DNAチップ研究所など、学校教育向け遺伝子解析教材「ハイブリ先生」を販売
学校教育向け遺伝子解析教材「ハイブリ先生」販売開始
-将来のDNAチップ市場形成に向けての取り組み-
株式会社DNAチップ研究所(社長:松原謙一、本社:神奈川県横浜市)と住友ベークライト株式会社(社長:小川富太郎、本社:東京都品川区)は、多くの学校、特に科学に特化したスーパーサイエンススクールや生命科学を取り扱う専門学校、生命科学の実習のある大学等の遺伝子解析実習で使えるヒトゲノムを対象とした遺伝子解析教材「ハイブリ先生」を共同開発しました。この遺伝子解析教材はDNAチップ解析手法により、学校教育のカリキュラムにも柔軟に対応できるプロトコルを兼ね備えており、また実験者自身のアルコール耐性遺伝子型を簡単に判別することができるため、DNAチップの効用を実体験することができます。
本遺伝子解析教材の開発には、DNAチップ研究所と独立行政法人産業技術総合研究所ゲノムファクトリー研究部門が協力し開発したオリゴDNA合成技術と、住友ベークライト株式会社製の高感度に遺伝子を検出できるS-BIO.基板を利用しました。
また、開発にあたっては、遺伝子教育で著名な東京テクニカルカレッジ・バイオテクノロジー科の大藤道衛先生のご指導を受け、商品化しました。
DNAチップ解析手法は、ゲノム科学研究現場での網羅的遺伝子解析に広く用いられるばかりでなく、最近FDA(U.S. Food and Drug Administration)により乳癌の予後予測のための診断用チップが承認されたように臨床応用も盛んになっています。しかし、高価で高度な技術を用いるため敷居が高いと思われがちなDNAチップ解析は、実はハイブリダイゼーション(注1)を原理としています。この教材は、プローブを基板に貼り付けるところからハイブリダイゼーション反応、結果判定まで実験者自らが行えるため、実験原理を理解でき、DNAチップ解析の有効性を実体験から学べます。現在、国内はもとより海外の遺伝子教育教材の中でもDNAチップ解析を学べるものはなく、本教材によりDNAチップ解析を体得することは、生命科学を学ぶ新たな切り口となると考えます。
これまでDNAチップは高価と言うイメージが先行し教育の現場で使えないと言う問題点がありましたが、1 キット2 万円程度と教育の現場でも十分購入可能な価格設定であり、教育という分野においても十分知識、技術を習得できる教材として貢献できると期待しております。
遺伝子教育に力を入れている高等学校は200~250 校(1 学年約6000 人)程度、生命科学を行う総合大学は約150 校(1 学年4000 人)あると推定され、これらを合わせ1 学年辺りの潜在的市場は10,000 人分の市場があると予想されます。本遺伝子解析教材は、このうち5割の利用を目標としており、5 年で約1億円の売上を目指します。尚、当年度の業績への影響は軽微であります。
1.教育用DNAチップの特徴
本キットではDNAチップを使用して、アルコール耐性に関連性があるとされる、ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)(注2)遺伝子のSNP(一塩基多型)(注3)判別が行えます。
自分自身のゲノムDNAを使用することで授業への関心を強めるとともに、実験を通して学生一人一人がDNA チップの概念や、生命科学実験における重要事項を学んでいただけるようなテキスト(実験プロトコル)構成になっています。また本キットを使用した実験の時間割に関しても複数パターン設定が可能ですので、授業計画に合わせてご使用いただけます。
DNAチップ実験に必要な基板、プローブDNA、各種試薬がセットになっているため、条件が整えばすぐに実験が始められます。マイクロピペッターを用いて手作業でスポット操作を行うことができ、さらにシグナルの検出はアルカリフォスファターゼ(注4)の発色反応を用いるため、スポッターやスキャナーのような高価な機器を必要としません。DNAチップ実験を簡単に始めていただけます。
2.販売開始
2007年8月
以 上
(注1)ハイブリダイゼーション
DNAチップと蛍光色素等で標識した検体を反応(DNAチップ上の一本鎖DNAと検体の一本鎖DNAが反応し、塩基対により2本鎖の2重らせん構造を形成する反応)させることです。
どこに蛍光色素がどれだけ結合したかによって、結合したDNAの種類と遺伝子発現量を知り、検体の機能を測定できます。
(注2)アルデヒドデヒドロゲナーゼ
エタノールは、アルコールデヒドロゲナーゼによりアセトアルデヒドに分解され、アルデヒドデヒドロゲナーゼがアセトアルデヒドを酢酸に分解します。アセトアルデヒドを分解する酵素の活性が高い人は、お酒に強くなります。
(注3)SNP(一塩基多型)
同一種内でも、個体間でDNAの塩基配列の違いがわずかずつ見られることをいいます。個人間のDNA塩基配列上の微妙な違いを解析することにより、患者の体質に合った薬を投与するオーダーメイド医療が可能になります。
(注4)アルカリフォスファターゼ
リン酸化合物を分解する酵素で、全身の組織でも特に骨で作られていて、肝臓から胆汁に排出されます。アルカリフォスファターゼの検査は、骨の病気や肝機能の診断に有効的です。