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ニュースリリースのリリースコンテナ第二倉庫

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2025'02.13.Thu
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2007'07.04.Wed

東北大学と科学技術振興機構、酸化物における量子ホール効果の観測に成功

酸化物における量子ホール効果の観測に初めて成功
-透明エレクトロニクスの実現に道-


ポイント
・「透明エレクトロニクス」の実現に向けて各研究機関で透明な酸化物半導体を用いた電子回路技術の開発が進められていますが、従来の半導体に比べて完全な薄膜結晶を得ることが困難なことから、薄膜トランジスタの高性能化に必要な移動度の向上が阻まれてきました。

・東北大学の研究グループは、透明酸化物半導体である酸化亜鉛の薄膜結晶品質を改善することで紫外発光ダイオードや透明薄膜トランジスタの開発を行ってきましたが、今回高品質な薄膜界面に分極効果を利用して高移動度の2次元電子ガスを形成する技術を開発し、酸化物における量子ホール効果の観測に世界で初めて成功しました。

・今回の成功は、透明薄膜トランジスタの高性能化を可能にし、「透明エレクトロニクス」の実現に道を開くだけでなく、高温超伝導酸化物をはじめとする多様な物性・材料群と量子ホール効果を組み合わせることで全く新しい物理現象発見への可能性を拡げるものです。

<概要>
 国立大学法人東北大学【総長:井上明久】(以下「東北大学」という)金属材料研究所【所長:中嶋一雄】(以下「金研」という)の塚崎敦博士研究員と大友明助手らは、東北大学電気通信研究所【所長:伊藤弘昌】および独立行政法人科学技術振興機構【理事長:沖村憲樹】(以下「JST」という)と共同で、酸化物における量子ホール効果<注1>の観測に世界で初めて成功しました。量子ホール効果の観測に用いた試料は、酸化亜鉛(ZnO)および酸化亜鉛と酸化マグネシウムの混晶(MgZnO)の積層薄膜からなり、結晶育成技術を工夫し薄膜結晶の品質を高めたことで今回の成功につながりました。

 量子ホール効果は、高純度の半導体中に形成された2 次元電子ガス<注2>のホール抵抗<注3>が極めて高精度に量子化されることを利用して電気抵抗標準として用いられています。なお、量子ホール効果には、整数量子ホール効果と分数量子ホール効果とがあり、今回観測されたのは整数量子ホール効果です。

 東北大学の研究グループは、従来のZnO 薄膜結晶の品質を著しく改善する成長技術を開発し、紫外発光ダイオードや透明薄膜トランジスタなどの素子を世界に先駆けて開発してきました。今回、この技術を基に作製したZnO とMgZnO の積層薄膜で、高い移動度注4を有する2 次元電子ガスを形成することに成功したので、量子ホール効果の観測に至りました。
 今回の成果は、透明エレクトロニクスの中心課題であった透明薄膜トランジスタ高性能化を可能にするだけでなく、高温超伝導酸化物をはじめとする多様な物性・材料群と量子ホール効果を組み合わせることを容易にすることから、新奇な物理現象発見への可能性を拡げるものです。
本研究成果は、米国の科学雑誌「Science(サイエンス)」への掲載に先立ち、1月25日(米国東部時間)付けでオンライン公開されます。

<研究の背景と経緯>
 透明酸化物半導体は、一般に化学的に安定で構成元素の多くは豊富な鉱石から産出されるため、様々な工業用途に用いられてきました。エレクトロニクス応用では液晶ディスプレィの透明電極として広く用いられていますが、その原料には価格インフラが続いているインジウムが用いられているため、代替材料としてZnO が注目されるようになり、薄膜成長技術の研究開発が行われてきました。

 我が国は、透明酸化物半導体の研究で世界の最先端を担っていますが、透明エレクトロニクスを実現するために十分な品質を有する薄膜結晶の成長技術開発が待たれていました。ZnO は、将来白色光源としての発光ダイオードを開発するためにも安価で無害な材料として期待されており、紫外発光ダイオードの研究開発では東北大学が激しい競争をリードしてきました(文末の関連記事参照)。

 一方、量子ホール効果は、半導体エレクトロニクスの材料として広く用いられている高純度のシリコンや砒化(ひか)ガリウム(GaAs)等の積層薄膜を極低温に冷却し、高い磁場を印加することで観測される物理現象です。シリコンなどの社会にありふれた半導体が用いられたにも係わらず、ホール抵抗が驚異的な精度で計測されるという顕著な量子効果が発見されたことで、実際の応用とはかけ離れた物理学の興味から盛んに研究が進められてきました。量子ホール効果を実現するためには、移動度が十分に高い希薄な2 次元電子ガスを形成することが必要ですが、これまで量子ホール効果が観測された半導体材料ではいずれも基盤となる結晶育成技術が確立されていました。

 透明酸化物半導体の研究は、従来の半導体とは異なる新しい産業ニーズの高まりとともに進展してきました。透明酸化物半導体の成長技術を一段と高めて不純物や結晶欠陥が少ない薄膜結晶を得ることは、電子回路技術に欠かせない薄膜トランジスタの高品質化につながり、透明エレクトロニクスの喫緊の課題でした。

 本研究は、東北大学がJST の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「ナノ界面技術の基盤構築」研究領域(研究総括:新海征治)の研究テーマ「酸化物・有機分子の界面科学とデバイス学理の構築」【研究代表者:川崎雅司】、同事業個人型研究(さきがけ)「ナノと物性」研究領域(研究総括:神谷武志)の研究テーマ「酸化物量子井戸構造を用いた発光素子及び光非線形性素子の開発」【研究者:大友明】、同事業(ERATO 型研究)の「大野半導体スピントロニクスプロジェクト」【研究総括:大野英男】、および日本学術振興会学術創成研究「非平衡透明酸化物のパラレル合成による光・電子・磁気機能の高効率探索とデバイス実証」【研究代表者:川崎雅司】等の研究協力・支援を受けて行ったものです。


 ※ <研究成果の内容>などは添付資料を参照。

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