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2025'02.10.Mon
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2007'07.09.Mon

産総研、重希土類元素に富む層状マンガン鉱床の特徴を解明

■重希土類元素に富む層状マンガン鉱床の特徴を解明

-先端技術産業に不可欠な重希土類資源の探査に有効-

● ポイント
・重希土類元素に富む層状鉄マンガン鉱床の地質条件・構成鉱物・化学組成を解明。
・希土類元素含有量は、現在重希土類元素を供給している中国の花崗岩風化型鉱床以上。
・家電製品や先端技術産業に不可欠な重希土類資源の安定供給への道を拓く。


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)地圏資源環境研究部門【部門長 矢野 雄策】鉱物資源研究グループ 渡辺 寧 研究グループ長、守山 武 産総研特別研究員、村上 浩康 研究員は、日本国内のマンガン鉱石の分析により、重希土類元素に富むマンガン鉱床の特徴を把握 1)した。これによって、資源の確保が懸念されている重希土類元素の新たな供給源の探査が効率的に行えることが期待される。

 重希土類元素は、強力な希土類磁石原料として、さまざまな先端技術産業に用いられているが、中国の花崗岩風化型鉱床から独占的に生産されている。しかし、最近、生産量、輸出量とも制限されるようになり、その価格が急上昇し、わが国への希土類資源の安定供給が懸念されている。このような背景のもとジスプロシウム等の重希土類元素の新たな供給源が世界各地で探査されている。

 従来の研究により 2)、層状マンガン鉱床(図1)は、海底で噴出した玄武岩とその上に堆積した珪質岩に挟まれており、海底熱水活動の強い影響下で形成されたタイプがあることが知られている。今回、多数の試料の分析により、このタイプのみが重希土類元素に富むことを把握した 2)。この鉱床の鉱石は赤鉄鉱を伴う鉄マンガン鉱石の組成(鉄およびマンガンをそれぞれ30-40%程度含む)を持っている。なお、鉄マンガン鉱石は、これまで希土類元素鉱床開発時にしばしば問題となっていたトリウムやウラン等の放射性元素をほとんど含まず、安全に処理できる利点がある。

*図1 層状マンガン鉱床及び花崗岩風化型鉱床の希土類元素含有量。層状鉄マンガン鉱床は希土類含有量(棒グラフの高さ)が高く、かつ重希土類元素(グラフの奥行き軸)に富むことを特徴とする。右側の写真は代表的な鉄マンガン鉱石とマンガン鉱石。
 (関連資料 参照)


研究の社会的背景

 家電製品、ハイブリッド車のモーター、MRI等の医療機器等、先端技術産業で広く用いられる希土類磁石は、現在中国と日本でのみ生産されており、その生産量は年々増加している。この希土類磁石の生産に不可欠な希土類元素は、世界の90%近くが中国から、特に重希土類元素は、そのほとんどが中国南部に分布する花崗岩風化型鉱床から供給されている。しかし、最近、中国は、環境および資源保護と自国産業の育成のため、花崗岩風化型鉱床からの希土類元素の生産および国外への輸出を制限するようになり、その価格が高騰している。需要の伸びに対応して安定的に重希土類元素を世界の市場に供給するために、中国以外の地域でも希土類元素を含有する鉱床を開発する必要が生じている。一般に希土類元素を含有する鉱床としてカーボナタイト鉱床が知られるが、この鉱床に含まれる軽希土類元素に対する重希土類元素の割合は少ない上に、トリウム等の放射性元素を含有することから、その開発には放射性元素の処理をどうするかという問題が常につきまとってきた。従って放射性元素を含まない新たな重希土類元素鉱床の開発が切望されている。


研究の経緯

 産総研は、2006年から部門重点課題として「重希土類元素の濃集機構の研究」(平成18年度~平成20年度)を実施しており、世界の希土類元素鉱床の資源量評価と新たな重希土類元素供給源の探査をモンゴル・韓国・日本・オーストラリア・エジプト等の地域で行っている。同時に、東京大学工学部加藤泰浩助教授、早稲田大学理工学部藤永公一郎助手ほかが四国での希土類元素に富む層状マンガン鉱床の存在を明らかにしたことを端緒として、産総研でも層状マンガン鉱床の重希土類資源ポテンシャル評価に関する研究を開始した 3)。



研究の内容

 層状マンガン鉱床の重希土類元素ポテンシャルを評価するために、産業技術総合研究所地質標本館に保存されているかつて日本で採掘された層状マンガン鉱床の鉱石72試料を選定し、その構成鉱物組み合わせ、化学組成、鉱物の化学組成の分析を行った。 

