富士経済、SPOT検査市場の調査結果を発表
SPOT(簡便・迅速)検査の国内市場調査を実施
◆ 08年度メタボリック・シンドローム検診開始で糖尿病関連SPOT検査が拡大 ◆
2011年予測 糖尿病検査システム 37億円(06年比56.9%増)
血糖自己測定システム 742億円(06年比37.3%増)
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、このほど医療機関(病院内)と医療機関以外(病院外)のSPOT検査とされる装置及び診断薬の国内市場を調査した。その結果を報告書「2007 SPOT検査市場」にまとめた。
SPOT検査(富士経済の造語)はPOC(Point of Care)検査を包含する簡便・迅速に対応できる検査の総称であり、検査室や手術室、病棟、外来等の病院内と集団検診や人間ドック、患者本人が実施する検査など病院外で実施される簡便・迅速検査である。
本報告書では病院内で実施されるSPOT検査 装置5品目と診断薬20品目、病院外で実施されるSPOT検査 装置1品目と診断薬4品目の国内市場の分析と将来市場予測を行った。
<調査結果の概要>
* 関連資料「表1」 参照
病院内のSPOT検査は、06年は糖尿病検査システムや心筋マーカー検査システム・キット、インフルエンザウイルス以外の呼吸器感染症検査キットなどが大きく拡大したものの、診療報酬の改定とインフルエンザの大きな流行が無かったことが影響しほぼ横ばいとなった。07年は06年に拡大した検査システム/キットに加え便潜血検査システム、簡易分析システムの伸びが見込まれる。糖尿病検査システムは、主に小型システムが診療所への普及が進んだことにより拡大した。患者数、潜在患者数とも非常に多く、引き続き市場拡大が予測される市場である。08年度に始まるメタボリック・シンドローム検診により、装置の新規設置が予想され、それに伴い診断薬の実績増が期待される。心筋マーカー検査システム・キットは、新規参入企業が相次いだことで市場が拡大した。呼吸器感染症検査キットではRSウイルス検査(※1)やアデノウイルス検査(※2)などがインフルエンザ検査普及の波及効果で大きく伸びている。便潜血検査システムは、06年は診療報酬の改定の影響でほぼ横ばいとなったが、08年度から義務付けられる特定検診によって受診率のアップが期待される。簡易分析システムは、06年4月に外来・入院緊急検査に付加点数が付いたことから伸びている。また、参入各社からの新機種発売で市場は活性化しつつある。ホルモン簡易キットでは、LH(※3)簡易キットが不妊治療を受けている患者の増加により伸びている。また、患者は引続き増加傾向にあることから今後の市場拡大が予測される。
病院外のSPOT検査は、血糖自己測定システムが大きな患者人口を背景に市場拡大を続けている。また、OTCのLH※簡易キットも不妊治療の認知度が高まってきていることで06年は前年比25%増の10億円超、妊娠検査薬も30代女性の妊娠に対する意識が高まっており微増傾向にある。
※1 RSウイルス:乳児急性気道感染症(細気管支炎、肺炎など)の主な原因ウイルス。
※2 アデノウイルス:軽いカゼ程度から重症の扁桃腺炎や肺炎、さらには結膜炎や嘔吐下痢症などの症状をきたす原因ウイルス。夏風邪「プール熱」が有名。
※3 LH:黄体化ホルモン。排卵予知の指標。
<注目検査の動向>
◇糖尿病検査システム(装置・診断薬)◇
* 関連資料「表2」 参照
※グルコース専用分析装置や血糖自己測定システムはこの項では除外。
装置は、検査室で糖尿病検査項目を大量に処理するための大型装置と、診療所や外来等で患者診察時に用いる小型装置がある。診断薬は基本検査項目として血糖とGHbA1c(※1)、システムによっては、尿中アルブミン(※2)、クレアチニン(※3)、1,5-AG(※4)などがある。
06年は小型装置の納入台数が05年の420台から590台に増え、トータル630台となった(前年比35.5%増)。大型装置は普及のピークを越え、納入台数は減少となったが、徐々に買い替え需要が出てきたことや08年度からメタボリック・シンドローム検診が開始されることで装置需要は増加し、再び納入台数の増加が期待される。小型装置もメタボリック・シンドローム検診開始とともに増加するが、大型装置に比べ安価であり、ユーザーである診療所数も多いため、大型装置以上増加すると予想される。
また、診断薬は小型装置の納入台数の増加で、GHbA1cが検査数・販売実績ともに大きく拡大した。今後は検診にメタボリック・シンドロームのスクリーニングが加わることで、大型装置のニーズが高まるとともに、専用診断薬の実績も伸びると見られる。また、検診により潜在患者が顕在化することで、診療や治療の場で小型装置のニーズが高まるとともに、血糖やGHbA1cの実績増が予測される。
※1 GHbA1c:検査前1~2ヶ月程度の平均血糖値の指標
