帝国データバンク、12月の全国企業倒産集計を発表
2006年12月報
倒産件数は896件、2005年4月以降で最高
負債総額は4630億900万円、前年同月比30.6%の増加
・倒産件数 896件
前月比 18.8%増
前月 754件
前年同月比 18.2%増
前年同月 758件
・負債総額 4630億900万円
前月比 21.1%増
前月 3823億4800万円
前年同月比 30.6%増
前年同月 3544億3100万円
注)2005年3月以前の数値は参考値として掲載している。
ポイント
□倒産件数は896件、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高となり、これまで最高だった2006年10月(889件)を7件上回り、記録を更新した。
□負債総額は4630億900万円で、前月比(+21.1%)、前年同月比(+30.6%)ともに大幅増加。
□個人消費の伸び悩みなどを背景として、建設、小売り、サービスといった内需関連業界の倒産が増加しており、倒産件数の推移は緩やかな増加基調が続いている。
■件数
倒産件数は896件、2005年4月以降で最高となり、これまで最高だった2006年10月(889件)を7件上回り、記録を更新した。個人消費の伸び悩みなどを背景として、建設、小売り、サービスといった内需関連業界の倒産増加が主な要因。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながらも、確実にベースラインが上昇してきており、緩やかな増加基調が続いている。
■負債総額
負債総額は4630億900万円で、前月比(+21.1%)、前年同月比(+30.6%)ともに大幅増加となった。前年同月比増加は4ヵ月ぶり。
負債総額が膨らんだのは、三井石炭鉱業(株)(負債1000億円)が親会社である三井鉱山(株)(東証1部)の事業再生計画に伴い、多額の負債を抱えて特別清算処理されたため。
負債1000億円以上の倒産は2006年5月の臨海三セク3社以来、7ヵ月ぶりの発生となったが、上記の三井石炭鉱業(株)を除けば、総じて大型倒産は低水準で推移している。
■業種別
7業種中、建設業(232件、前年同月比+7.4%)、小売業(174件、同+43.8%)、サービス業(167件、同+63.7%)、卸売業(136件、同+7.1%)など6業種で前年同月比増加となった。
このうち、小売業とサービス業は、2005年4月以降で最高となった。個人消費の伸び悩みなどを背景として、建設、小売り、サービスといった内需関連業界の倒産が増加し、倒産全体の件数を押し上げている。
今後の問題点
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2006年12月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は45.5となり、前月比0.1ポイント減とほぼ横ばいながらも4ヵ月連続して悪化。前月に続いて2006年最低水準を更新し、引き続き足元経済が弱含んでいることが裏付けられた。早期の追加利上げへの懸念後退や円安進行により外需業界を中心に景況感の改善がみられたものの、公共事業費の大幅削減や「脱談合」の加速、個人消費の伸び悩みなどにより建設や小売りなど内需業界の景況感が後退、全体を押し下げた。
■これにより、今回の景気回復局面で最高水準となった3月(47.9)からの悪化幅は2.4ポイントに達し、1年前(47.0)と比べても1.5ポイント低い水準にとどまった。今回の景気回復期間は11月に「いざなぎ景気」の57ヵ月間を超えて戦後最長となったものの、景気DIからはそのような楽観的な見方は窺えず、年央からは踊り場局面と言える状況であった。各種経済統計では確かに景気回復の持続を示しているものの、小売業界や建設業界は個人消費の回復遅れや「脱談合」の加速で景気回復には程遠く、業界間の景況感格差が大都市圏と地方圏の格差にもつながった。また、大企業と中小企業の格差も縮小する気配はなく、景気回復は大都市圏における一部の業界の大手企業に限られたものであった。
■こうしたなか、2006年の法的整理による倒産は9351件となった。2005年4月に集計対象を変更したため前年との単純比較はできないが、参考値として単純合算した年間合計(7905件)と比較すると18.3%増加した。月ベースでみても、件数は一進一退を繰り返しながらも前年同月比ではほぼ一貫して増加。特に12月は前月比18.8%増、前年同月比18.2%増の896件と2006年の最高を記録するなど、年末にかけて増加基調は一層鮮明となった。
■一方、負債総額は5兆2717億9700万円で、前年の参考値(6兆1163億7200万円)との比較では13.8%の減少となった。大型倒産上位の顔ぶれをみると青山管財や臨海三セク、エス・シー・シーといった不動産やゴルフ場が中心で、バブル処理型案件以外の大型倒産は引き続き沈静化した。半面、中堅や中小・零細企業に倒産が集中する傾向が強まったことも特徴で、公共工事の削減や資源価格の高騰、またコンプライアンス違反などを要因とした実体のある企業の倒産も目立ち始めた。
■「脱談合」の加速で公共工事の落札価格の急落に見舞われるなか、2007年度の政府予算案で公共事業費が2006年度予算比3.5%削減されるなど、公共工事削減に歯止めがかからない。また、定率減税の廃止や各種保険料の引き上げを控え個人消費にも期待がかけられず、今なお景気回復感の乏しい地場建設会社や下請け業者、小売業者は窮地に追い込まれている。資源価格の高騰も着実に企業体力を疲弊させており、構造的にしわ寄せを受ける中小・零細や地方圏企業を取り巻く環境は今後一層厳しさを増す公算が大きい。
■さらに、追加利上げの実施が迫るなかで、地銀・第二地銀の再編や金融庁による信金・信組への集中検査を引き金とした融資打ち切り、セーフティーネットの役割を担ってきた政府系金融機関の統廃合、貸金業法の改正によるノンバンクなどからの融資引き揚げ圧力など、資金繰り面でも中小・零細企業の倒産リスクが高まってくるのは避けられない。
■国内経済は長期的な世界経済の拡大とともに潜在成長率並みの成長が持続すると言われている。しかし、規模・業界・地域間の格差拡大が不可避な状況下、小口倒産増加による「倒産件数増、負債総額減」の傾向は当面変わらないとみられ、2005年を底に増加に転じた倒産のトレンドは今後も継続し、緩やかな増加基調をたどるものと思われる。