水産総合研究センター、竹富町鳩間島の海岸周辺で精胞を抱えた雌のヤシガニを発見
本邦初!精胞を抱えた雌のヤシガニ発見
ヤシガニは、南西諸島の隆起石灰岩が発達した島々に生息し、古くから食材や剥製等に利用されています。近年は、観光客に珍味として提供されたり、ペットとして取引されたりするなど、捕獲数が急増し、資源が減少しています(環境省レッドリストの絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)に記載)。このため、資源管理の導入が緊急の課題とされていますが、本種の詳しい生態は明らかにされていないため、急速な資源の枯渇が懸念されています。
そこで、当センターでは、地域特産種として期待される本種の資源回復と持続的な利用を図るため、平成17年から竹富町鳩間島(はとまじま)にて、基礎的な資源・生態調査をしています。本年度は主に繁殖生態を明らかにするため、外部形態(大きさ等)、雌雄の性比、繁殖状況等の調査を実施していますが、6月2日の夜、鳩間島の海岸周辺で精胞を腹部に抱えた雌を発見し(注)、その撮影に成功しました。精胞を抱えた雌の観察事例は日本では初めてで、世界でも1971年にマーシャル諸島で1例のみの報告しかありません。
この雌の発見は、本種の交尾場所の特定や、飼育下において交尾を行わせる際の重要な知見となり、資源管理計画の策定や種苗生産技術の開発に大きく貢献すると期待されます。
注:ヤシガニの雄は、交尾時に精胞と呼ばれる精子を包んだ袋が紐状に連なった真っ白なゼリー状の物体を雌の腹部体表に付着させることにより、雌に精子を渡します。雌は受け取った精胞を使って産卵時に体外受精を行い、受精卵を抱卵するとされています。
(別紙資料) *関連資料参照
写真1.今ではめったに見られなくなった体重約1kgの大型個体
図1. 八重山諸島と鳩間島の位置
写真2.外部標識となる焼印標識
写真3.内部標識用のマイクロチップタグ
写真4.体中央部の白いゼリー状の物体がヤシガニの精胞