富士経済、臨床検査市場に関する調査結果を発表
主要臨床検査薬・機器メーカー35社を調査
― 2006年、臨床検査市場は前年比3.2%増の3,894億円 ―
保険点数引き下げ、試薬単価下落など依然厳しい臨床検査環境
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、このほど主要臨床検査薬・機器メーカー35社に対し、同領域における各社の実績や今後の注力分野及び戦略などを中心に聞き取りを行い、臨床検査市場の現状と将来、各社の取り組みと方向性を調査した。その結果を報告書「2007 臨床検査」にまとめた。
※臨床検査とは、通常、病気の診断、治療方針の選択、予後の判定などのために、患者の検体(血液、尿、便、細胞、喀痰など)を採取したり、脳波や心電図などを測定して行なう保険適用されている検査を指すが、ここでは患者の検体を採取して行なう検査(検体検査)のみとし、保険適用外のOTCを含めた検査を臨床検査としている。
<臨床検査市場の動向>
添付資料をご参照ください。
※検査薬とは検体検査に使用する診断用の薬を指し、検査機器は検体検査に使用する機器を指す。
※臨床検査市場は検査薬市場と検査機器市場の合計で、検査センター及び病院市場とOTC市場で構成される。
※OTCとは薬局や薬店等で処方箋なしで買える検査薬・検査機器である。妊娠診断薬、排卵予知薬、尿検査試薬などである。血糖自己測定試薬・機器に関しては処方箋を必要とするが、個人が自宅など(病院以外)で検査するケースが圧倒的に多いためOTCに含めている。
06年(見込)臨床検査市場は前年比3.2%増の3,894億円となった。保険適用下の検査(病院で行なわれる検査)に対しては依然として2年に1度の実施料の引き下げが厳しいが、ここ数年、市場は3%台と、低調ながら拡大し続けている。
検査薬市場を病院市場(検査センター市場含む)とOTC市場に分けると、06年の病院市場は保険点数改定の影響を受けてはいるものの前年比2.5%増の2,864億円である。01年以降、年率2~3%増で推移してきた。主に市場を牽引している検査分野は免疫血清検査(抗原抗体反応による検査)、遺伝子検査(遺伝子を検体とする検査)、病理検査(組織、細胞などを検体とする検査)である。免疫血清検査ではRIA検査(抗原抗体反応をラジオアイソトープで検出する検査)からの移行もあるが、同じ検査分野内で”定性検査(プラスやマイナスで判定)から定量検査(陽陰性度を数値で判定)へ”、”定量検査でも、より検出感度の高い検査へ”といった検査単価の高い検査方法への移行が市場規模拡大の要因となっている。それ以外の検査分野では、横ばいか、減少傾向で、今後は年率1~2%増で推移する可能性が高い。OTC市場では特に糖尿病患者の増加に伴う血糖自己測定検査市場の拡大で、06年は前年比6.2%増の597億円となっており、今後も年率3~4%台の成長が期待される。
検査機器市場は04年まではマイナス成長で推移してきたが、05年から検査機器の貸与料金をその専用検査薬に上乗せする販売形態が全面的に規制されたことが市場に対して奏功し、05年は前年比4.5%増、06年には3.3%増で推移している。今後も市場は2~3%増で拡大していくと予想される。
<業界再編、各社の取り組み>
国内市場の低迷をカバーすべく、各社、営業・技術等の相互利用や効率化を狙ったM&A、また海外市場へのシフト、臨床検査周辺分野への進出が行なわれている。
1.M&Aの動向
1)臨床検査市場への新規参入及び本格参入によるM&A
国内では積水化学工業、富士フイルム、海外では独・シーメンス、米・GEが新規または本格参入
06年10月に積水化学工業が第一化学薬品、富士フイルムが第一ラジオアイソトープ研究所を買収している。前者は医療関連事業の強化と臨床検査事業への新規参入、後者は自社がもつ事業領域の拡大を狙ったものである。一方、06年6月に独・シーメンス社は、独・バイエル社を買収することを発表。同社は06年7月にも米・DPC社を買収しており、臨床検査事業への本格参入を目指している。また、画像診断システム分野で既に世界No.1の実績を持つ米・GE社が、07年1月に臨床検査分野で長年業界をリードしてきた米・アボット社の臨床検査部門とPOC事業部門の買収を発表、07年前期に締結予定としている。米・GE社の目的はヘルスケア事業全体の拡大強化策とみられる。
2)グループ企業の再編
三菱化学グループやDSファーマバイオメディカルがグループ企業の事業統合で再編、効率化の追求
三菱化学グループは三菱化学ヤトロン(臨床検査事業)と三菱化学ビーシーエル(臨床検査受託事業)を統合して臨床検査事業の強化、三菱化学BCLと三菱安全化学研究所(いずれも創薬支援事業)を統合して創薬支援事業の強化を図る予定である。また、DSファーマバイオメディカルと大日本住友製薬のラボラトリープロダクツ部が、臨床検査事業と研究用試薬事業の統合で効率化と営業力の強化、収益力強化を図る。何れも07年4月実施を予定している。
3)業務提携及び資本提携
06年10月大塚化学と栄研化学が業務提携と資本参加
