信越化学、欧州RoHS規制をクリアする鉛を含まない光アイソレータの製造技術を開発
信越化学、欧州RoHS規制をクリアする光通信用部品の開発に成功
~独自の結晶成長技術により光アイソレータの鉛を全廃~
信越化学工業株式会社(本社:東京、社長:金川千尋)は、欧州RoHS規制をクリアする鉛を含まない光アイソレータの製造技術を開発した。従来は光アイソレータの主要構成部品であるファラデー回転子(※)に鉛が含まれていたが、同開発品はこの鉛を全廃したものである。
欧州連合では、昨年7月に、電気・電子機器に含まれる鉛をRoHS指令による環境規制の対象物質とし、原則として全廃することで決定した。しかし、通信装置に組込まれる光アイソレータについては、技術的な問題から例外措置として鉛の含有基準値を1000ppm以下に規制する方向で進められており、規制を確実にクリアする完全な鉛非含有化が望まれていた。
当社がこのほど開発した技術は、この期待にいち早く応え光アイソレータの完全な鉛非含有化を実現したものであり、今後の環境規制の広がりに対応するものである。
光アイソレータはレーザーモジュール等に組み込まれ、レーザーダイオードで発振されたレーザー光を一方向だけ透過させる素子。光ファイバーからレーザーダイオードに戻る反射光を遮り、レーザーダイオードを保護するために使用される。
光アイソレータ用のファラデー回転子は、LPE(液相エピタキシャル法)で育成した厚さ数百ミクロンの希土類鉄ガーネット結晶が使われる。LPE法では結晶成分を溶かすために、高融点の酸化物を使う。従来はこの酸化物として酸化鉛が不可欠であり、このため、希土類鉄ガーネット結晶に酸化鉛が5000ppm程度含まれていた。
当社は酸化鉛を全く使用しないLPE法を独自に開発することで、世界で初めて、厚さ数百ミクロンの希土類鉄ガーネット結晶の育成技術開発に成功し、光アイソレータを構成するファラデー回転子中の鉛含有量をゼロppmとした。
当社は鉛非含有のファラデー回転子の量産技術に目処を付けたことにより、光アイソレータの全面的な鉛非含有化を行ってゆく。
さらに当社は、インラインアイソレータ(※)、サーキュレータ(※)向けの希土類鉄ガーネット結晶での鉛非含有化の技術開発も進め、FTTH向けに活況を呈している光部品市場へ対応するため生産能力の増強を図っていく。
※ファラデー回転子:磁場の中で光が磁場と平行に進むと偏向面が回転する現象をファラデー効果と称し、この効果を利用して進行光と逆方向の光の角度を制御する素子。
※インラインアイソレータ:逆方向の光を光路外に放出する素子。光増幅器に使用され、そのノイズを低減させる。
※サーキュレータ:光信号の経路を変更させる素子。光ファイバー伝送路に組み込み、光信号を取り出したり、もとの伝送路に戻す役割を果たす。
以 上