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ニュースリリースのリリースコンテナ第二倉庫

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2025'02.14.Fri
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2007'06.29.Fri

産総研、可視光を透過させ熱線を反射する日射熱反射ガラスを開発

■日射熱を反射するクールなガラス

-窓ガラスへの応用で省エネ効果を期待-


●ポイント
 ・日射に含まれる熱線(赤外線)エネルギーの50%以上を反射させるので冷房負荷軽減に有効。
 ・可視光透過率が80%以上で採光や眺望を妨げず窓ガラスとして利用可能。


<概要>

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)エレクトロニクス研究部門【研究部門長 和田 敏美】機能性酸化物グループ【研究グループ長 阪東 寛】 外岡 和彦 主任研究員、菊地 直人 研究員は、可視光を透過させ熱線(赤外線)を反射する日射熱反射ガラスを開発した(図1)。

 このガラスは、日射による採光を確保しつつ熱作用の強い近赤外線を効果的に反射できるので、ビル、家屋、車両などの窓ガラスとして利用することにより省エネに寄与することが期待される(図2)。

 スパッタリング法を用いてガラス基板上に酸化チタンと酸化ケイ素を主原料とする積層構造を形成し、各層の厚さをナノメートル・オーダーに制御することにより波長選択性の高い熱線反射を実現した。開発した日射熱反射ガラスは可視光透過率が82%(実測値)で、日射中の熱線(赤外線)エネルギーに対する反射率はおよそ50%と概算された。

 冷房が必要とされるような夏の昼間には、建物内に流入する熱量の71%が窓から入りこむといわれている(省エネ基準1992年)。日射エネルギーの約半分は人間にとっての明るさに寄与しないで熱作用を生ずることから、日射熱反射ガラスをビルなどの窓ガラスに利用すれば冷房負荷が軽減でき、大きな省エネ効果が期待される。
   
図1.日射熱反射ガラス試料の写真
図2.窓ガラスとして応用した場合のイメージ
 (※ 関連資料を参照してください。)
 

<開発の社会的背景>

 近年、省エネへの関心の高まりとともに、冷房負荷の主原因である日射熱を避けつつ日照を確保する技術へのニーズが増している。即ち、ビル、車両、家屋などの窓において、太陽光による採光(日照)を確保しつつ、熱線の透過を遮断する省エネに有効な機能が求められている。統計によると、温暖な地方では夏の冷房のために電力需要のピークが生じるようになった。省エネ基準(1992年基準)によれば、冷房が必要とされるような夏の昼間には、建物内に流入する熱量の71%が窓から入りこむとされる(図3)。光と熱の源である日射のエネルギーは幅広い波長領域に分布しており、紫外線が約6%、可視光が約46%、赤外線が約48%を占める(図4)。建物内に流入する熱の源は日射であり、このように日射エネルギーの約半分は人間にとっての明るさに寄与しないで熱作用を生ずる熱線(赤外線)であることから、熱線反射が冷房負荷軽減による省エネに極めて効果的と考えられる。最近は、省エネのための窓ガラスとして複層構造のペアガラスが注目されている。産総研では、ペアガラスよりも単純な構造で日射に対して高い性能、すなわち、高い可視光透過と効果的な日射熱反射を両立するガラスの開発を進めている。
   
図3.夏季の熱の流れ(省エネ基準1992)
図4.日射エネルギー波長分布の概形
 (※ 関連資料を参照してください。)
 

<研究の経緯>

 産総研では、これまで経済産業省からの運営交付金や委託研究費により、酸化物透明半導体材料などを用いて太陽光エネルギーを紫外線、可視光、赤外線の性質に応じて有効利用するための研究を行ってきた。

 今回の成果は、経済産業省からの交付金を原資として、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」事業の一つとして、委託契約に基づいた「選択的熱線反射による断熱・採光ガラスの研究開発(平成18~19年度)」による支援を受けて得たものである。