業務提携は販売・市場育成、研究開発、技術の相互利用などを目的とし、資本参加は大塚化学が栄研化学の株式6.3%を取得することにより、その業務提携を円滑に進めるためである。栄研化学は05年12月にも、臨床検査機器のNo.1メーカーである日立ハイテクノロジーズと同様の業務提携、資本提携をしている。こうしたケースは今後も各社間で活発化すると予測される。
2.海外市場へのシフト
04年に栄研化学、05年に和光純薬、07年の後半には富士レビオが米国輸出を予定
栄研化学は便潜血検査、和光純薬がAFP-L3%(肝細胞癌の鑑別検査)を米国FDA(米国食品医薬品局。日本の厚生労働省にあたる米国厚生省に属す)の認可を受け、米国市場に輸出を開始している。富士レビオも07年後半に免疫検査用機器の米国輸出を予定している。
既に大きな実績を積んでいるところや、中には国内実績を上回る海外実績を持つところもあり、生化学検査機器を扱う日立ハイテクノロジーズ、オリンパス、東芝メディカルや血液検査用機器を扱うシスメックス、血糖自己測定検査薬・機器を扱うアークレイなど、主要16社の海外輸出実績は06年(見込)で1,260億円にものぼる。
3.臨床検査周辺分野への進出
研究用試薬事業、食品検査事業など保険制度の制約を受けない分野を目指して
特に病院市場では依然として2年に1度の検査実施料の引き下げが厳しく、保険制度の制約を受けない分野への進出を計画しているメーカーもある。その分野としては研究用試薬事業や組織培養周辺事業、食品検査事業、環境検査事業などで、長期的に育成していく方針をとっている。
<注目の検査>
POC(Point of Care)検査
2006年(見込)1,129億円 前年比 4.5%増
POC検査とは病院の外来や病棟、診療所等の、望まれる場で望まれる検査を簡単に実施できるという発想に基づく検査を切り口としている。尿検査(=一般検査)、血糖自己測定検査、簡易検査(ホルモン、ウイルス、細菌など)キット、検診の簡易検査等が該当する。近年、多くのメーカーがPOC検査を注力ポイントに位置づけている。特に市場が拡大している検査、今後期待される検査は、以下に述べる血糖自己測定検査とウイルス・細菌簡易検査キットである。
1)血糖自己測定検査
2006年(見込)554億円 前年比 7.1%増
糖尿病の患者数の増加に伴い、糖尿病関連検査市場が好調拡大している。その一つがPOC検査に位置づけられる血糖自己測定検査である。05年から検査機器の貸与料金をその専用検査薬に上乗せする販売形態が全面的に規制されたことで、今は装置の販売実績も伸びている。微侵襲・無侵襲システム(痛みの少ない・無いシステム)の実用化が2010年前後と推定され、実用化されれば更に市場拡大が期待される。
2)ウイルス・細菌簡易検査キット
2006年(見込)184億円 前年比 2.9%増
より簡易・迅速で、検査機器を必要としないウイルスと細菌の検査薬を指す。キットとしては、HCV抗体やHBs抗原、アデノウイルス抗原、梅毒抗体、A群溶連菌などで、近年、久々のヒット検査となった「インフルエンザウイルス抗原」もこれに含まれる。トータルで見ると前年比2.9%増と大きな伸びは見られないが、アデノウイルス抗原やA群溶連菌などの呼吸器感染症関連のキットには、インフルエンザ簡易検査キットの波及効果で大きく実績を伸ばしているものもある。
「インフルエンザウイルス抗原」迅速検査キットは、治療薬の処方に役立つ検査として、開業医や診療所を中心に普及した。このようなユーザーニーズに合った商品を開発できれば、大きな実績が期待できることが示された。また、今まで検査を外注に頼っていた開業医や診療所が、院内で検査を行なう意欲に目覚めたことと、検査薬メーカーによっては開業医や診療所への販売ルートも確立されつつあり、インフルエンザ簡易検査キットに続く検査キット登場の可能性が出てきた。
<調査対象>
臨床検査業界主要企業35社
<調査方法>
(株)富士経済メディカルグループ調査員による調査対象企業に対するインタビューサーベイ、及び(株)富士経済社内データベース活用による調査・分析
<調査期間>
2006年10月~2007年1月
以 上
【 資料タイトル:「2007 臨床検査」 】
体 裁:A4判 221頁
価 格:200,000円(税込み210,000円)
CD-ROMセット価格210,000円(税込み220,500円)
調査・編集:富士経済 東京マーケティング本部 メディカルグループ
TEL:03-3664-5821 FAX:03-3661-9514
発 行 所:株式会社 富士経済
〒103-0001東京都中央区日本橋小伝馬町2-5 F・Kビル
TEL03-3664-5811 (代) FAX 03-3661-0165 e-mail:koho@fuji-keizai.co.jp
この情報はURL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp/ https://www.fuji-keizai.co.jp/
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