英グラクソ、「Tykerb」が乳がん治療薬として米国FDAの承認を取得
グラクソ・スミスクラインのTykerb(R)(一般名:lapatinib)
乳がん治療薬として米国FDAが承認
グラクソ・スミスクラインplc(本社:英国 以下GSK)は、米国FDAがTykerb(一般名:lapatinib)を3月13日付けで承認したと発表しました。承認されたTykerbの適応症は、他剤(アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブを含む)による治療歴のあるHER2過剰発現の進行性又は転移性乳がんに対するTykerbとゼローダ(R)(カペシタビン)の併用療法です。Tykerbは、乳癌の領域で初めて承認された1日1回経口投与の分子標的治療薬です。同剤は、2006年11月にFDAより優先審査の指定を受けていました。
GSKのがん領域治療薬開発センター(Oncology Medicine Development Center)のシニア・バイス・プレジデントであるパオロ・パオレッティ医師は、以下の通りコメントしています。
「TykerbはHER2陽性の進行性乳がんの患者さんにとっては、飛躍的一歩であるといえます。Tykerbは、低分子、経口の分子標的治療薬で、臨床試験データでは、アンスラサイクリン系、タキサン系、トラスツズマブによる抗がん剤治療歴のあるHER2過剰発現の進行性転移性に対し、カペシタビンとの併用によって明らかな有効性を示しました。今回のTykerbの承認は、新しいがん治療の開発に対するGSKの研究開発部門の積極的な取り組みを表しています。今後も私たちはTykerbについて乳がんの術後補助療法や他の固形がんへの応用など様々な開発に取り組んでいきます。」
今回の承認は、60以上の臨床試験や研究者主導型調査を含む16年にわたる同剤の研究の成果です。同剤は、がん細胞の生存増殖に関わるEGFR(ErbB1)とHER2(ErbB2)受容体のキナーゼ構成という2つの分子標的を阻害する薬剤です。Tykerbは分子標的薬として、がん細胞及びがんの増殖進行の過程を阻害します。Tykerbは今後2週間以内に米国内で使用が可能となり、経口薬として患者さんにとって利便性の向上に貢献します。
GSKアメリカの医療用医薬品部門のプレジデントであるクリス・ヴィーバッハーは次のように述べています。
「今回のTykerbの承認は、私たちが科学的な革新と真の患者さんのニーズに焦点を当てたがん領域のメジャーカンパニーとなる為の重要なマイルストーンとなります。がん領域におけるGSKの豊富な製品パイプラインは、がんの患者さんに対する私たちの姿勢を明確に示しています。この取り組みはTykerbによってベネフィットを受ける女性がすべからく利用できるプログラムにもつながっています。」
■Tykerb患者サポートプログラム
GSKは米国において患者さんの治療情報へのアクセスをサポートするための窓口として、Tykerb Caresと称するプログラムを実施しています。このプログラムでは、この領域に精通した相談員による患者さんや医療従事者からの製品に関する質問への対応やTykerbの使用に関する支援を行います。
■Tykerbの臨床試験結果について
今回の承認は、トラスツズマブを含む化学療法を行っていたにもかかわらずがんが増悪したHER2過剰発現の進行性又は転移性乳がん患者399人を対象に実施した臨床試験の結果を基にしています。この試験において、無増悪期間(病気が進行するまでの時間)の中央値がTykerbとカペシタビンの併用療法群では27.1週だったのに対しカペシタビン単独療法群では18.6週であったと示されています。ハザード比0.57(95%CI:0.43,0.77,p=0.00013)は併用療法群における増悪リスクが43%低減したことを示すものです。非盲検の治験医師による評価における投与群間での差はこれより小さかったものの、臨床的にも統計的にも有意であるという結果でした。
服用中止につながるような有害事象の発生率はTykerbとカペシタビンの併用療法群とカペシタビン単独療法群で同等(14%)でした。Tykerbおよびカペシタビンの併用療法の主な有害事象は、下痢、手足症候群、悪心、発疹、嘔吐およびけん怠感でした。試験期間中、心臓のポンプ機能のキャパシティーの指標となる左心室駆出分画率(LVEF)についてもモニターがされていました。Tykerbおよびカペシタビンを投与された198人の患者の内3名において無症候性(グレード2)のLVEFの低下が見られ、1名において症候性(グレード3)のLVEFの低下が確認されました。
■現在実施中の試験について
GSKは、乳がんに対する他の治療法や他のがん種に対するTykerbの総合的な臨床試験プログラムを実施しており、Tykerbに対して応答する可能性の高い患者群の特定に専念しています。
欧州をはじめスイスやカナダ、ブラジル、オーストラリア、韓国など世界の多くの国において、同剤の承認に向けた申請がなされています。
*日本において本薬剤は申請準備中の段階にあります。
■Tykerbについて
Tykerbは、EGFR(ErbB1)とHER2のチロシン・キナーゼ受容体を阻害する経口の低分子化合物です。EGFRおよびHER2受容体の刺激は細胞増殖に関与し、さらには腫瘍の進行、浸潤、転移に関わる複数のプロセスに関与しています。これら受容体はさまざまなヒトの腫瘍に過剰発現し、予後や生存率の低下に関与しています。
Tykerbは米国においてグラクソ・スミスクライン・グループの登録商標です。
「ゼローダ(R)」はロシュ社の登録商標です。
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