鉄建建設など、低コスト化・高効率化が可能な無散水融雪システムを開発
地中熱並びに暖房排熱を利用した無散水融雪システムを開発
鉄建建設(株)(社長:神田志義)と北武コンサルタント(株)(社長:吉川勝)は、昨年発表した地中熱を利用した無散水融雪技術(地中熱利用システム)の、さらなる低コスト化・高効率化を可能とする融雪技術を開発いたしました。
今回改良した工法は、舗装体の融雪効率を高めることと、熱交換杭の替わりに地盤内(1~2m程度)に地下タンク(1m3程度)を設け、地中熱を効率よく採熱することで、コストを低減しました。また、暖房排熱を新たな熱源とし、路面融雪に利用する技術も取り入れました。これらの改良技術の優位性を検証するために、積雪寒冷地である北海道札幌市内において、地盤から得られる低温度の熱エネルギー及び暖房の余熱、ボイラー等の排気管の熱をそれぞれ単独に活用した融雪試験を実施しました。その結果、表面は積雪によって凍結することはなく、20cmを越える積雪に対しても降雪後1~4日間程度で融雪することができました。これにより北海道などの気象条件の厳しい積雪寒冷地においても地中熱から得られる低温度エネルギーや暖房排熱により、融雪及び凍結防止効果が得られることを確認しました。今後、環境にやさしい技術として展開してまいります。
1.開発の背景
近年、環境問題への対応がグローバルな視点から緊急な課題とされており、環境への影響を軽減・解消する技術を積極的に展開し、ライフサイクルを通じた資源エネルギー消費量を減らして、環境負荷を軽減することが必要です。特に、CO2排出抑制の推進やヒートアイランド現象の解消に向けて、早急な化石エネルギーの使用量削減、建築物の屋根面やアスファルト路面からの放射熱削減といった環境対策技術に対する社会的ニーズが高まっています。
サステナブルな社会を形成していくためには、このような自然・生態系への配慮はもとより、急速に進行する少子高齢社会における安全・安心な生活環境を求める生活者ニーズにも対応し、これらを適切に調和させていかなければなりません。例えば、積雪寒冷地域では、屋根の雪下ろしなどの作業は高齢者の方たちの大きな負担となっています。また、雪が積み上げられた歩道や駐車場などが、バリアフリーの観点からは大きな障害となります。一方、都市部では構造物の集中や路面の舗装等に起因する夏季のヒートアイランド現象が問題になっています。
これらの解決策の一つとして、エネルギー消費を抑制すると共に、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーや都市廃熱などの未利用エネルギーの利用が注目されています。しかしながら、未利用エネルギーは、時間や季節によってその供給量が変動し易いのが現状です。その中で、地域偏在性が少なく、気候に左右されることのない安定した低エネルギー源である地中熱と、従来あまり利用されてこなかった暖房の排熱に着目しました。これらの熱エネルギーを効率的に利用して、積雪寒冷地では道路斜路や歩道、建築物周辺などの融雪や凍結防止を行い、さらに地中熱においては都市部のヒートアイランド現象を抑制するシステムについて開発に着手しました。今回、北海道札幌市内において融雪試験を実施し、地中熱並びに暖房排熱を利用した融雪・凍結防止システムの有効性を確認いたしました。
2.地中熱利用システムの概要
地中熱利用システムは、道路、歩道などの融雪や凍結防止を目的として、地下タンクに循環水を流して地中熱を採熱し、舗装体内部の熱交換パイプ内の循環水からの放熱で舗装体を暖めます。舗装体内で冷水になった循環水は再び地下タンクに戻って採熱します。舗装体は断熱(空気)層を用いたコンクリートを使用し、熱交換の効率を向上させています。
地中熱利用システムの概要
※添付資料を参照
3.暖房排熱利用システムの概要
暖房排熱利用システムは、道路、歩道などの融雪や凍結防止を目的として、屋内に設置した配管及び蓄熱体、またはボイラー等の排気熱より採熱し、舗装体内部の熱交換パイプ内の循環水からの放熱で舗装体を暖めます。舗装体内で冷水になった循環水は再び屋内、排気管等の採熱箇所に戻って採熱します。
暖房排熱利用システムの概要
※添付資料を参照
4.無散水融雪試験状況
実験の結果、上記の融雪システムのみで融雪・凍結防止効果があることを確認しました。また、完全に融雪は完了していない場合でも、常時凍結状態にある無対策舗装に比べ、融雪舗装体表面部の雪はシャーベット状となっており、舗装面は凍結することは有りません。
融雪状況
※添付資料を参照
4.特長
本融雪システムは以下のような特長を有する経済性と環境保全の要求を満たしたシステムです。
■運転に必要なエネルギーは循環ポンプの電力だけです。
■融雪舗装体に空気層を含む断熱層を設け、低エネルギーでも融雪効率を向上させて、効果的な融雪を行うことができます。
■路面の温度制御により融雪および凍結防止、さらにヒートアイランド現象の緩和を可能にします。
■積雪寒冷地における除雪作業にかかる労力や費用の縮減を可能にします。
■循環水は密閉した管路を循環するだけで、地下水を汲み上げることがないので地盤沈下や汚染の心配はありません。
■小口径の熱交換杭だけでなく、地下タンクを利用することで、イニシャルコストを低減することが可能です。
■他の自然エネルギーを補助的な熱(電気)エネルギーとして、地中熱と併用して利用することが可能です。
■未利用エネルギーである、暖房排熱を利用することで、大幅なイニシャルコストの低減が可能となります。