<研究の内容>

 今回、産総研が開発した「日射熱反射ガラス」(図1)は、酸化チタンと酸化ケイ素を主原料とする多層構造の光機能薄膜をガラス基板上にスパッタリング法により形成したもので、反射できる熱線に対しての波長選択性が高いことが特徴である。この波長選択的な性質を利用して可視光域での透過特性を人間の眼の感度と調和させつつ、人間にとっての明るさ感に寄与しない熱線エネルギーを効果的に反射させる「日射熱反射ガラス」を開発した。この熱線反射ガラスは、窓ガラスとしての応用を想定し、日射に対して最適な可視光透過特性および熱線反射特性となるように設計した。試作した日射熱反射ガラスの昼光(薄い雲がある東向きの青空)に対する可視光域での透過特性例をシリコンCCDアレイ光センサーにより測定した(図5)。試料(20mm角)の可視光透過率は82%(波長400nm~700nmに対する平均値)であった。人体に有害な紫外光に対しては反射および吸収により遮断し、熱線(赤外線)に対しては反射により透過を抑制する機能を有する。さらに長波長までの測定結果によれば、日射中の熱線エネルギーに対する反射率はおよそ50%(波長750nm~2000nmの熱線に対する平均値)と概算された。このガラスの特徴である熱線反射による遮熱効果を確認するために、光照射による温度変化を熱線反射の有無について調べた。60Wタングステン電球の光をガラスを通して温度計に照射する実験では、選択的熱線反射機能膜により温度上昇を74%に抑制した(図6)。このように、簡便な比較法ながら日射熱反射ガラスの遮熱効果を実証した。
   
図5 日射に対する可視光域での透過特性
図6 日射熱反射ガラスの遮熱効果
 (※ 関連資料を参照してください。)


<今後の予定>

 今後、可視光透過特性の平坦化、日射熱に対する反射特性などの性能向上を図る。加えて、使用する材料ならびに層構造についても詳細に検討し、より広い範囲の可視光透過率や熱線エネルギー反射率への要求に対応できるよう研究を展開する。その後、冷房負荷軽減の観点からの省エネ効果の評価を行い、窓ガラスへの応用に必要な基盤技術の確立を目指す。


<用語の説明>

◆熱線(赤外線)
 ここでは、日射に含まれる赤外線で特に強い熱作用を生ずる近赤外線部分を便宜的に熱線と呼ぶ。通常は、赤外線と熱線は同じ意味で用いられ、可視光よりも長波長側の光を指す。

◆スパッタリング法
 代表的な薄膜形成法の一つで、ターゲットを構成する材料物質がたたき出されるほどの高エネルギーでAr(アルゴン)などの不活性な物質をターゲットに衝突させ、この叩き出された原子や分子を近傍に置いた基板に付着させ薄膜を形成する技術。

◆酸化チタン
 チタンの酸化物のこと。天然には金紅石、鋭錐石などの主成分として産出する。白い絵の具などの塗料、釉薬、顔料として、また光触媒などとして使われている。

◆酸化ケイ素
 ケイ素(シリコンとも呼ばれる)の酸化物のこと。二酸化ケイ素やケイ酸塩化合物などのケイ素化合物は地殻中の約28%を占めており資源としても豊富にある。身近な例では、砂の主要成分が二酸化ケイ素である。

◆省エネ基準
 省エネ基準(省エネルギー基準)とは、住宅において省エネルギーを促進するための、経済産業省と国土交通省の告示による基準である。まず、1980年(昭和55年)に定められ、その後、1992年(平成4年)、1999年(平成11年)に改正された。

◆酸化物透明半導体材料
 透明な酸化物材料からなる半導体材料のこと。半導体の光吸収はエネルギーバンドギャップにより特徴づけられる。単純には、バンドギャップに相当するエネルギー以上の光を吸収すると考えればよいので、バンドギャップ3eV(エレクトロンボルト)以上の半導体が透明半導体となり得る。代表的な半導体材料であるシリコン(Si)はバンドギャップが約1eV(エレクトロンボルト)で赤外線・可視光・紫外線の全てを吸収する。材料のバンドギャップが大きくなると、赤外線と可視光に対する吸収が弱まり透光性を持つようになる。酸化物半導体として代表的な酸化亜鉛(ZnO)ではバンドギャップが約3eV(エレクトロンボルト)であるので、紫外線の吸収はあるが、可視光の大部分を透過するので透明半導体である。


<問い合わせ>

 独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部
 広報業務室  〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2
 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
 電話:029-862-6216 FAX:029-862-6212 Eメール:presec@m.aist.go.jp


(※ 図1~6は関連資料を参照してください。)

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