NEC、漏えい電磁波からの情報盗用を困難にする「電磁波セキュリティ技術」を開発
漏えい電磁波からの情報盗用を困難にする
電磁波セキュリティ技術を開発
NECはこのたび、様々な情報通信装置からの漏えい電磁波(注1)を極端に小さくすることで、情報通信装置の画面や入力されたキーボードのキャラクターコード(打鍵情報)などを盗みづらくする情報盗用防止技術(電磁波セキュリティ技術)を開発しました。
今回開発した情報盗用防止技術は、LSIの動作によって発生する電磁ノイズを低減するためのプリント回路基板構造と、電源デカップリング(注2)用線路型素子(注3)の実装技術、および、機器の筐体やケーブルの適切なシールドによるノイズ低減手法の開発により実現したものです。
これにより情報通信装置からの漏えい電磁波を、一般に適用される国内規制値より40デシベル小さい値(電力比で1万分の1。TV放送波の約100万分の1相当)まで低減することに成功しました。このたび開発した技術を当社の暗号およびネットワーク技術と組み合わせることで、漏えい電磁波のレベルを極めて低く抑えたより安全な情報通信装置が実現できることとなります。
近年、ネットワークを経由して漏えいした個人や企業の情報が悪用される事件が多発しています。この対策として、ネットワークセキュリティを高めるファイヤーウォール技術や情報を暗号化する技術の活用が進んでいます。一方で、平文(例えば、キーボードから入力されるキャラクターコードや、画面の表示)の情報が含まれる漏えい電磁波が放射されて画面情報が再現されるということが新たに問題視されています。また、実装攻撃(注4)の手法を利用することで、漏えい電磁波に含まれる情報から暗号化のために使用している秘密鍵を発見できる可能性もあります。こうした問題への対策として、情報が含まれる漏えい電磁波が受信されないように、「強い電磁波でかく乱する方法」と「電磁波の放射を抑制する方法」が研究されています。
NECではかねてから、電磁波の放射を抑制する方法を開発するため、プリント基板の電源に着目した研究開発を進め、このたび平文の情報が重畳する漏えい電磁波を検知できないほど小さくする情報盗用防止技術を開発しました。
当社は、今回の開発がより安心・安全な情報通信環境の構築に貢献する技術であると考え、今後も研究開発に注力していきます。
なお、NECは本技術の一部を、3月14日から16日まで、早稲田大学大久保キャンパス(東京都・新宿区)で開催される「第21回エレクトロニクス実装学会講演大会」および、4月18日から20日まで、品川プリンスホテル(東京都・港区)で開催される国際会議「ICEP 2007」で発表します。
本技術は、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の民間基盤技術研究促進制度を活用した「情報通信装置の漏えい電磁波盗用防止技術の研究開発」の成果です。
(注1)漏えい電磁波
電子機器から意図せず放射される電磁波。不要電磁波とも表記される。情報通信装置では、漏えい電磁波の許容値が規制されている。
(注2)電源デカップリング技術
LSIなどの電気回路動作時に起きる電源に流れる電力の変動を、その発生源である電気回路の近傍に閉じ込めるため、フィルタやコンデンサなどを用いて電源配線を電気的に分離する技術。電源に流れる電力の変動は、同じ電源に接続された他の電気回路の動作への影響や、電磁波の漏えいの原因となる。
(注3)線路型素子
電源配線の途中に挿入して用いる線路構造のデバイス。本技術では、コンデンサ性能を併せ持つ低域通過型フィルタとして低インピーダンス線路素子(LILC)を使用。
(注4)実装攻撃
暗号化/復号処理が実装された機器においてその暗号処理の実行時間や電力消費量、電磁波などの情報を利用して、機器内部に格納されている秘密鍵の情報を抽出する手法で、現在急速に研究が進んでいる。
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NEC 研究企画部 企画戦略グループ
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