東北大学、片手で持てるサイズのガスタービンエンジンの実証に成功
片手で楽々持てる世界最小のガスタービンエンジンの実証に成功
自立ロボットやパーソナル移動機械の電源として期待
【新規発表事項】
東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻 田中秀治准教授の研究グループは,株式会社IHI,東北学院大学の十合晋一名誉教授の研究グループ,東京都立科学技術大学工学部航空宇宙システム工学科の湯浅三郎教授の研究グループ,および東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の寺本進准教授の研究グループと共同で,従来のものより画期的に小さいガスタービンエンジンの開発に成功しましたのでお知らせいたします。
開発したエンジンの大きさは,片手で楽々持てる程度(直径約10 cm × 長さ約15 cm)であり,自立ロボットやパーソナル移動機械の電源としての応用が期待されます。ガスタービンエンジンは,二次電池と比べて,充電の必要がなく,燃料補給によって連続運転できる上,同じ大きさからより大きなエネルギーを取り出せる可能性があります。また,ガスタービンエンジンは,排気ガスがレシプロエンジンと比べてクリーンであり,出力が同じ大きさの燃料電池より大きいという特長を持っています。
【背景】
メカトロニクス技術や情報技術の発展によって,近い将来,ロボットが工場以外でも使われるようになると期待されています。ロボットの重要な用途に,災害時の救助・復旧支援,危険・過酷環境での作業などがありますが,これらの用途では,必ずしも電池を充電できる環境がなく,汎用燃料で動くことが求められます。また,高齢化社会で必要となるパーソナル移動機械のパワー源にも,燃料補給によって連続使用できること,一回の燃料補給で長時間使えることなどが求められます。しかも,これらの電源は小形・軽量かつ静かでなくてはなりません。
我々が日常的に使っているガソリン,軽油,灯油などの燃料は,電池と比べて非常に多くの取り出しうるエネルギーを含んでいます。このため,上記用途の電源の切札として,翼車径20 mm以下クラスの超小形ガスタービン発電機の研究開発が,世界各国で進められてきました。東北大学は,株式会社IHIの磯村浩介博士らと共同で,この研究開発に2000年頃から取り組み,この度,上記研究グループと共同で,このクラスのガスタービンエンジンとしては世界で初めて,その運転に成功し,サイクルの成立を実証しました。
【開発した装置】
開発したエンジンの大きさは,片手で楽々持てる程度(直径約10 cm × 長さ約15 cm)であり,その中に翼車径16 mmの圧縮機,翼車径17 mmのタービン,および燃焼器が備えられています(図1,2)。これまで世界最小であったIHIエアロスペースの携帯型ガスタービンエンジン発電機(Dynajet 2.6,出力2.6 kW,重量60 kg)と比べても,開発したエンジンは翼車径にして5分の1以下と画期的に小さくなっています。小形化にともなって翼車を超高速回転させる必要があり,開発したエンジンでは,定格回転数は毎分50~60万回転にもなります。今回,特殊な空気軸受を開発し,このような超高速回転を実現しました。
実験用装備を除くエンジンの主要部は,上記大きさより一まわり小さく,また,直径10 mmの翼車を毎分約90万回転で回転させることにも成功しており,さらなる小形化が可能です。現時点のエンジンに発電機は付いていませんが,発電機を取り付けるスペースが内部に確保されており,別途開発中の発電機を搭載できます。今後,株式会社IHIと共同で,実用化に向けて研究開発を継続します。
* 関連資料 参照
図1 超小形ガスタービンエンジン
図2 超小形ガスタービンエンジンのロータ
【成果発表】
2007年11月28~29日にドイツ,フライブルクで開催されるPowerMEMS 2007国際会議で発表する予定です。
【謝辞】
本研究開発の一部は,新エネルギー・産業技術総合開発機構の産業技術研究助成事業として実施されました。