳細は関連資料を参照。