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2025'02.04.Tue
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2007'08.13.Mon

東大と理化学研究所、遺伝暗号表構築における「生きた化石」タンパク質の立体構造を解明

生命の遺伝暗号表構築における「生きた化石」タンパク質の立体構造を解明 

<概要>
 ホスホセリルtRNA合成酵素(SepRS)は進化的に古い生命の遺伝暗号表の構築に働いていたと考えられているアミノアシルtRNA合成酵素である。東京大学は理化学研究所と共同でSepRSとリン酸化セリンおよびシステイン用tRNAの複合体の立体構造を、大型放射光施設SPring-8を利用して決定し、生命の遺伝暗号表の進化の過程を1つ解明した。


<解説> 
 生物の生命活動をおもにコントロールしているのは、タンパク質である。タンパク質は、わずか20種類のアミノ酸からできており、 DNAの遺伝情報にもとづいて合成される。この過程を翻訳*1と呼ぶ。翻訳のときには転移RNA(*1)(tRNA)(*1)が仲介役となってDNAの塩基情報をタンパク質のアミノ酸と結び付ける。特定のアミノ酸を、対応するtRNAに正しく結合させることで遺伝暗号表(*2)を構築しているのが、アミノアシルtRNA合成酵素(*2)と呼ばれる酵素群である。

 多くの生物は20種類のアミノ酸に対応して20種類の合成酵素をもっている。合成酵素のうちの1つシステイニルtRNA合成酵素(CysRS)はシステイン(Cys)をシステイン専用のtRNA(tRNACys)に結合させ、Cys-tRNACysを合成する酵素である(図1)。ところが進化的に古い特徴をもったある種の細菌はCysRSをもっていない。その代わり、そのような生物はホスホセリルtRNA合成酵素(SepRS)と呼ばれる他の一般的な生物にはない酵素をもっている。SepRSは標準的な20種類のアミノ酸のいずれとも異なるアミノ酸であるリン酸化セリン(Sep)(*3)をtRNACysに結合させSep-tRNACysを生成する。Sep-tRNACysはその後別の酵素であるSepCysSにより最終産物であるCys-tRNACysへと変換される。初期の生命の遺伝暗号表においてはSepRSとSepCysSがCys-tRNACys生成を担っていたが、進化に伴って登場したCysRSがCys-tRNACys生成の役割を引き継いだと考えられる。したがってSepRSは生命の遺伝暗号表進化における「生きた化石」であると考えられている。ここで、SepRSがいったいどのような形をしていて、どのようにリン酸化セリンやtRNACysを認識するのか、は分かっていなかった。それらを解明することで生命の遺伝暗号表進化の歴史の一端が明らかになることが期待された。

 研究グループは、SepRSがリン酸化セリンおよびtRNACysと結合した状態での複合体立体構造を、大型放射光施設SPring-8(*4)の共用ビームラインBL41XUを利用し、0.26ナノメートル分解能で観測することに成功した(図2)。

 その結果、SepRSはN端ドメイン、触媒ドメイン、挿入ドメイン、C端ドメインの4つのドメインからなることが分かった。触媒ドメインにおいて、リン酸化セリンを厳密に認識している様子が観測された。またSepRSのC端ドメインがtRNACysを厳密に認識している様子も明らかになった。

 さらに明らかになった原子構造をもとにして、人工的な遺伝暗号拡張に利用可能な「サプレッサーtRNA」にリン酸化セリンを結合させることのできるような改変SepRSを創出することに成功した。今後はこの改変SepRSを用いて、遺伝暗号表を人工的に拡張し、リン酸化セリンをタンパク質に部位特異的に導入する技術の開発研究に力を入れていく予定である。このような技術が実現されると、タンパク質内のセリンのリン酸化というヒトの病気などに深く関わる重要な現象についての研究が飛躍的に進むことが期待される。この研究は、我が国で推進している「タンパク3000プロジェクト」の成果の1つである。


図1:進化的に古い特徴をもつ生物における、SepRSが重要な役割を果たすCys-tRNACys生成方法。
 ※ 関連資料参照
 
図2:今回解明されたSepRS・tRNACys・リン酸化セリン複合体の立体構造。 
 ※ 関連資料参照


<用語解説>
*1.「翻訳」「転移RNA(tRNA)」「サプレッサーtRNA」:
 翻訳とはDNAの塩基配列情報をアミノ酸配列にし、タンパク質を合成すること。DNA上の塩基配列暗号は、3塩基ごとに区切ることができる。三つ組塩基の配列がひとつのアミノ酸を規定しているが、その対応関係を与えるアダプターが転移RNA(tRNA)。ひとつのtRNAはひとつの特定のアミノ酸を結合でき、特定の三つ組塩基にのみ結合する。サプレッサーtRNAとは本来翻訳の終結を規定する三つ組塩基を認識するtRNAであり、タンパク質への非標準アミノ酸の導入にしばしば用いられる。 

*2.「遺伝暗号表」「アミノアシルtRNA合成酵素:
 遺伝暗号表とは、タンパク質を合成するさいに、DNA中の三つ組塩基がどのアミノ酸に翻訳されるかを記した表。 アミノアシルtRNA合成酵素は20種類のアミノ酸それぞれに対応して20種類存在し、特定のアミノ酸を対応する転移tRNAに結びつける。 

*3.「リン酸化セリン」:
 タンパク質の基本材料となる20種類のアミノ酸のうちの1つであるセリンにリン酸基が付加されたアミノ酸である。本来は翻訳に用いられることはない。 

*4.「SPring-8」:
 西播磨にある世界最高水準の大型放射光実験施設。光速近くに加速された電子から作られる強力なX線をタンパク質の結晶に当て、そのタンパク質のかたちを原子レベルで解析できる。


<論文情報>
 米国科学誌 Nature Structural & Molecular Biology 2007年3月12日午前3時(日本時間)にオンラインに掲載。

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