メルク、結腸直腸癌治療薬アービタックスの製造販売承認を申請
メルク株式会社、結腸直腸癌治療薬アービタックス(R)を申請
ドイツの医薬品・化学品メーカーMerck KGaAの日本法人であるメルク株式会社(本社:東京都、社長:クラウス・ディール)は、米国イムクロン社と共同でこのほど進行・再発結腸直腸癌治療薬アービタックス(R)(一般名:セツキシマブ)の製造販売承認を申請いたしました。アービタックス(R)はEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)を標的としたIgG1モノクロナール抗体です。
日本では過去50年間に結腸直腸癌の患者は増え続けており、年間の症例発生数は95,650人であり、109,780人の胃癌についで2番目です。ちなみに3番目に症例発生が多いのは66,450人の肺癌です。また死亡原因別に見ると最も多いのが肺癌の56,370人、次いで胃癌の54,420人、結腸直腸癌の38,200人となっています。これらのうち、約25%の患者が進行性と言われています。
日本での申請には、国内での臨床試験に加えて、欧州で実施した2種類の臨床試験成績が用いられています。
BONDスタディーでは、塩酸イリノテカンによる化学療法のみでは進行が止められなかった転移性結腸直腸癌患者に対し、塩酸イリノテカンとアービタックス(R)を併用投与することにより、対象とした218名中50%の患者の癌の進行を4ヶ月以上遅らせることが出来、また22.9%の患者に腫瘍が50%以上縮小したとの成績が得られました。効果が見られた患者のうちの半数がその後症状を安定、もしくは改善させています。
MABELスタディーは塩酸イリノテカンによる化学療法が奏効しなかった1,147名の転移性結腸直腸癌患者に対し実施されました。アービタックス(R)と塩酸イリノテカンの併用投与を試みたところ、生存期間中央値は9.2ヶ月でした。
固形癌を有する患者を対象とし、日本で実施された第1相臨床試験においてアービタックス(R)の単独の薬剤として安全性と薬物動態プロフィールが確認されました。
また塩酸イリノテカンによる化学療法が奏効しなかった日本人患者を対象とした日本での第2相臨床試験においては、アービタックス(R)と塩酸イリノテカンの併用投与により、外国人を対象にしたBONDスタディーやMABELスタディーと同様の成績を示しました。
アービタックス(R)は2003年12月に転移性結腸直腸癌患者の治療薬としてスイスで初めて認可され、2004年2月には米国FDA、同年6月には欧州のEMEAで同治療薬として認可されました。日本での開発はMerck KGaA、米国イムクロン社、米国ブリストルマイヤーズ・スクイブ社、メルク株式会社、ブリストルマイヤーズ株式会社が共同で進めてきました。
本件に関するお問い合わせは:メルク株式会社広報グループ川崎または西上(03-5434-5129)まで
アービタックス(R)について
アービタックス(R)は、EGFRを標的とした初めてのIgG1モノクロナール抗体です。アービタックス(R)の作用機序は、モノクローナル抗体としてEGFRに特異的に結合するという点において、一般的な化学療法と異なります。この結合は、受容体の活性化とその結果生じたシグナル伝達を抑制します。それは、腫瘍細胞による正常組織への浸潤と新しい部位への腫瘍の増殖の両方を減少させます。また、腫瘍細胞が化学療法と放射線療法でもたらされた障害の修復を阻害し、腫瘍内の血管新生の形成も抑制するといわれます。
アービタックス(R)はすでに62カ国で認可され、うち61カ国で結腸直腸癌の治療薬として認可されています。下記の国ではEGFRを発現した進行・再発結腸直腸癌患者で塩酸イリノテカン化学療法が奏効しなかった患者に対し、塩酸イリノテカン化学療法との併用による治療薬として認可されています。アルゼンチン、オーストラリア、ベラルーシ、ブルガリア、カナダ、コスタリカ、チリ、中国、コロンビア、クロアチア、エクアドル、エルサルバドル、EU、グァテマラ、香港、アイスランド、インド、イスラエル、レバノン、マレーシア、メキシコ、モンテネグロ、ニュージーランド、ニカラグア、ノルウエー、パナマ、ペルー、フィリピン、ルーマニア、セルビア、シンガポール、韓国、スイス、台湾、ウクライナ、米国、ベネズエラ
また下記の国においては単独投与による治療薬として認可されています。
アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、コロンビア、エクアドル、エルサルバドル、グァテマラ、香港、レバノン、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、パナマ、ペルー、フィリピン、シンガポール、米国、ベネズエラ
加えてアービタックス(R)は、アルゼンチン、オーストラリア、ベラルーシ、ブラジル、ブルガリア、チリ、コロンビア、コスタリカ、EU、香港、アイスランド、インド、イスラエル、マレーシア、メキシコ、モンテネグロ、ノルウエー、フィリピン、ルーマニア、セルビア、スイス、台湾、ウクライナ、米国など48カ国において放射線治療併用の局部進行性頭頚部扁平上皮癌に対しても認可されています。アルゼンチン、チリ、コスタリカ、イスラエル、メキシコ、フィリピン、米国では前化学療法に抵抗性を示した再発性または転移性の頭頚部扁平上皮癌に対しても認められています。
Merck KGaA
Merck KGaA(ドイツ,ダルムシュタット)は、1998年にはアメリカとカナダを除く地域において、ニューヨークのイムクロン・システムズIncorporatedからErbituxの販売権を取得しました。日本ではMerck KGaAとイムクロン・システムズが共同独占的なマーケティングの権利を有します。Merck KGaAは継続してがん治療の進歩に努力を傾注し、現在は結腸直腸癌、局部進行性頭頚部扁平上皮癌、非小細胞肺癌などの分野における高いレベルでの治療法を研究しています。Merck KGaAはまた、浸潤性結腸直腸癌の初期治療として葉酸を経口化学療法として投与するUFT?(tegafur-urasil)療法に関しても認可を受けています。
メルク株式会社はドイツのダルムシュタットに本社を置く、世界的な総合医化学メーカーMerck KGaAの日本法人であり、メルク株式会社は液晶や顔料などの化学品や試薬・分析薬、医薬品(抗がん剤)などを手がけています。Merck KGaAは1668年に設立され、現在世界56か国で事業を展開しており、グループ従業員総数は35,000人。2006年売上高は約63億ユーロ。