海上技術安全研究所など、船舶用低温排熱回収システムを開発
船舶用低温排熱回収システムの開発
~『スターリングエンジンを用いた排熱回収システム』を公開~
船舶等での排気ガス対策、省エネ技術の開発が依然大きな社会的要請となっていますが、(独)海上技術安全研究所をプロジェクトリーダーとする産官研究グループ(注)と(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は、世界で初めて、舶用ディーゼルエンジンから発生する排ガス(400℃程度)エネルギーを、スターリングエンジンを組み合わせることにより、効率よく回収し船内電源として活用するシステム、船舶用低温排熱回収システムを開発しました。
(注)海上技術安全研究所、(株)eスター及び東海運(株)から構成。
鉄道・運輸機構の「運輸分野における基礎的研究推進制度」による研究の一環として、この産官グループの研究では、これまで全く活用されていなかった船舶排気ガスの熱をできる限り有効活用して航行中に発電し、それを蓄電池に蓄電し、停泊時の船内電力として利用することによって、省エネと港内排気ガス汚染の削減の両方に貢献しようとする技術の確立を目指しました。
この装置は、温度差のある熱源により、内部の気体を膨張・収縮させて駆動力を得る外燃機関の一種、スターリングエンジンを利用したもので、これまでに3台のスターリングエンジンを製作し、陸上での性能実証試験を実施して、期待した性能の出ることを確認しました。本年10月以降、実際の船舶に搭載して実海域での実証試験を計画しています。
この排熱回収システムは次のような優れた特徴があります。
1)他に有効な手段がなくこれまで大気に排出していただけのディーゼルエンジンの排ガスから、運航中に有効な電気エネルギーを回収し、蓄電できます。
2)1000℃以上の高温の熱源により駆動するスターリングエンジンは世界的に実用例はありますが、400℃程度の低温の排熱を利用する実用化を目指したエンジンは、これが世界で初めてです。この排熱回収システムは内航船の主機からの低温排熱の回収システムを開発目標にしていますが、もちろんこの温度以上の熱源ではさらに熱効率が高められるため、工場や発電所などの排熱(400~600℃程度)の利用も可能になります。
3)内湾などの港に停泊中は、現在の船舶では、小型のディーゼルエンジンを運転して船内電源を確保しているため、停泊中の船舶からの排気ガス汚染が問題になっていますが、停泊中はこのシステムを利用して蓄電した電気を利用できるため小型のディーゼルエンジンを運転する必要がなく、港内での環境対策に有効です。
なお、このシステムの説明と公開実験を、9月7日(金)に行います。プログラムなど詳しくは別紙をご覧下さい。
別紙1 船舶用低温排熱回収システムの概要
別紙2 船舶用低温排熱回収システムの説明と公開実験の開催について
※別紙は添付資料を参照