東レ、感光性ポリイミドコーティング剤「フォトニース」ポジ型タイプの生産設備を増強
感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプの生産設備増強について
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:榊原定征、以下「東レ」)は、半導体保護膜用途における旺盛な需要に対応するため、滋賀事業場(滋賀県大津市)で生産する感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプの生産設備増強を行い、このたび工事を完了しました。投資額は約10億円で、生産能力は現行の3倍にあたる年産150トンに拡大します。新製造ラインで生産した製品は、9月から出荷を開始してまいります。
半導体保護膜に使用されるポリイミドコーティング剤の市場規模は、非感光性タイプ、感光性ネガ型タイプ、感光性ポジ型タイプを合わせて現在世界で約200億円と推定されますが、300mmウェーハプロセスによる配線ルール45nm以下の微細加工デバイス向けを中心に、2010年には300億円まで拡大する見込みです。中でも感光性ポジ型タイプは、最も微細加工性に優れ、かつ環境にやさしいアルカリ水溶液による現像が可能であることから、特に需要が増大しており、2010年には半導体保護膜用途全体の半数以上を占めると予想されています。
東レは、2000年に感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプを事業化し、独自の分子設計技術を駆使することで高い微細加工性、解像寸法均一性、塗布膜厚均一性と共に低温硬化性を兼ね備えた材料として、幅広く採用されてきました。特に解像寸法の均一性は世界最高レベルを実現しており、最先端300mmウェーハライン向けの半導体保護膜用途では、50%を超える世界ナンバーワンシェアを有しています。
当社は、今後の伸長が期待されるポジ型タイプの設備増強により更なる事業拡大を図り、2010年には300mmウェーハライン向けに70%、ポジ型全体においても50%を超えるシェア獲得を目指してまいります。
また、当製品については半導体保護膜以外の新規用途開拓も積極的に推進しており、有機ELディスプレイの隔壁絶縁材料などの製品開発を進め、既に実績を上げています。当社は、今後もポジ型タイプを中心に新規用途開拓を加速させ、5年後には非感光性タイプ、感光性ネガ型タイプも合わせたポリイミドコーティング剤事業全体の売上高を100億円規模へ倍増することを目標としています。
東レは、昨年10月に策定した中期経営課題“プロジェクト Innovation TORAY 2010(略称:IT-2010)”において、情報・通信・エレクトロニクス分野を重点成長領域として、先端材料を中心とした事業拡大を推進しております。当社は、感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプを電子情報材料事業における先端材料の主要な柱の一つとして位置づけ、積極的な事業拡大を図ってまいります。
■東レのポリイミドコーティング剤事業の歩み
東レは、1977年にポリイミドコーティング剤の研究開発を開始し、1981年にフォトレジストをマスクとしてパターニングする非感光性タイプ“セミコファイン”と、露光した部分が現像液に不溶化し、未露光部が溶解する感光性“フォトニース”ネガ型タイプをそれぞれ事業化しました。1985年には当社滋賀事業場(滋賀県大津市)内にポリイミドコーティング剤専用工場を建設、2000年には光が当たったところが現像液に溶解し、未露光部が残る感光性“フォトニース”ポジ型タイプを事業化しました。いずれの製品も当社の独自技術に基づく設計により高い性能を実現しており、お客様のニーズに合わせて幅広く展開しております。
■東レ感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプの特長、優位性
東レの感光性ポリイミドコーティング剤“フォトニース”ポジ型タイプは、当社独自の分子設計による新規ポリイミド構造、世界でも他に類を見ないポリイミド前駆体の溶解速度調整技術、感光化技術、コーティング液設計技術、低温硬化促進技術に基づいており、微細加工性、解像寸法均一性、塗布膜厚均一性に優れているとともに、低温硬化性を有した材料となっています。中でも300mmウェーハプロセス向けにはCASMAT(次世代半導体材料技術研究組合)に参画し、実際の生産設備での実証を行いながら、最適な製品開発を進めています。
特に解像寸法の均一性は競合材料の追従を許しておらず、半導体製造コスト削減に有効なポリイミドをマスクにしてパッド部、ヒューズ部などを開口するプロセスに適した材料の開発にいち早く成功し、最先端用途でのシェア拡大の大きな要因となっております。現在、当社のポジ型感光性ポリイミドコーティング剤は、市場の40%のシェアを有していると推定しております。
以上