三洋電機、HIT太陽電池セルで変換効率22.0%を達成
HIT※1太陽電池セルで
世界最高※2の変換効率22.0%※3を達成
三洋電機株式会社(以下、三洋電機)は、この度、HIT太陽電池で、実用サイズ(100cm2以上)の結晶シリコン系太陽電池セルの変換効率としては世界最高となる22.0%を研究レベルで達成(従来21.8%)いたしました。
背景
三洋電機は、ブランドビジョン「Think GAIA」のもと、クリーンエネルギー社会の実現を目指し、太陽電池事業を強力に推進、その事業拡大を図っています。具体的には、昨年6月に「HIT太陽電池次世代プログラム※4」を策定。2010年度に世界トップレベルの事業体となることを目指しています。
太陽電池の変換効率向上は、太陽光発電システムの低コスト化およびシリコン原材料などの省資源化につながります。この度、高いエネルギー変換効率が特長のHIT太陽電池セルにおいて、実用サイズとしては世界で初めて22%の壁を研究レベルで突破しました。今後、今回開発に成功した高効率化技術の量産品への適用を鋭意進めるとともに、さらなる高効率化、低コスト化、省資源化を目指した技術開発に取り組みます。
※1 HITはHeterojunction with Intrinsic Thin layerの略。HIT太陽電池は、三洋電機が開発した独自構造の太陽電池セルで、結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を用いて形成したハイブリッド型。高変換効率・温度特性等の優位性により、設置面積当たりの発電量世界No.1を誇るものです。
※2 2007年6月19日現在、当社調べ
※3 変換効率の公的認証機関である産業技術総合研究所における評価結果
※4 積極投資と差別化製品で2010年度に太陽電池事業を05年度の3倍以上に拡大する事業拡大戦略。
主な内容は、
(1) 2010年度までに累計400億円以上を投資し、生産能力を600MW/年以上に増強
(2) 2010年度までにHIT太陽電池のセル変換効率22%以上(量産レベル)を目指す、など。
高効率化を可能にした要素技術の概要
1.単結晶シリコン(以下c-Si)基板とアモルファスシリコン(以下a-Si)層との界面の高品質化
HIT太陽電池構造の特長は、発電層であるc-Si基板表面に高品質なa-Si層を積層することにより、電気の素であるキャリア(電荷)※5の再結合損失※6を低減できることにあります。今回、c-Si表面の清浄性を従来以上に高めることのできる洗浄技術の開発およびa-Si層形成時のc-Si表面へのダメージを従来以上に抑制する技術の開発に成功したことで界面の高品質化を実現しました。その結果、キャリアの再結合損失を低減し、開放電圧(Voc)※7を従来の0.718Vから0.722Vへと改善しました。
2.光閉じ込め効果の改善
太陽電池セルでは、セル表面に到達した太陽光をセル表面のミクロンオーダーの凹凸※8により太陽電池セル内部に導き、有効利用する光閉じ込め技術が利用されています。今回、このミクロンオーダーの凹凸のサイズおよび形状を最適化することで光閉じ込め効果を改善、その結果、短絡電流(Isc)※9を38.37mA/cm2から38.64mA/cm2へと改善しました。
【要素技術概要図】
関連資料参照
※5 キャリア(電荷)とは、電子(マイナス)と正孔(プラス)の電気の粒のこと。電子がマイナスの電荷を持っているのに対し、正孔は、電子の抜けた抜け殻で、プラスの電荷を持つ
※6 再結合損失とは、太陽電池内部で作り出した、プラスとマイナスの電気(=キャリア)が太陽電池内部で結合して消滅することにより、太陽電池から取り出せる電流が減少して、結果として太陽電池の出力が低下すること
※7 開放電圧(Voc)とは太陽電池が作り出す最大の電圧
※8 ミクロンオーダーの凹凸とは、ミクロン(1mmの1000分の1)サイズの凹凸を表面に設けることにより、入射光の反射を抑え、より多くの光を太陽電池内部に取り込む技術
※9 短絡電流(Isc)とは太陽電池から取り出せる最大の電流量
HIT太陽電池セル特性
開放電圧(Voc):0.722V
短絡電流(Isc):3.872A(38.64mA/cm2)
曲線因子(FF)※10:78.8%
セル変換効率:22.0%
セル面積:100.2cm2
※10 曲線因子(FF)とは、太陽電池の最大出力を(開放電圧×短絡電流)で割ったもの。