三菱電機、平均出力10Wの深紫外(波長213nm)固体紫外線レーザーを開発
光デバイス材料などの微細加工の高速化が可能に
世界最高出力10Wの深紫外(波長213nm)固体紫外線レーザーを開発
三菱電機株式会社(執行役社長:下村 節宏)は、半導体レーザー(LD:Laser Diode)を励起源とする固体レーザーにおいて、波長213ナノメートル(nm)の深紫外パルス光を発生する平均出力10ワット(W)の固体紫外線レーザーを開発しました。波長200nm台の深紫外領域で10Wという高い平均出力を達成したのは世界で初めてです。
本開発は、2003年10月より独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)からの委託を受け、国立大学法人大阪大学との産学連携によって実施しています。
<開発の背景>
今後のIT発展の鍵となる大容量・高速通信の光スイッチに用いられる光デバイス材料や、デジタル電子機器の小型化・高性能化を加速する高密度電子回路基板材料などの先端材料を加工するには、材料への吸収率が高い短波長の紫外線レーザーが必要とされています。特に、空気中で吸収されにくく伝播が容易な波長領域で最短となる200nm台の深紫外レーザー光は、ガラスなどの透明材料でも吸収率が高く、広範囲な材料に対して熱影響の少ない加工ができることから、究極の加工用レーザーとして期待されています。深紫外領域の紫外線レーザーとしてはエキシマレーザーが代表的ですが、活性の強いハロゲン系ガスを用いるレーザーであるため装置が大掛かりでメンテナンス頻度が高いという難点があり、安全かつ環境にやさしく取り扱いが容易で小型化に適したLD励起固体レーザーを用いた高出力の深紫外レーザーの実現が望まれています。
当社は2005年に、LD励起固体レーザーの赤外光を非線形光学結晶により波長変換して波長213nmの深紫外光を得る紫外線レーザーで5.6Wの高出力を実証し、加工性の検証を進めてきました。今回、その約2倍という実用レベルの出力を達成したことで、量産加工に不可欠な高い生産性が見通せるようになり、先端材料加工の発展が期待されます。
<主な開発成果>
1.基本ユニットを連結して、従来比2倍の高出力化に成功
赤外レーザーを発生するLD励起固体レーザーの基本ユニットを最大9段まで連結し、回折限界※1に近い高い集光性能を維持したまま赤外レーザー出力が最大300Wまでユニット数に比例して増大することを実証しました。
※1:回折限界:波長と集光レンズの開口数が与えられた時の、集光点の大きさの最小値。限界に近いほどビーム品質が高く、微細な加工が可能となる。
2.深紫外領域(213nm)の固体紫外線レーザーで世界初となる平均出力10Wを達成
波長変換に用いる非線形光学結晶に含まれる不純物を極限まで除去して、レーザー光の吸収により発生する結晶内部の発熱を抑え、出力の飽和を解消する国立大学法人大阪大学の技術と、300Wに高出力化した集光性能の高い赤外レーザーを組み合わせ、213nmの深紫外領域の固体紫外線レーザーで世界初となる平均出力10Wを達成しました。
3.高速な加工に適した高周波数10kHz以上のパルスレーザー照射で高品位な加工を実証
固体レーザーの利点である周波数10kHz以上の高い繰り返し照射(パルスレーザー照射)により、光デバイス材料やガラス複合材料の高速・高品位な加工が可能です。深紫外光ならではの高い光吸収効果と、高い集光性能により、熱影響の少ない高品位な微細加工を実証しました。
<今後の展開>
高出力化した深紫外固体紫外線レーザーにより、各種先端デバイス材料の加工性を検証し、微細加工用レーザー加工機の実現を目指します。
<特許>
国内4件、海外1件出願中。
<開発内容に関するお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 業務部 広報・宣伝グループ
〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町8丁目1番1号
FAX:06-6497-7289
http://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_at.html