農業生物資源研究所など、六条オオムギの起源が二条オオムギであることを発見
六条オオムギは二条オオムギから進化したことが明らかに
- 穂の形を制御する遺伝子の突然変異が原因 -
独立行政法人農業生物資源研究所を中心とする国際共同研究グループは、六条オオムギの起源は二条オオムギであり、穂の形を制御する遺伝子の領域に突然変異が生じて六条オオムギに進化したことを世界で始めて発見しました。
明らかになった遺伝子は二条オオムギでは正常に機能していますが、六条オオムギではわずか1塩基の突然変異でその機能が失われています。また、この突然変異は六条オオムギの3つの系統で別々に認められるため、一万年の栽培の歴史の異なる時代・地域でこの進化が独立に生じたと考えられます。
六条オオムギは食品や飼料として、二条オオムギはビール醸造に世界で広く栽培されている主要穀物で、考古学的には、二条オオムギがまず栽培化され、その後の新石器文明の新技術である「灌漑」に伴って、穂に種子を3倍着けて収量の多い六条オオムギ栽培が急速に普及したと考えられてきました。今回の発見はその推論を分子遺伝学的に証明したものです。
このオオムギの穂の形を制御する遺伝子を誰が最初に発見するかは、世界的な関心事でしたが、この競争に勝ち抜く上でイネゲノム塩基配列解読情報を近縁のオオムギに適用したことが重要な役割を果たしたと考えられます。今回の発見は、イネ科作物の進化や栽培起源の研究ばかりではなく、作物の改良を進める上でも画期的な発見といえます。
この研究は農林水産省イネゲノムプロジェクトおよびグリーンテクノ計画で実施されたものであり、成果の概要は、米国科学アカデミー紀要(PNAS、 http://www.pnas.org/ )に掲載される予定で、これに先立ち2007年1月12日(米国東部時間)にオンラインで公表されました。
【掲載誌】
Six-rowed barley originated from a mutation in a homeodomain-leucine zipper I-class homeobox gene PNAS published January 12, 2007, 10.1073/pnas.0608580104
(※ 【研究担当者の所属】【別紙参考】【用語解説】【図(穂と小穂)】は添付資料を参照してください。)