 その結果、四国や北海道に分布する鉄成分に富む鉄マンガン鉱石に希土類元素が多く含まれることを把握した。従来の研究から 4)、これらの鉱石を含む鉱床は、玄武岩と珪質岩とに挟まれていることから、希土類元素は玄武岩噴出に伴う海底熱水活動に伴われて沈殿したものであると想定される。これらの鉱石には赤鉄鉱が多量に含まれることから、海底下で鉄水酸化物に希土類元素が吸着され濃縮されたと考えられてい 4)る。分析の結果は 4)、これらの鉱石が 4)、希土類元素の中でも重希土類元素に富むことを示す 4)(図2)。一方、鉄成分に乏しいマンガン鉱石中の希土類元素含有量は一般に低い値を示す 4)。

*図2 重希土類元素とマンガン・鉄含有量との関係
 (関連資料 参照)

 これらの鉄マンガン鉱石に含まれる希土類元素含有量、特に重希土類元素含有量は、現在、重希土類元素の供給源となっている中国の花崗岩風化型鉱床のそれよりも高い(表1)。希土類元素が分解の容易な形態でマンガン鉱石に含有されていること、放射性元素をほとんど含まないことから、この鉱石からの希土類元素の抽出は比較的容易で、鉱床として開発できる可能性が高いと判断される。日本では層状マンガン鉱石は既に終掘しているが、同様の鉱床は環太平洋地域や南アフリカ等世界各地に広く分布しており、このタイプの鉱床から重希土類元素を回収できれば、現在中国に偏在している希土類元素の生産を世界各地に広げることも可能になる。

*表1 代表的な鉱床における元素含有量の特徴
 (関連資料 参照)


今後の予定

 大規模な層状マンガン鉱床の存在が知られている南アフリカ共和国などの地域を調査し、重希土類元素鉱床としての層状マンガン鉱床の資源評価を行う予定である。また層状マンガン鉱石から経済的に希土類元素を抽出する技術の開発を目指している。今後、様々な鉱床タイプの重希土類元素の資源評価および開発のための調査を実施したいと考えている。

プレスリリース修正情報

訂正前の記事には、産総研の独自成果と先行研究成果の区別が不明瞭な表現があり、また、先行研究について適切な言及を欠いておりましたので、お詫びして訂正します。訂正箇所は下記のとおりです。( 1)、2)、3)、4)は訂正記事中の注釈番号に対応します。)(2007年3月5日 14:00)


A:産総研の独自成果と先行研究成果の区別が不明瞭な表現の訂正

1)タイトル、ポイントにおいて、「解明」としていた表現は、先行研究で既になされていた成因等の解明との誤解を生じえますので、特定のタイプの鉱床の資源的な特徴を把握したという意味で「把握」と訂正しました。概要においても同様な趣旨で訂正しました。

2)従来の研究と今回の成果を明確に分けて記述しました。

4)従来の研究と今回の成果を明確に分けて記述しました。

B:先行研究について適切な言及を欠いていた点の訂正

3)産総研の研究の端緒となった先行研究について追加記述しました。


用語の説明

◆軽希土類元素と重希土類元素
 地球表層の大陸を構成する岩石の平均元素存在度の試算によれば、軽希土類元素は数十ppm、重希土類元素は数ppm含むとされる。軽希土類元素は銅、重希土類元素はタングステンや錫などの平均元素存在度に近似しており、軽希土類元素に比べて重希土類元素の存在量は少ない。ppmは parts per millionの略記号で百万分率。

◆花崗岩風化型鉱床
 地表に露出した花崗岩が地表水等により風化され土壌を形成、その風化土壌中に含まれる粘土鉱物に希土類元素イオンが吸着されることにより生成した鉱床。江西省など中国南部に分布する。

◆層状マンガン鉱床
 海底で形成された地層の地層面と調和的なレンズ状の形態をもつマンガン鉱床。かつて大洋底で形成されたものが、周囲の地層とともに海洋プレートの移動によりプレート沈み込み帯まで運搬され、大陸や火山弧に付加された結果、現在陸上に層状マンガン鉱床を見ることができる。プレート沈み込み帯に広く分布する。

◆希土類元素
 ランタノイド系列の15元素にイットリウム、スカンジウムを加えた17元素を希土類元素と呼ぶ。原子番号の比較的小さいランタンからユウロピウムまでを軽希土類元素、比較的大きなガドリニウムからルテチウムまでを重希土類元素と大別する。

◆カーボナタイト鉱床
 アルカリ成分の多い火成岩に伴われマグマ起源の炭酸塩鉱物からなる鉱床。アフリカ大溝帯や主要な大陸内部~縁辺部に分布する。


問い合わせ
 独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部 広報業務室
 〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8階
 TEL:029-862-6216 FAX:029-862-6212 E-maiL: presec@m.aist.go.jp

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