※2 尿中アルブミン:アルブミンは血清総蛋白の約60%を占める一群のタンパク質。糖尿病性腎症の早期発見のための指標。
※3 クレアチニン:非蛋白性窒素化合物の1つ。腎機能の指標。
※4 1,5-AG:検査前1週間程度の平均血糖値の指標
◇血糖自己測定システム◇
* 関連資料「表3」 参照
血糖自己測定システムは、大きな患者人口を背景に市場拡大を続けている。06年の装置の納入台数は、60万台(前年比6.3%増)、金額ベースで43億8千万円(前年比2.3%増)、診断薬は検査数が6億8千万件(前年比11.7%増)、金額ベースは496億円(前年比9.0%)となった。
今後2011年くらいまでは装置の納入台数が年率6%程度、診断薬の出荷数量が同10%程度と、順調な推移が予測される。リース撤廃の副産物として一部の企業を中心に、装置と診断薬の低価格化が進んでいるが、それ以外の企業は価格維持の姿勢であり、金額ベースの市場予測は、低価格化が一部に止まると予測し算出している。
◇呼吸器感染症検査キット◇
* 関連資料「表4」 参照
呼吸器感染症(鼻と口を通じて気道や肺にウイルスや細菌などが付着し、増殖して炎症を起こし、咳、痰、発熱、胸痛、呼吸困難などの症状を生じる病気)検査キットはインフルエンザ検査、アデノウイルス検査、RSウイルス検査、その他ウイルス・菌検査である。呼吸器感染症は11月~翌年3月が流行期間ということもあり、検査キットの実績は年度で集計している(アデノウイルス検査を除く)。尚、他の検査市場と比較、合計する場合は06年度(06年4月~07年3月)を06年としている。
呼吸器感染症検査キットは、ほぼ普及飽和にあるインフルエンザ検査が前年比15.3%減となったものの、RSウイルス検査が前年度比85.8%増、アデノウイルス検査が前年比47.2%増となったことで全体では5.2%減に止まった。インフルエンザ検査の普及は、既に飽和に近いところまできていることから、今後市場は毎年のインフルエンザの流行に左右される。その他の呼吸器感染症検査キットは、インフルエンザ検査が普及したことで診療所における簡易検査の有効性が示され需要は増加傾向にある。また、インフルエンザとその他類似疾患の鑑別検査の需要増も期待される。
◇心筋マーカー検査システム・キット(検査キット)◇
* 関連資料「表5」 参照
心筋梗塞を早期に検知する心筋マーカー(検査項目)にはCK(※1)、CK-MB(※1)、ミオグロビン(※2)、ミオシン(※3)、トロポニンT(※4)、トロポニンI(※4)、BNP(※5)などがある。心筋梗塞をチェックすることから緊急性が高く、ICU、CCU、外来、診療所などにおいて迅速検査のニーズは高い。このため開発されたのがイムノクロマト法によるマニュアルの検査キットである。また、心筋マーカー検査の検体数がまとまる施設の検査の自動化要求により開発されたのが、心筋マーカー専用検査システムである。
05年にBNPをはじめ4項目同測定可能な化学発光法の装置「PATHFAST」とその専用診断薬(何れも三菱化学メディエンス)、また06年にはイムノクロマト法の検査キット「イムノスポットBNP」と同専用装置「シオノスポットリーダー」(何れも塩野義製薬)といった新製品が投入されたことにより06年の検査システム市場は拡大した。特に「PATHFAST」は心電計トップメーカーのフクダ電子のチャネルも起用したことで、05年80台から06年は150台と倍近い実績となった。
診断薬は心不全の病態把握といった面での臨床的意義の高まりから、BNPが特に高い伸びを示している。06年は前年比80.6%増の2億9千万円となった。07年は06年の2倍強の6億円が見込まれ、今後も引き続き好調な推移が予測される。
※1 CK、CK-MB:CKは骨格筋、心筋、平滑筋などの障害をきたす疾患や状態の指標。CK-MBはCKの分画。心筋に特異性が高い。
※2 ミオグロビン:骨格筋と心筋に存在する低分子量のヘム蛋白。心筋および骨格筋組織の障害の判定やその重症度判定の指標。
※3 ミオシン:筋原線維を構成する蛋白。梗塞の大きさの評価、発症後時間が経過してからの診断の指標。
※4 トロポニンT、I:ともに筋収縮の調節に関与している蛋白。心筋特異性が極めて高い。筋肉に損傷がある場合は血中で検出される。
※5 BNP:心室から分泌される心臓ホルモンである。心不全の存在診断、治療効果判定、予後の予測の指標。
以上
<調査対象>
* 関連資料 参照
<調査方法>
富士経済専門調査員によるヒアリング調査
<調査期間>
2007年3月~5月
資料タイトル :「2007 SPOT検査市場」
体裁 :A4判 234頁
価格 :100,000円 (税込み105,000円)
CD-ROMセット価格110,000円(税込み115,500円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 メディカルグループ
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